楽しみにしていたNHKのハゲタカが終わった。最後は大空電気のレンズ部門が「従業員を中心としたバイアウト」Employee Buyoutを実施するということで終わった。俳優としては主演の大森南朋も良かったが、レンズ部門のベテラン社員加藤を演じる田中泯の眼に力があった。舞踏家田中泯氏について私は知るところはほとんどない。知っていることは藤沢周平原作の「隠し剣鬼の爪」で剣術師範戸田寛斎を演じた田中泯氏の凄まじく気合の入った殺陣と身の軽さである。その迫力には驚嘆したものだ。ハゲタカの田中泯氏は地味な役だが、この人なら世界が欲しがるレンズ研磨のプロだろうという静かな迫力が出ていた。
さて景気の好転や少子高齢化の影響で日本の雇用状況が大分変わってきて従業員の重視に見直されてきた今、ハゲタカがEmployee Buyoutで終わったことは意味深いかもしれない。
日本の会社にはかって人を大切にするという美風があったが、バブル崩壊後の苛烈なリストラ時代にこの美風は薄れた。しかし企業の力というものは尽きるところ人なのである。コストカットのため人減らしを推進する管理者・経営者が「腕力あり」「能力あり」と思われた時代は異常な時代であった。彼等が切り捨てたものはコストとともに信頼と人材という長期的資産だったのである。
ハゲタカ、中々良いドラマだった。今度原作を読もう。