WSJ ”Chinese exiting U.S. real estate as Beijing direct money back to shore up economy"によると、中国政府は経済成長悪化を支えるために、中国人投資家に米国の不動産を売却して、現金を中国に持ち帰るよう指示を出している。
中国勢は数年前中国政府が対外投資規制を緩和して以来、米国不動産を大きく買い越していた。有名なディールではニューヨークのランドマーク的なホテル・ウォードルフ・アストリアなどの買収があげられる。
ところがReal Capital Analyticsによると、昨年第4四半期に保険会社等中国勢投資家の米国商業用不動産投資は854百万ドル減少した。
これで3四半期連続で中国勢は米国商業用不動産を売り越したことになった。
中国勢の米国不動産投資が減速している背景には、中国国内での銀行融資が厳しくなっていることや米中政府間の貿易・政治面での緊張が高まっていることがある。
中国政府が資本統制をすぐ止める徴候はないので今年も引き続き中国勢は米国不動産の処分に回るだろうとアナリストは見ている。
しかしこれはいわゆる不胎化した物件の投げ売りではない。売却価格が購入価格を下回る取引もあるようだが、2014年以降人民元は米ドルに対して12%程度安くなっているので、売買損を為替益で埋め合わせることができる場合が多いと不動産仲介業者は判断している、ということだ。
この記事を読んで私は1980年代後半に日本人投資家が米国不動産を買いまくっていたことを思い出した。日本人投資家がホテルや商業ビルを買いまくっていた時が不動産価格のピークで、1990年台に入ると米国不動産市場は大不況に陥った。
家賃やホテルの部屋代収入は、支払利息を大きく下回るようになり、持ちこたえられなくなった投資家は投資不動産を手放さざるを得なくなった。日本国内でもバブルの崩壊で資金調達が困難になっていたからだ。
それから約30年。背景は異なるが、好調な国内経済に支えられて米国不動産投資を拡大させたアジア勢が米国不動産投資を減少せざるを得なくなったという点で一種のデジャヴを感じる。
もっとも中国人投資家の方が当時の日本人投資家より少し賢いようで、最近はトロフィー物件を買うよりも、倉庫物件など手堅い収益が見込まれる物件を選好するようになっている、という話も聞く。
さてこの中国人投資家の動きが、米国不動産市場にどのような影響を与えるのか?
また日本でも同じような動きがでるのか?
など興味深いトピックではあるが、そのあたりは今後の情報収集ということで。
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