FTによると昨年中国の大手銀行は不良債権償却額を前年の倍以上に拡大した。中国経済の減速により、不良債権の重荷が増えているためだ。
ただし不良債権償却額を増やしても、中国工商銀行等大手5行の利益水準はしっかりしている。3月27日に発表された工商銀行の2013年度の利益は2627億元(前年度は2385億元)。昨年12月時点での不良債権比率は前年同時期の0.91%から微増した0.94%にとどまっている。
ただし株式市場のバリエーションによると投資家は不良債権は公式発表額の5倍はあるのではないかと考えているとFTは報じている。
今中国の中小銀行では、破たん懸念の噂が噂を呼び、預金引き出しに預金者が殺到する事態が時々起きている。
そこで公表される不良債権比率が高過ぎるとよからぬ噂が広がる恐れがあるので、不良債権の償却を急いでいると見るアナリストもいる。
最近当局も不良債権償却ルールを緩和し、銀行が不良債権を償却しやすいようにした。これは今後新たに発生する不良債権の吸収を容易にするためだと思われる。
バブル崩壊後日本では、当時の大蔵省が中々銀行に不良債権に対する引当(無税償却)積み増しを認めない時期が続いた。大蔵省は銀行からの税金が減ることを懸念していたのだ。そのことが日本の不良債権処理を遅らせたことは周知の事実。
中国の当局が不良債権償却額拡大を容認する政策を取ることは、金融システム安定の観点からは歓迎するべきことである。と同時にそれは見える氷山の下に相当な不良債権が埋もれていることと、今後不採算企業に大ナタが振るわれることを示唆していると思われる。
ここだけを見ると当時に日本より今の中国の方が資本主義的だ、という感じがしないでもない。
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