今日のニューヨーク・タイムズのビジネス欄(ネット版)で一番読まれていた記事が、Interest rates have nowhere to go but up(金利は上昇するしかない)という記事だ。寄稿者のSchwartz氏について不勉強にしてよく知らないが、経歴を見るとkeen bird watcher(熱心な野鳥観察者)ということだ。野鳥と同様金利についても鋭い観察を期待するところだ。
記事はまず債券王の異名を持つPIMCOのビル・グロスの言葉を紹介する。「米国人は長い間金利のローラー・コースターは下降する一方だと考えていたが。今我々は相当な金利の上昇局面に面している」とグロス氏は述べる。
PIMCOの旗艦ファンド・Pimco Total Returnは、9ヶ月前には資産の半分を米国国債に振り向けていたが、現在は30%に圧縮している。これはファンドの23年の歴史の中で最低の資産配分だ。タイムズによるとグロス氏は米国債を売却して、欧州の債券特にドイツ国債や、ブラジルのような新興国の債券に資金を振り向けている。グロス氏が米国金利が上昇すると見る理由は、景気回復によるインフレ懸念と財政赤字拡大に伴う国債の供給過剰感だ。
米国金利の上昇は色々なセクターで兆候が見られる。30年の住宅ローン金利は先週昨年夏以来最高水準の5.31%に上昇しているし、モーゲージ・バンカー協会は今年の夏の終わり頃には5.5%まで、更に年末までには6%まで上昇すると予想している。
クレジットカードの金利も08年の第4四半期の12.03%という一番低い水準から今年2月の14.26%まで上昇している。これは2001年以来最高の水準だ。
長期金利がどれ位上昇するか?という予想は専門家の間で意見が分かれる。モルガンスタンレーは年末までに1.5%上昇する可能性があると予想しているが、JPモルガンの予想はもっと穏やかで0.5%程度の上昇というものだ。しかし幅はともあれ金利が上昇するということで、市場参加者の見方は一致しているとJPモルガン証券のフィックス・インカムのストラテジストは述べている。
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米国の10年国債の利回りは約4%で、日本の10年国債の利回りは約1.4%だ。これは歴史的な利回り格差ということだ。もし米国債の利回りがドンドン上昇すると、日本の国債金利も上昇するだろうか?
年金基金等機関投資家からすると、為替ヘッジ後の利回り格差が拡大すると、日本国債を売り、米国債に投資することになるから日本国債の利回りが上昇する可能性はかなりある。しかし銀行等の場合は、貸出の資金需要が強くないと集めた資金を国債で運用するしか術がないので、国債利回りが短期的に急上昇する可能性はそれ程高くないだろう。
日本国債の場合、むしろ気になるのは「年金を襲う2012年問題」かもしれない。この年から団塊の世代への年金支給が始まるので、厚生年金や国民年金の積立金の減少が加速するという問題だ。
そのインパクトを正確に予想することは難しいが、日本がデフレ基調から脱出できず、財政再建に目処もつけていないと「デフレ化の高金利」という非常にまずい状況に陥るリスクは低くはないと私は考え始めている。
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