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積立金から基礎年金に回す発想の恐ろしさ

2010年12月03日 | 社会・経済

来年の予算編成を巡って議論になっているのが、基礎年金の国庫負担分2兆5千億円を保険料を財源とする厚生年金勘定から回そうという財務省の案だ。

厚生年金勘定は残高が120兆円もあるから、少しくらい回しても良いと考えるのはとんでもない誤りだ。何故かというと厚生年金勘定そのものが、積立不足の状態だからだ。

国民年金法と厚生年金保険法の規程に基き政府は5年毎に財政の見直しを行っている。09年2月の社会保障審議会作成の財政検証結果を見ると、09年の年度末積立金は144兆円になっている。ところが10年8月の厚生年金収支決算を見ると残高120兆円だ。つまり今後厚生年金を払い続ける上で必要と考えられる144兆円に対し24兆円も不足しているのだ。国民年金については09年の年度末に必要とされる積立金10兆円に対し、実際の残高は7兆5千億円。2つの年金合計で必要な積立額は154兆円だが実際にあるお金は83%の128兆円だ。

国民年金について単年度の収支計算を見ると、「見通し」では1千億円のプラスだが、実績は2千3百億円のマイナスだ。つまり「見通し」よりも保険料収入が少なく、年金給付が多かったのである(細かく検証していないが、給付増の影響が大きいと思われる)

必要積立額に対して年金勘定が不足している大きな理由は、運用不振の影響が大きい(09年度は9兆円のプラスだったが)。それに加えて5年前に作られた「財政見通し」が今となっては非常に楽観的なシナリオによることも「計算上の積立金」を増やすことになった。楽観的なシナリオというのは、例えば物価上昇率は1%、賃金上昇率は2.5%、運用利回りは4.1%というような条件設定だ。だが現実はデフレが続き、賃金も低下傾向。運用利回りは平均ではマイナス。

そして予見可能な将来このようなシナリオに戻るとも思えない。

勤労者と会社が折半で拠出した厚生年金は「給与の後払い的」性格を持っている。仮に財政状態が良く、貸したものを確実に返してもらえるなら一時的な用立てを行うことも考え得るが、返済原資の目処も立たないお金を貸しては、やがて共倒れになる。

厚生年金の積立金を基礎年金に回すなどという役人発想は、年金資金を軍事費に流用した戦前の政府と同じ発想なのである。

今必要なことは、直ちに消費税を引き上げて税収で国民年金の不足分を補うことなのである。

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1 コメント

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こんにちは、温暖な週末如何お過ごしでしょうか? (Hiko)
2010-12-05 08:26:41
こんにちは、温暖な週末如何お過ごしでしょうか?
ご指摘の点は、全く同感です。このブログを掲載された時に読んで、「まるで、アイルランドだな。。」と思っていると、本日の日経3面の「経済解読」にも同じような論調がありました。

戦前、ロンドンだったか、ワシントンだったかの軍縮会議で、戦艦保有比率が対米に比べ日本が少なくなったこと(5:5:3)に、艦隊派は猛反対、それに対して、吉田海軍大臣は「これでよい。要すれば、日本には金がないということである。金がないと戦争は出来ないというである。」と言ったことを、以前読んだことがあります。(半藤一利の著作だったと記憶)。 
日本が誇る「個人金融資産1,400兆円」もそれを保有する60代以降が鬼籍に入ると瞬く間になくなるでしょう。 日本には、もう余り余裕資金はない。これを分かりやすく一般国民に政治家は伝え、これからの日本の姿につき国民的議論を展開しなければならいのででしょう。 Capital flightは密かに、しかも確実に起っていると感じています。 
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