しましましっぽ

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「黄昏の彼女たち」  サラ・ウォーターズ 

2016年07月08日 | 読書
「黄昏の彼女たち」  サラ・ウォーターズ  創元推理文庫  上・下巻
The Paying Guests     中村有希・訳

1922年、ロンドン近郊。戦争で男手を喪い、母とふたりで暮らすフランシスは、生計のため広すぎる屋敷に下宿人を置くことにする。
広告に応じたのは若い夫婦、レナードとリリアンのバーバー夫妻だった。
家の中に他人がいる生活に慣れないフランシスだが、ふとしたきっかけからリリアンと交流を深めていく。
公園でのピクニック、『アンナ・カレーニナ』の読書、そして互いの過去を知りあうことで……。
いつしかふたりの女性に芽生えた感情は、この物語をどこへ運んでいくのか? 
心理の綾を丹念に描いて読む者を陶酔させる、ウォーターズの傑作。
     <文庫本上巻1ページ目より>

リリアンがフランシスにした告白の衝撃は、ただでさえ緊張に満ちたふたりの仲をさらに大きく揺さぶった。
リリアンの夫レナードに隠れての、先の見えない関係をいつまで続けられるのか。
彼女たちをとりまくすべてがままならぬ状況で、ある夜、ついに悲劇は起きる。
殺人という最悪の形で・・・・・・。
露見を恐れて嘘を重ねたことで、“犯人”は警察の調査に怯えながら暮らすことに。
ところが、事態は予想だにしない意外な展開を迎える・・・・・。
1920年代を舞台に、時代に翻弄される女たちの姿を殺人事件の行方を通して描く、ウォーターズ文学の極み。
     <文庫本下巻1ページ目より>










淡々綴られる日常の生活。
フランシスの心情も丁寧に書かれる。
ゆったりと流れる時間は、過去に囚われ哀しんでいるような。
年齢に割には落ち着いて疲れた感じのフランシス。
それが、リリアンと出会って変わる。
本来持っていたものが目覚める。
2人の危険な関係が、その後どうなるのか。
前半はこれから起こる事への序章、後半はサスペンス。
フランシスの気持ちも激しく揺れて、関係にも変化がある。
フランシスから書かれた物語だから、リリアンの本当の気持ちは分からない。
もしかしたら、今までのサラ・ウォーターズの物語のようにリリアンが罠を仕掛けているのかと疑える場面も。
しかし裏切りなどなく終わる。
今までとは違う物語。
それでも、警察とのやり取りや裁判の場面でのフランシスの心情は怖れや緊迫感で溢れ同じような気持ちに。
これはフランシスの心情を伝える物語。
罪の意識と正義と愛と。
この先、2人はどうなるのだろうか。
絶対に前と同じには戻れないだろうし。
これからのフランシスの人生を考えてしまう。
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