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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

返済猶予でも「正常債権」?裁量行政の復活ですか

2009年10月08日 | 金融

10月8日の日経新聞によると「政府は中小・零細企業などを対象とした債務の返済猶予制度に関連し、不良債権基準を緩和する方向で調整に入った」ということだ。

本当にこんなことをしていて良いのだろうか?

「返済猶予債権」について完全に国が保証を行うのであれば、「優良保証」であるから正常債権と分類して良いだろう。だが国の完全な保証なしに「金融検査マニュアル」だけを弾力化しても事実上の不良債権は不良債権なのである。

金融機関の取引相手(預金者や他の金融機関)や格付機関・調査機関などは「返済猶予債権」という名前の不良債権をポートフォリオの中の時限爆弾として探すにことになるだろう。

ところで「返済猶予支援論者」の中には「銀行がバブル崩壊で不良債権で苦しんだ時には公的資金を投入したのだから、今回は中小企業を救済して当然だ」という意見がある。この点については少しコメントをしたい。

当時一部の銀行の一部の人がバブルに踊って不良債権を増やしたことは事実だが、その後不良債権の貸倒償却を当時の大蔵省が中々認めなかったことが不良債権の処理を遅らせたこともまた事実なのだ(その理由は護送船団方式の維持や銀行からの税金徴収ということである)。

そのような反省を踏まえて金融再生プログラムの中で「資産査定の厳格化」、「自己資本の充実」、「ガバナンスの強化」という三本柱が定められた訳だ。

ところがもし国の保証を付けないで査定基準だけで不良債権を正常債権と扱うようなことが大々的に行われるとこれは完全に古き悪しき時代への逆行である。

だが今回の返済猶予議論で一番欠けている視点は「一時的に資金繰りを楽にしても事業に将来性がない限り問題の先送りにしかならず、問題の先送りは問題を大きくすることにしかならない」という点だ。

本質的な解決は「今は苦しいが技術面等で将来性のある中小企業には国の保証とともに商売が増えるような仕組みを作る」ことと「将来性のない中小企業には支援を与えながら転廃業を促進する」というのが、人気はないかもしれないが「本当の政治」だと私は考えている。

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投資の地平線をブラジルに拡げてみた

2009年10月08日 | 株式

経験というものは概ね役に立つが、時として現実を直視する上で妨げになることもあるようだ。ブラジルについては数年前ゴールドマン・ザックスがBRICS投資と言い出した頃から関心はあったが、昔国際業務をやっていた時の悪印象からついつい敬遠していた。しかし2016年のオリンピック開催を記念?してちょっと投資をしてみた。

投資したのはニューヨーク証券取引所に上場しているETFで、iShares MSCI BrazilつまりブラジルのTOPIXのようなものだ。買った証券会社はマネックス証券。

読者の皆さんにブラジル投資をお奨めするつもりはありませんが、投資に際し若干調べごとをしたので、もしご関心のある方はご参考にしてください。

まず足元の経済状況。エコノミスト誌は9月14日付の記事Late in, first outで「ブラジルはラテンアメリカの中で最初にリセッションから抜け出した国で、G20の中でもいち早く景気回復した国の一つである」と述べている。

ブラジル経済は2008年の最終四半期に-3.4%、今年の第1四半期に-1%と経済が収縮し、テクニカルにリセッションに入った。しかし内需特に家計支出が堅調で今年第2四半期には2.1%のプラス成長に回復している。

マンテガ財務相は「ブラジルは主要経済の中で最も最後に景気後退に陥り、最も早く抜け出すことができた」ことを強調している。彼はこれはブラジルの強固なマクロ経済の基盤と効果的な金融、財政政策の証明だと述べている。

エコノミスト誌の調査機関は、ブラジルの今年の経済成長率を前回予想の-1%からゼロに引き上げた。2010年について同誌はマンテガ財務相が予想する4%以上よりは低いものの3.3%の経済成長を予想している。

ブラジル経済が先進国のリセッションに対して抵抗力がある理由の一つは、輸出依存度がGDPの13%(中国、日本、ドイツなどでは大雑把にいうとGDPの4割)と低い点にある。

また政府は景気刺激策を取っているが、その規模は中国や米国に較べるとGDPの1~1.5%程度と大きくない(中国はGDPの13%、米国は6.7%)。

またGDPに対する公的債務の割合は36.9%と低い(日本は173%!いずれもCIA Factbookによる)。このことはブラジル経済が大きな不況抵抗力を持っていることを示唆する。

次に幾つかの基本的データを紹介しよう。国土の大きさは852万平方キロ、日本の22倍強で米国や中国より少し小さい。人口は1億98百万人。GDPは購買力平価ベース(PPP)で2兆ドル、市場レートベースで1.6兆ドルだ。国民一人当たりGDPは10,200ドル(PPP)で、中国の6,000ドルよりかなり高い(日本は34,000ドル)。

2008年度の経済成長率は5.1%。失業率は7.9%だ。因みに中国の失業率は都市部の定住者に限っては4%と発表されているが、都市部への出稼ぎ労働者を含めると9%、地方まで含めると失業者は非常に多い(統計はない)。これに較べるとブラジルの労働市場はかなり良さそうだ。

ブラジルにどのような企業があるのか?という点については実は勉強中。時価総額で最大手の企業は金属・鉱業のコングロマリットValeで時価総額は1,396億ドル。同社はニューヨーク証券取引所に上場しているが、同市場で時価総額順位は16番目(日本のトヨタが26位)。次が石油・ガスのペトロブラスで時価総額827億ドルでニューヨーク市場42位だ。

以上私のブラジル学事始だ。オリンピック開催決定を機会に投資をして、その国の勉強を始める。そして又自信を深めることができるならば追加投資も考えてみたいものだ。

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電子書籍キンドルは世界に飛び出す

2009年10月07日 | デジタル・インターネット

アマゾンは昨日キンドル(電子書籍)の新しいバージョンをまもなく発売すると発表した。キンドルは書籍を無線でダウンロードすることができる道具だ。新しいキンドルの特徴は米国以外の100ケ国以上の国でもコンテンツをダウンロードできることだ。日本では10月19日から出荷が予定されている。

ニューヨーク・タイムズによると、新しいキンドルは旧バージョンと外見(6インチのスクリーン)は同じだが、従来と異なりAT&Tのワイヤレス・ネットワークを使い(従来はスプリントのネットワーク、スプリントはローミングが弱かった)、海外でのダウンロードを可能にしたことだ。

新キンドルの値段は279ドル。創業者兼CEOのJeffrey P. Bezos氏は「我々は常時数百万冊の英語の本を非英語圏に輸出している」「彼らは新キンドルを手にすると、60秒で本の内容をダウンロードできる」と述べている。

海外の新キンドルユーザーは約20万冊!の英語の本をキンドル経由で購入することが可能になる。

キンドルがどれ位売れているか正確な数字は不明だが、調査会社Forresterは2009年の電子書籍の販売見通しを従来の2百万台から3百万台に引き上げた。

Bezos氏はキンドル経由でダウンロードできる本はアマゾンがペーパーベース・電子ベースで販売する本の48%に到達しているという。

☆    ☆    ☆

アマゾン ジャパンによると「将来的には日本語のデジタル書籍を扱いたいと思うが具体的な計画はない」という。

電子書籍キンドルの与える影響をデジタル書籍のない日本との対比で少し考えてみよう。まずキンドルを利用することで、英語で書かれた本は「安く即時に」世界100カ国で販売されるということになる。本が読まれるということはそのコンテンツが読まれるということで、コンテンツは有形・無形に人々の考え方や嗜好に影響を与える。ということはキンドルとともに「英語圏文化」がますます世界に広がるということだ(無論非英語圏の人間が英語で本を書くこともあるだろうが)。英語の優位性はますます強まるだろう。

キンドルを使うことができる英語圏の人はそれ以外の国の人に較べて、「安く速く」本=情報・知識を手に入れることができる。ということは情報と知識において優位に立てるということだ。日本もどこかで本のデジタル化に取り組まないと競争力を失うのではないだろうか?

次にハードウエアとしてのキンドルはソニーなどの競争相手を持つが、本というコンテンツを押さえるアマゾンの絶対的優位は動かないということだ。アマゾン恐るべし。

☆   ☆   ☆

さて私がすぐキンドルを買うか?というとまだ決めていない。理由は簡単、60秒で本をダウンロード出来ても、英語の本を読むには骨が折れるので買ったところでホコリを被ってオシマイというリスクがあるからだ。

ただ内緒(もしこのブログを見ると困るが・・・)だが、娘にはクリスマス・プレゼントとして買ってやろうかな?とは考えている。この点だけからいうと1ドル80円位の円高が来ると助かるのだが・・・

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投資に役立つブログサイト

2009年10月07日 | 株式

数日前の日経新聞に「一般人がETFに投資しながら、専門家並のブログを書いている・・」という主旨の記事が出ていた。

確かに色々投資に役に立つサイトはあるようだが、私は時間もないし、ディトレーダーでもないのでそれ程見ていない。そんな中で最近「便利だなぁ」と思うサイトを偶然見つけた。

サイトの名前はEverybody gets what they want http://ngtn.blogspot.com/ 。

内外の株式市場の動きとその解説に加え、ファイナンシャルタイムズの記事やクルーグマンやルービニ教授のコメント(いずれも英語)を紹介しているので、ざっと目を通すに便利なサイトだ。

ブログではないが「みんなの株式」というサイト(これはマスチューンという会社が運営している)http://minkabu.jp/も面白い。「18万人超の個人投資家による売り・買い銘柄予測」など短期取引をする人には面白いだろう。

話はEverybodyの方に戻るが、同ブログにインフォシスInfosysに関するウオール・ストリート・ジャーナルWSJの記事が出ていた。この記事は昨日読んでいたが再び目にしたので、ちょっとコメントを書こう。

何についてのコメントか?というと「リスクの所在」ということに関するコメントだ。インフォシスはタタ・コンサルタンシーなどと並ぶインドを代表するIT企業だ。インフォシスはナスダックに預託証券を上場しているので、米国内でドルで投資することができる。私も2年程前にインフォシスの預託証券を買い今も保有している(高値で買ったので、値戻りを待っている状態。にが笑)。幸いなことに株価の戻りは堅調で、1年前から61.18%上昇している。同期間のダウが-8.42%だからパフォーマンスはかなり良い。因みに過去5年間で見ても、ダウが-5.82%なのに較べてインフォシスは68.8%上昇しているからパフォーマンスは良好だ。

「インフォシスの米ドル預託証券に投資する」リスクは何なのか?という本題に戻ろう。

まずインフォシスの業績リスクがある。インフォシスの業務は米国や欧州企業のIT部門のアウトソースを受けているから、アウトソースを行う欧米企業特に金融機関等の業績に大きく左右される。実際リーマンショック以降インフォシスの株価は急落した。この点から見るとインフォシスはインドの企業ながら、業績リスクは発注先である先進国の企業業績と連動性が高いといえる。

またインフォシスはインド内の同業タタ・コンサルタンシーなどと競合する他、それ以外の人件費等コストの安い発展途上国のIT企業とも潜在的に競合する。また最近は「IT部門の下請」だけではなく、もっと大規模なIT全般の受託やクラウド・コンピューティングまで視野に入れているのでIBMのような米国のIT企業とも競合する。インド経済が成長すると人件費が相対的に高くなり、IT企業の競争力は長期的には低下するので、それを上回る付加価値を生み出せるかどうかがポイントだろう。

為替リスクについていうと、米ドル預託証券を日本から投資するので、ドル円の為替リスクが存在する上、インド・ルピーと米ドル(アウトソース代金の支払)の為替リスクもある。

このようなリスクは国際的企業に投資する場合はつきものだ。例えば日本の自動車メーカーの主な収益源が北米にあったことを思うと、日本の自動車メーカーの株価リスクは米国の景気リスクだったと極言できるだろう。また今後発展途上国が大きな市場となると、発展途上国の自動車購買力そのものがリスクなのかもしれない。

こう考えると株式リスクを「日本株」とか「米国株」といった国境で分けることや「先進国」とか「発展途上国」という経済の発展ステージで分けることはそれ程重要でないような気がしてくる。

尽きるところ個別の投資銘柄がどのようなリスクを背負っているか一つ一つ見ていくということなのだろうか?

だがこれは一般人には限界があるので、我々はグローバルなインデックス投資を行う方がベターということになりそうだ。

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増資圧力で日本株低迷

2009年10月07日 | 株式

3月のボトムから37%程度上昇した日本株だが、野村證券等の大型増資で需給が悪化、相場は重たくなっている。増資銘柄の中には10月5日に増資を発表したマツダのように、市場が資金使途を評価して急騰(発表翌日に株価は7.5%上昇)した銘柄もあるが、全般的には希釈化が敬遠されている。

ファイナンシャル・タイムズ(FT)は調査会社ディーロジックのデータを紹介しているが、それによると今年347億ドル(約3兆1千億円)の増資(IPOを含む)が行われた。増資が多いセクターは金融で259億ドル(内野村證券は48億ドル)で、次が電子機器の46億ドルだ。この増資は史上最大規模で、来年3月に向けて更に増資が続きそうだ。

日興アセットのチーフ・ストラテジスト・Vail氏によると「日本企業の多くの社長は二番底を予想しているので、その前に増資を行いたいと考えている」ということだ。増資により自己資本を強化すると銀行借入や債券発行のコストを下げることができるからだ。

金融機関については今後の自己資本規制強化、特に普通株自己資本比率規制をにらんで多くの会社が増資のタイミングを狙っている。

この需給の悪化が日本株相場の重しとなるとみるストラテジストは多いようだ。

クラウゼビッツに「戦略的誤りを戦術的に覆すことはできない」という言葉がある。戦術=資産配分、戦略=個別銘柄選択、とするとこれは資産運用に関しても至言である。

日本株への資産配分比率という戦略を誤ると、個別銘柄選択の巧拙ではカバーできないということになるだろう。

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