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成長鈍化、しかし嵐の上空を行くドイツ

2011年08月17日 | 社会・経済

昨日(8月16日)の米国株式市場は一時の大幅下落は取り戻したものの、ダウは77ドル下げて終わった。7月の米国の鉱工業生産指数が市場予想の倍近い0.9%上昇という好材料があったものの、ドイツのGDP成長率の低下とメルケル首相・サルコジ大統領の会談結果に対する失望から、好材料は無視されたようだ。

第2四半期のドイツのGDP成長率は0.1%(第1四半期成長率は修正されて1.3%)。エコノミスト誌によると、ドイツの統計局は輸出は強かったが、個人消費と建設が弱かった。数日前に発表されたフランスのGDP成長率(第2四半期はゼロ)に続いてユーロ圏の経済の弱さを改めて実感させる数字だ。全ユーロ圏の第2四半期の経済成長率は0.2%(第1四半期は0.8%)となった。

メルケル・サルコジ会談では、一度否定された金融取引税の復活とユーロ圏諸国でより厳格な均衡予算を憲法に盛り込むことが合意されたが、市場が期待していたユーロ共同債は否定された。

メルケル首相はまた「ユーロの信任を回復し、危機を沈静化させる」ことに対する危機意識が欠けていると批判されるだろう。

メルケル首相はどうしてそんなに落ち着いていられるのか?と疑問について、前日読んだニューヨーク・タイムズにGermany is flying above the economic stom in Europeという記事があった。「ドイツは欧州圏の経済の嵐の上空を飛んでいる」という意味で、ポイントを紹介すると次のようなことだ。

「ドイツではアテネで見られるような催涙ガスもなく、ロンドンで見られるようなタイヤを燃やす光景もない。多くの欧州諸国が厳しい緊縮財政法案の立法化に苦しむ中、ドイツでは142億ドルに達する減税案が議論されている」

「何故ドイツが平然としていられるか?ということの単純明快な答は雇用だ。ドイツでは今年の5月に前年に較べて706,000人雇用が増えた。これを米国の規模に引き直すと2.7百万人雇用が増えたことになる。ドイツの失業率は7%だが、人口が減少しているので、失業よりも熟練労働者の欠乏を懸念する経済学者や政治家がいるほどだ」

「ドイツの若年層の失業率の低さはオランダ、オーストリアについで欧州で3番目。欧州の若年層の平均失業率は20.5%で、ドイツのそれは半分以下の9.1%である。政府の専門家は、雇用ブームは向こう4年間は続くと予想している。」

ところで目下のところ、このように好調なドイツだが、これはシュローダー前首相の時に、アジェンダ2010と呼ばれる構造改革を推進したからだと言われている。これは労働市場の柔軟化と社会保障費用の削減により財政の健全化を図ったものだった。ただしこの構造改革はドイツ国民には不人気でシュローダー氏は2005年に退陣し、メルケル首相が大連立内閣を組成している。

厳しい構造改革を経て強い経済力をつけたドイツ国民について、メディアは「彼等はギリシア国民に同情していない」と報じられることが多いが、ニューヨーク・タイムズの記事によるとある世論調査では52%のドイツ人はギリシアの抗議行動に共感を示している(39%の人は示していない)という。そのことはドイツの構造改革が厳しかったことの証左ともいえるだろう。

☆   ☆   ☆

ところで日本に目を向けると、いよいよ菅首相が退陣して、民主党の代表選挙が行なわれる目処が立ってきたが、出馬が取りざたされている議員の中で復興増税を明確にしているのは野田財務相と仙石官房副長官位だ。

今のところ日本国債の95%以上は日本人が保有しているので、「国債危機」は起きていない。だがこれは患者が自覚しない間に病巣が拡大している状態に過ぎない。

不人気でも10年20年先を見据えた政策を推進できる政治家は出てこないものだろうか?

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