金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

巨像か虚像か?

2007年12月20日 | 社会・経済

インドのことを眠れる巨像といい、中国を眠れる獅子と呼ぶ言い方があった。最近は巨像も獅子もしっかり起きているようだ。ただし世銀の最新の研究によると巨像のサイズは思ったより小さいらしい。もっともこれをもって虚像というのは言い過ぎだろうが、タイトルは少し大袈裟に書いてみた。

FTによると世界銀行は今週中国とインドの経済規模は従来考えられていたよりも4割方小さいと発表した。世銀は146カ国の1000項目の商品とサービスの価格を比較することで、購買力平価を計算した。購買力平価は為替レートよりも、相対的な生計費を測定する上で有効な物指と考えられている。新しい購買力平価で測定すると世界の総生産量に占める中国のシェアは10%、インドのシェアは4%になる。 また物指が変わったことで中国の貧困層が数億人増えることになったということだ。世銀の定義では一日の生計費が1ドル以下の層を貧困層という。今回の購買力平価が市場の為替レートを下回ったことで、1ドル以下の貧困層が増えたということだ。換算レート一つで日本の総人口を上回る人が貧困になったりならなかったりするのも変な話だ。

話は飛ぶが昨日卒業した大学の山岳部OB(東京支部)の忘年会があった。そこで最近チベット方面に現役部員が偵察登山に行った時のスライドを見た。スライドには中国奥地の状況が写っていた。裕福には見えないが一日1ドルの暮らしよりは豊かそうだ。もっとも自給自足の物品も多いのでこれらは購買力平価の計算にどのように はねるのか興味があるところだ。人々の豊かさを物価の比較に基づく収入だけで測ることは難しい。毎日3時間も満員電車で通勤する生活をもって豊かとするのか、テントを出たところが職場の遊牧生活を豊かとするのかは簡単に判断できる問題ではない。

さて中国とインドの経済規模が思ったより小さいと世界が認識するとどのようなことが起きるのだろうか?
まず米国は2012年頃には中国が経済規模で追いつくのではないか?という恐れを抱いていたがそれがかなり先に伸びたので、緊張を緩める。

一方米国の景気後退が中国・インドに救われるというデカップリング派には不利な材料だろう。中国はこれを奇禍として、元高議論に抵抗するかもしれない。「能にして不能を示す」(孫子)という権謀実数に長けた国だけに面子よりも実を取るかもしれない。

いずれにしろちょっと興味がある数字がでたものだ。

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さわかみ投信は「買い時」と見るが・・・

2007年12月20日 | 株式

以前私のブログでさわかみ投信を紹介した時「キャッシュポジションの高さが気になる」と述べた。ところが最近のさわかみ投信は、キャッシュポジションを落とし、ほぼフルインベストメントの状態だ。(最近の報告では株式投資98.36%)これは日本株投資の絶好のタイミングと見て、ゴルフに例えるとマン振り(全力スイング)に出たというところだ。今日(12月19日)の日経金融新聞はさわかみ投信の沢上代表の「(国内株の低迷も)長期投資には絶好のチャンス。むしろ資金が足りない」「(買った直後に値が下がっても)5-10年先の業績をイメージしているから気にしない」という言葉を紹介している。

さわかみ投信の上位投資先には「トヨタ」「ホンダ」「デンソー」「信越化学」「キャノン」といった日本を代表する国際優良銘柄が並ぶ。ただ自動車関係はガソリン高騰、円高、米国の景気減速の影響を受け、しばらく値が重いだろう。従ってさわかみ投信のパフォーマンスもしばらくは改善しないかもしれない。私は少し前デンソー株が高くなった時一旦利食い売りを行った。(私はデンソーを非常に良い
会社だと思っているので、押し目を拾う予定)

さわかみ投信の今年の騰落率は-1.30%(過去3年の騰落率は42.2%)とさえないが、市場平均(TOPIX)騰落率-13.2%は大きく上回っている。運用者としてはセクター(この場合市場)平均を上回ると満足かもしれないが、個人投資家はベンチマークとの勝ち負けで飯を食っているのではなく、絶対収益で飯を食っているので、市場平均に勝つだけではしかたがない。

昔大村益次郎を主人公とした司馬遼太郎の小説「花神」の中で「タクテクス(戦術)を知りて、ストラテジー(戦略)を知らぬものは国を誤る」という一文を読んだことを思い出した。又戦略的過ちを戦術でカバーすることはできないという言葉もある。
これらを資産運用に当てはめるなら、個別運用(銘柄選択)の巧拙よりも、資産配分(日本株か?外債か?など)の巧拙の方がより重要ということになる。
私は日本株運用者としてさわかみ投信の運用哲学を尊重しているが、戦略的観点から日本株へのアローケーションを減らしている。
具体的には過去数年間給料の1割を目処に毎月さわかみファンドをコンスタントに購入してきたが、今年の春から購入額を減らしその分海外インデックス運用を増やしている。
もっともこのストラテジーの変更が成功かどうか判定するにはもう少し時間がかかるだろうが、今のところスイッチした方が良かったという結果がでている。

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