今日(2月16日)内閣府が発表したデータによると、17年ぶりに名目成長率が実質成長率を上回った。インフレ率を示すGDPデフレーターは1.6%だった。デフレーターがゼロより大きいとインフレを示すが、前回デフレーターがゼロを上回っていたのは、消費税の引き上げがあった1997年のこと。
(写真はWSJ)
WSJによると、従業員給与は全体として1.8%伸びたが、インフレ調整後の実質賃金は1%の減少だった。インフレで一番恩恵を受けるのは、長期債務の借り手である。日本で最大の債務者は日本国自体だ。国は国債と年金という形で国民に債務を負っている。国債に較べて年金の方は少々輪郭がはっきりしないところがあるが、国が一定金額または一定の計算方式で算出される年金額を支払うという約束をして、掛け金を集めている制度である。もちろん税金でまかなわれる部分はあるが、それは「今税金を払っておけば将来あなたが年金を必要とする時には、その時の納税者が面倒を見てくれます」という国のアレンジメントだから、全体として国の債務であることには変わりはない。
ところで国は今年からマクロ経済スライドを発動して、年金の改定幅を物価上昇率より低く据え置いた。物価は上昇するが、実質賃金は物価上昇に追いつけず、年金も追いつけないという状況が起きている。それでも景気の回復が続くと、実質賃金は物価上昇に歩調を合わせていく可能性があると思うが、恐らく年金が物価上昇に追いつくことはないだろう。
デフレ脱却で際限のない国の債務の膨張に歯止めがかかることは喜ばしいが、個人的には悩ましい問題である。