昨年末から今年初めにかけて急速に収縮したアジアの経済の回復が目立ってきた。今年の第一四半期と第二四半期のGDP成長率(年率換算)を較べると韓国では10%近い増加(ただし前年比では2.5%のマイナス)、シンガポールは20%(前年比3.7%)の増加となっている。中国は四半期成長率を公表していないが、エコノミスト達は15%-17%の増加と考えている。
この急速な回復の要因についてエコノミスト誌は次のように分析している。「昨年末から今年初めの生産量の急低下は在庫調整によるもの」「より重要なことはアジアが世界で一番大きな景気刺激策を取ったこと」と述べる。韓国の消費支出は自動車購入に対する減税や低所得者層支援策のお陰で第二四半期に14%(年率換算)拡大した。
アジア開銀は東アジアからの輸出は最終的に6割先進国に輸出されるという。アジア経済の回復に懐疑的な筋は欧米の景気が本格回復していないので、東アジアの景気回復は持続しないのではないかという懸念をしめす。しかしエコノミスト誌は中国の景気回復が東アジアのビジネスと消費者の信頼を高める効果を無視していはいけないと述べる。
エコノミスト誌によると最近のHSBCのレポートは、金融緩和策の持続によりアジアの景気回復は来年も持続するだろうと予測している。
エコノミスト誌は「新興アジア諸国が面しているリスクは西欧諸国の弱い需要ではなく、自国のインフレまたは資産バブルだろう」と述べている。2,3日前のインド中銀は今年のインフレ見通しを5%に引き上げ警戒を強めた(ターゲットは3%)。中国の金融当局は銀行に貸出金が株式投資に流れず、実体経済に向かうようにルール強化を命じている。
この記事の最後にエコノミスト誌は、アメリカの連銀がバブルに対してもう少しこのような対応を取れば、世界はこんなに混乱しなかっただろうと述べている。
以下若干の私のコメント
今回のリセッション入りの前に「ディカップリング論」が流行ったことがあった。昨年末のアジア経済の収縮を見てディカップリングはすっかり影を潜めたが、中国経済の回復が東アジア経済の回復を牽引し、地域の内需を高めそれがアメリカの輸出を高めることになると、再びディカップリング論が復活するのだろうか?
ところで不況時に強力な景気刺激策を取るためには、健全な財政を保っておく必要がある。借金の上に借金を抱えて景気刺激策を取った日本は例外だが、これは政府の借金である国債が、預貯金や保険システムにより最終的日本国民に保有されているから成り立つ話。高齢化の進行とともに、個人金融資産が減少しはじめるとこのシナリオが成り立つ保障はない。
私は苦しい中でも日本は増税をして~増税と社会保障への信頼向上をパッケージにして~、財政の健全性回復を図らないと手の打ちようのない事態がくるのではないかという懸念を禁じえないのである。
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