しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「戦場のコックたち」  深緑野分 

2017年05月11日 | 読書
「戦場のコックたち」  深緑野分     東京創元社    

1925年、アメリカのルイジアナ州で雑貨店を営む家に生まれたティモシー(ティム)・コール。
人生の楽しみは「食べること」と言うティムは祖母のレシピ帖を眺めるのが好きな子どもだった。
17歳の時に志願して入隊するが、訓練中に直ぐに自分は軍人には向いていないと思った。
仲間にはキッドとあだ名される始末。
そんな時、コック兵を増員するので希望者を募る掲示があり、迷う。
コックなどの特技兵は、一般人から軽んじられ嫌われていたからだ。
だがコックのエドワード(エド)・グリーンバーグと出会い、エドに誘われたこともあり、コックになる。
しかしコックと言えども、兵士として戦闘になれば銃を取り前線で戦う。
1944年初夏、入隊から2年後、訓練を終える。
配属されたのは合衆国陸軍、第101空挺師団第506パラシュート歩兵連隊、第3大隊G中隊。
初陣はノルマンディー上陸作戦。そしてマーケット・ガーデン作戦。
そんな戦争中の軍隊の中で起こる、謎。
予備のパラシュートを集める兵士、600箱の粉末卵盗難事件、オランダの民家でのヤンセン夫妻の怪死。
それらを解決していくのは、寡黙なエドだった。







タイトルから、戦争の話だけれどコックなら戦闘からはちょっと離れた物語ではと予想。
予想に反して、戦争真っ只中を書いた物語。
しかも激戦で悲惨なノルマンディー上陸作戦、マーケット・ガーデン作戦。  
コックも兵士として前線で戦う。
どちらかと言えば、コックの仕事はなかなか出来ないのが戦場。
携帯用食料のレーション(糧食)を配るだけなら誰でも出来るし。
どのようにどれだけ食べるのかの計画もあるのだろうが。
コックとしての仕事は一応始めに書かれていたが、それに対して戦闘の中ではあまり書かれていない。
それに、気分転換のように謎解きのエピソードが加わる。
若い人向けの感じがする。
粉末卵盗難事件の謎解きが出て来た時は、謎解きがメインになる物語なのかと思ったら、戦争の様子もしっかり書いてある。
この戦争でどんな事があったか、戦争とはどんなものなのかを知らしめる。
ナチスがした事も書かれているが、ドレスデンの空襲のことも。
最後は広島・長崎の原爆にも一応触れている。
戦争を読ませる為のエピソード挿入、という印象。
しかし、最後のゾマーのエピソードは。
最後の脱走を入れて、そんなにうまくいくのだろうかと思うが、また違った観点から戦争を見られた。
人を殺すことが当たり前になってしまう戦争。
前線に戻りたいと思ってしまうことの異常さ。
悲惨な事をそのまま書いて、戦争とはこんなものだと知らせるのには必要な時かも知れない。
こんな事は、もうしたくないと考えるように。
しかし、今度戦争が起きたら、全く形の違う戦争になっていそうだが。

収容所施設を発見したシーンは、「バンド・オブ・ブラザーズ」を思い出した。
参考文献の1番始めに書かれていたから、あながち間違いではなかった。
しかし、全部見たはずなのに他のシーンはあまり覚えていない。
このシーンは鮮明だ。
マーケット・ガーデン作戦は、映画「遠すぎた橋」を思い出す。

仲間もたくさん出て来るが、なかなか性格や区別がつかなかった。
エドとダンヒルだけすぐ分かったが。
オハラ、ライナス、ディエゴ、スパーク、ワインバーガー。
これは自分の読み込みが悪いのかも。
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