WSJは「中国が今年に入って過去にないハイペースで米国債を購入していることが米国金利低下の一要因」と報じいてた。
昨日公表されたデータによると、5月までの5か月間で中国の米国債保有額は1072億ドル増加して、1.27兆ドルとなった。国債保有額の増加ピッチは過去最高の速さだ。
雇用の改善や物価上昇の兆し等本来であれば金利上昇の材料が揃いつつある中で米国長期金利は低下基調にあり、多くのエコノミストの頭を悩ませてきたが、その一つの謎が解けたようだ。
中国が米国債の購入を急増させているいる理由は、人民元を安くするため、大量の人民元を売り、米ドルを買っているからだ。中国は買った米ドルを1年未満の短期債ではなく、償還期限の長い長期債で保有するため10年国債の金利が低下している。昨年末に3%だった10年国債利回りは2.54%まで低下している。
10年国債の今年の年末利回りについてモルガンスタンレー等大手投資銀行は3%と予想しているが、投資家の中には中国の国債買いが金利上昇を抑えるのではないか?と見ている人もいるようだ。
中国の外貨準備高は世界最大で4兆ドルに近い。中国政府はその内訳を示していないが、大方の債券はドル建てだと言われている。
今年の上半期で米国債を一番買い越したのが米連銀でその次が中国だった。
つまり中国は輸出を拡大しようとしいて人民元を安いレベルに据え置こうとして、人民元売り=ドル買いを行う。そして買ったドルで米国債を買う。米国では金利が低下し、住宅ローンの支払い負担が減少するので、住宅市場が活性化し、景気が良くなる。
一見双方ハッピーだが、そのハッピーは持続するかどうかは分らない。つまり発行総額12兆ドルの米国債の1割強を保有する中国が何らかの理由で米国債を大量に売るような事態が起きると米国金利が急上昇する可能性があるからだ。一方常識的に考えると中国政府が自らの売りで保有する米国債の価値を暴落させるような大量の売りを出すとは考えにくいのも事実だが(いや考えたくないというべきか)。
ところで米金利の低下ないしは上昇速度の減速見通しは円安ムードに歯止めをかけ、ドル円相場を円高に向かわせる。総じて円高は日本株安・円安は日本株高につながり、株高は安倍政権の支持率上昇、株安は支持率低下要因だ。それが日銀の次なる量的緩和策の実施時期を早める可能性があるかもしれない・・・・・・
中国の米国債買いに予想外のside effect(副作用)がでる可能性がないでもないと感じる次第だ。
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