しましましっぽ

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「遅番記者」  ジェイムズ・ジラード

2014年05月04日 | 読書
「遅番記者」  ジェイムズ・ジラード  講談社文庫  
 THE LATE MAN               柴田京子・訳

ミッド=アメリカン紙の新聞記者のサム・ホーンは報道記者だったが、1年前に妻クレアを交通事故で亡くし遅番記者になっていた。
サムはクレアの日記から、妻が上司のフランクリン・ルールと浮気をしていた事を知る。
遅番記者は夜の仕事なのでルールと顔を合わせたくないことや、息子デイヴィの世話もあったのでそれで良かった。
クレアの日記を読むうち、サムはルールへの復讐を考えるようになる。
そんな時、四肢を切断された女性に死体が発見される。
そから少し離れた所に、男性の下着とユリの花が5輪置かれているのが見つかる。
刑事のL・J・ルーミスには、それで6年前に起き未解決の連続絞殺事件の続きであることが分かる。
それは、ルーミスの頭から離れることがなく、それが原因で妻エディは家を出て行った。
ミッド=アメリカン紙は記者をルーミス刑事に同行させ、事件について書こうとルーミスに持ちかける。
ルーミスはその記者にサムを指名する。
6年前にも係っていて、サムに好印象を持っていたからだ。
サムは連続絞殺事件に触れるうちに、絞殺魔にのめり込んで行く。








事件を追って、解決して行く物語ではない。
その事件に触れる事により、それがどう心理的に影響していくか、そんな物語。
そして、タイトルにもなっている遅番記者の主人公のサム・ホーンの気持ちがメイン。
妻クレアが事故で死んで、始めて日記を見てクレアが不倫していたことが分かる。
しかし、それは単純な浮気ではなく、クレアの心の中を見せつける。
自分の全く思いもしなかったクレアの気持ちに戸惑い、クレアには憎しみは湧かない。
そして相手のルールを憎もうとするが、それも上手くいかない。
自分の気持ちも分からなくなったサムは、絞殺魔の事を考え気持ちを同化させて行く。
それは、サムに復讐したいと言う気持ちがあったからだろう。
そんなサムの様子が怖い。
しかし、ショックの大きさなのか、娘の同時に失っているのにその事に心が行っていないのが不思議。
そして刑事のルーミスも、記者のストッシュも絞殺魔に影響される。
2人ともサムと同じに、プライベートで辛い思いをしてストレスが溜まっている。
そんな心理状態も影響があるだろう。
誰もが不安を抱いている社会。
そんな気持ちを表している物語。
事件の方はメインではないからか、あっさりと終わったような終わらないような。
事件がこんな結末になるとは思わなかった。
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