昨日(12月6日)米国政府が発表した失業保険申請数は過去6年の最低水準だった。雇用の改善は景気回復につながるので、長期的には株式市場にプラスだが、少なくとも今の米国の金融市場では雇用の改善は連銀のテーパリングが早まるという予想を高め株の売り材料になっている。実際ダウは5日連続して下落して3週間ぶりの安値となった。
注目されるのは今夜発表される雇用統計である。11月の非農業部門雇用者増に対するエコノミストの予想の平均値は180,000人だそうだが、一部のエコノミストは雇用者増が20万人を越えるかどうかに注目している。というのは書き物になっているわけではないが、連銀が20万人を雇用の節目と見ていると判断している人が多いからだ。もし数ヶ月連続して雇用増が20万人を上回ると確実に米国の労働市場は改善したと判断され、金融政策の転換、つまり債券買い取りプログラムの縮小が始まるからだ。
もし今日発表される11月の非農業部門雇用者増が25万人というような強い数字となった場合は、株と債券はかなり売られると予想する人が多い。相場にとっては市場予想より少し弱い数字がでるのが、ベストシナリオだろうが、それでも利益確定の売りがでそうだ。とにかく米国株は目先は下げるという可能性が高いと私は判断している。
日本株についても軟調な相場が続くと思うが、テーパリングが早まり米国金利が上昇するという予想が高まればドル高・円安にふれて日本株の買い材料になる可能性はある。
今年のブラックフライデーの売上はパッとしなかった。米国で感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日をブラックフライデーと呼び、クリスマス商戦の始まりの日とされる。ブラックフライデーの売上は消費動向を占う上で重視されている。
全米小売業協会が12月1日に発表したところでは、過去7年間で初めて売上が減少した。感謝祭の日から日曜日までの消費者一人あたりの平均支出額は407.02ドルと昨年の423.55ドルを下回った。
ブラックフライデーに対しその次の月曜日をサイバーマンデーと呼ぶ。これは2005年に作られた言葉で1年間でネット販売が最大になる日とされる。米国のIBMが3日に明らかにしたところでは、携帯機器を通じた販売が拡大したので今年の売上高は前年比21%増となった(なお昨年は前年比30%の増加)。
消費者の購入チャネルや小売店の営業姿勢が変わっているので、ブラックフライデーの売上だけで消費動向を判断するのは早計かも知れない。全米小売業協会はブラックフライデーの売上が低調だったにもかかわらずクリスマスシーズン全体では小売売上高の総額は前年比3.9%増加すると予想している。
だがブラックフライデーの低調な売上の原因を別の角度からズバッと切る人がいる。
CNBC.comは「連銀が実施している債券購入プログラムなどの金融緩和策による「資産効果」Wealth effectは機能せず、富裕層と貧困層の格差が拡大したことをブラックフライデーのパッとしない売上高が証明している」という野村證券のアナリストの言葉を紹介していた。
リーマン・ショック後の所得の回復状況について、カリフォルニア大学のSaez教授は所得上位1%層の所得は2008年の金融危機以降31.4%増えたが、それ以下の99%の層では所得の伸びは0.4%にとどまった、と述べている。この結果2012年末では上位1%が全所得の50.4%を得るに至った(これは1917年以降最高のレベル)
このようなことが起きた原因の一つが連銀の金融緩和つまり大量の流動性供給である。富裕層は金融相場を利用して、そして時にはレバレッジ(借入)効果を使って配当を生む資産を積み上げたので所得が拡大した。
つまりWealth effectは超富裕層に最も効果的に機能したが、運用資産を持たないものにはほとんど機能せず、彼等は財布の紐をまだ緩めていないという見方だ。
これは米国の話だが、やがて日本のアベノミクスでも同じようなことが起きてくる可能性があると私は考えている(だからといってアベノミクスに反対である、という訳ではない。ただし総ての薬がなんらかの副作用を持つようにアベノミクスも副作用を持っていることは認識しておく必要があるという話だ)
つまり金融緩和政策の持続は一定の資産効果を生む。しかしその恩恵を受けることができるのは、リスク資産を保有する資金力と若干のリスクテイクマインドを持つ人だけである。資産効果はやがて消費拡大と言う形で、経済全体を拡大すると期待されるが、資産効果は限定的なので、消費者全体が消費を拡大することはない。やがてアベノミクスの期待通り物価が上昇し始めると資産効果の恩恵や賃金上昇の恩恵を受けない層~典型的には年金受給者層~は、財布の紐を締めざるを得なくなるのである。
マスコミが報じるところでは、アマゾンのCEOジョフ・ベゾス氏が日曜日の夜のCBSニュースで、4,5年の間に無人機による配送を始める可能性があると発表した。当然連邦航空局の許可が前提だが。
ニュースによると、無人機Droneは5ポンド(約2.3kg)の荷物を持って配送センターから10マイル(16キロメートル)圏内を注文を受けて30分以内に届けることができるということだ。これで現在のアマゾンの受注の86%をカバーするそうだ。
もしこれが実現すればまったく新しい発送方法だ。いやbreakthroughは発想というべきだろう。アメリカが広大だといっても人口密集地域で無人機が飛び回るというのは危険な感じがするし、アマゾンが無人機配送のコストをどう吸収するのか?といった疑問は残る。
だが誰かがどこかで同様のことを実行に移す前にツバをつけたことは多いに評価してよいと思う。無論同様の試みが直ちに日本に移入されるとは思わない。日本では宅配ネットワークが発達しているので都市圏ではそのようなニーズは起こらないだろう。だが人口過疎地域では考慮されても良いアイディアだろう。
それとこの話題は店舗を構える小売業とアマゾンのような無店舗の小売業の本格的な激突の時代を予想させる。私は既に日本でも店舗VS無店舗の戦いはすでに始まっていると感じている。正確に言うと一等地に店舗を構えている堂々たる企業が無店舗販売に力を入れているのだ。私はよくヨドバシカメラのネット販売でプリンターのインクや紙などの消耗品を購入しているし、封筒や名刺の印刷はそれほど有名ではない専門店にネット発注している。
Freelanceや小規模オフィスあるいはNPO法人などを運営するものにとっては誠にありがたい世の中になった、と思う。
無人機は英語ではDrone。Droneには雄蜂、特に嬢王蜂との生殖活動を専門にする雄蜂という意味があり、転じて怠け者、ごくつぶしという意味もあるそうだが、ひょっとするとアマゾンの無人機は働き蜂になる可能性があるのではないだろうか?
昨日発表された米国のサプライ管理協会(ISM)の11月の景況感指数は予想を上回る57.3(その前月は56.4)と良い数字だった。これは2011年4月以降で最も高い数値だ。
株式市場は米国経済の好調さを好感して午前中は続伸していたが、午後には急速に値を下げた。ダウは77.64ポイント(0.48%)下落、S&P500は4.91ポイント(0.27%)下落した。米国経済が堅調であると連銀が判断すると、テーパリング(債券買取プログラムの縮小)の時期が早まるのではないか?という見方が出たためだ。
恐らく株価が大きなcorrectionもなく高値圏に張り付いているので、高所恐怖感が高まった面もあるのだろう。
昨日ゴールドマンサックスのチーフ・ストラテジストはCNBCテレビで「株式市場にバブルが発生している懸念やテーパーリングが株価暴落を引き起こす見込みは薄く、米国企業の好業績は続き、来年末にはS&P500は1,900ポイント(現在は1,800ポイント)まで上昇する可能性がある。ただしその過程で67%の確率で10%ほどの株価下落が起こりうる」と述べていた。
過去1年半の間に大きなcorrectionもなく、50%ほど株価が上昇した米国株に10%ほどの下落が起きるという予想は常識的なものかもしれない。ゴールドマンは来年3月にテーパリングが始まるという見方を取っているので、その予想に従えば、世の中の動きを先取りする株式市場でそろそろ調整が始まってもおかしくはないだろう。
一方テーパリングは金利の上昇につながると判断できるから、大きなリスクオフが起きなければ、緩やかなドル高は持続すると思われる。ドルはmomentumに買っておきたいところだ。米株のポジションは少し減らすがドルは保持、という戦略だ結果はどうでるだろうか?