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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ロイヤルベビー誕生、英国を勉強する機会

2013年07月23日 | 国際・政治

英国のウイリアム王子の妻キャサリンさんが男の子を出産した。日本でも関心が高まっていた話題だ。関心が高まるといえば、これを機会に少し英国のことを勉強して学ぶべきことは学ぶチャンスではないか?などと考えている。と偉そうに書き出したが、私は英国については全くの門外漢。30代中頃は仕事で年に4,5回出張していたが、それ以来すっかりご無沙汰である。

「英国に関心を払ってはどうか?」といった背景は二つある。一つは昨日テレビのニュースを観ていたら、町の人から「男の赤ちゃん、女の赤ちゃんどちらを期待していますか?」と声をかけられたエリザベス女王が「どちらでも良いわよ」と答えたシーン。

英国では2011年に王位継承法が改正され男女にかかわらず長子が承継することに改正された。もちろん長子承継に変わったから女王が「どちらでも良いわよ」と言った訳ではないだろうが(子供はすべて可愛いから)、女王はじめ英国の人が新しい承継者の誕生にホッとしたことは間違いないだろう。出産の高齢化や少子化が進む中で男女を問わない長子承継を決めた英国の知恵に学ぶところはあるのではないだろうか?

もう一つの背景は7月6日付のダイヤモンドで読んだ櫻井よしこさんの話。櫻井さんは英国公使のジュリア・ロングボトム氏から「(歴史認識問題について)中国の印象が正しいという印象が母国でも強かったのは事実です。しかしそれは微妙に変わりつつあります」という話を聞いている。

そして櫻井さんは「英国の微妙な変化は、情報の死活的重要性に気づいて発信し始めた安倍政権の世界戦略を奨励するものとみてよいだろう。そもそも日英両国には多くの共通点がある。島国、誇り高い文明、倫理観と慎み深さ。日本の主張に少し、耳を傾け始めた英国との絆を深めていく好機である」と結んでいる。

情報発信といえば、参院選の自公勝利の後、中国と韓国のメディアから安倍政権で日本の軍国主義化が強まるといった発言が流れているが、英国のBBCはさすがに冷静な見方を示していた。

BBCは「中国、韓国は安倍内閣が第二次大戦の戦争責任の見直し、憲法改正を推進し、島嶼問題でもっと好戦的になるのではないか?と懸念を示しているが、現実はもっと平凡でドラマチックなものではないだろう」と述べている。BBCは安倍内閣がまず国内の経済問題に集中すると予想しているからだ。

英国の一つの強みは世界的に影響力を持つクオリティの高いメディアを持っていることだ。そのメディアの共感を得られるような、論理的で明快だけれど慎み深い主張を続けていくことが必要だろう。

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日本、北アジアでの不人気南アジアでの人気は当然

2013年07月14日 | 国際・政治

昨日米国の調査機関Pewresarchの日本に関する各国世論調査結果が日本の新聞にも一部報道されていた。

日本の新聞に載っていたことも含めて調査結果のポイントをまとめると次のとおりだ。

  • 日本国民の国の方向に対する満足度はピューが2002年に調査を開始して以来、最高水準にある。国の方向に対して満足している人は33%だが、昨年から13%上昇している。
  • 国の経済状態については、27%の日本人が経済状態は良いと言っているに過ぎないが、昨年はたった7%の人が良いと言っていたのに過ぎないので、顕著にリバウンドしている。因みにピューが2013年に調査を行った先進国14カ国の間で、日本より経済状態が良いと言っている国は、ドイツ(75%)、カナダ・オーストラリア(各67%)、イスラエル(43%)、米国(33%)だった。( )内は良いと言っている人の比率。
  • また向こう1年間の経済見通しについて、経済見通しが良いと言っている国としては日本は米国についてで2番目である。
  • 阿部首相に対して日本人の71%が好感を持っている。男女別、年齢別、所得別、都会・地方別の支持率の差はほとんどない。
  • 憲法改正に反対する人の割合は現在56%と過半数を超えているが、反対する人の比率は06年の67%、08年の58%から少しずつ低下している。憲法改正を支持する人は男性が45%、女性は28%に過ぎない。
  • 日本に対するアジア・太平洋地域諸国の見方は、南北で分かれている。マレーシア(80%)、インドネシア(79%)、オーストラリア(78%)、フィリピン(78%)~( )内は肯定的な見方をする人の割合~など南方諸国の人は日本に肯定的な見方を示すが、韓国では22%の人が肯定的な見方を示すに過ぎず、中国に至っては4%の人が肯定的な見方を示すに過ぎない。韓国では77%、中国では90%の人が現在の日本に否定的な見方を取っている

さて現在の日本に対するアジア諸国の見方がこのように分かれる理由は何だろうか?というのが今日のテーマ。タカ派とみなされる安部政権の国内人気や島嶼問題で中韓に苛立ちが高まっていることは容易に想像できるが、それ以前から中韓の日本に対する見方は厳しかった。

ピューによると韓国の場合、肯定的な見方は08年から25%減少したというから08年に肯定的な見方をした人は47%で、同様に中国では06年当時に肯定的な見方をした人は21%に過ぎなかった。

話は変わるが昨夜TBSの「世界ふしぎ発見」を見ていたら、サンフランシスコ講和会議でスリランカの代表ジャワワルデネ氏(後に大統領)の日本の分割統治に対する反対演説で日本が分割統治に陥る事態から救われた、という話が紹介されていた。娯楽番組の揚げ足をとるつもりはないが、セイロン(スリランカ)の代表の演説が如何に感動的なものであったにしても、それだけで日本に対する諸外国の扱いが変わるものではない。現に米国のトルーマン大統領は「われわれのあいだに勝者もなく、敗者もなく、ただ平和に協力する対等なものだけがある」と演説し、パキスタン代表は「あたえる手は受けとる手よりも高く上がる」と演説した。ザクッというと冷戦の激化が日本に有利な環境を作り出したのである。

とはいうもののスリランカやインドなどが当時から日本に好意的だったことは事実。これは南アジア、東南アジア諸国の独立に日本が大きく寄与したからに他ならない。日本による占領あるいは占領はなかったものの爆撃(スリランカ)などの攻撃というマイナス面はあったものの、その後の独立や経済発展を考えると日本はこれらの国にとってトータルではプラスを与えたと判断されている訳だ。

それに較べて韓国や中国の日本に対する評価は極めて悪い理由は何だろうか?そのことを書くと長くなるので今日は止めるが、恐らく「長年格下と思っていた日本に踏みにじられた悔しさ」「自力で日本に勝てなかった悔しさ」のようなものがあるのではないか?と私は感じている。

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TPP、そろそろ「知者の慮は利害を雑う」議論の時代

2013年07月10日 | 国際・政治

孫子の九変編に「知者の慮は必ず利害に雑(まじ)う」という言葉がある。一般に「知者はものごとを判断する場合、利益の面と損失の面を合わせて総合的に判断する」という意味だと解釈されている。

私はこれに加えて「知者は国家の外交判断に感情を雑えず、利害というソロバン勘定を雑える」と意味があると考えている。何故そう考えるか?というと孫子は別の箇所で「君主や将軍は怒りの感情から戦争を起こしてはいけない」「戦闘に勝ったとしても、政治目的を達成できなければ、浪費(原文は「費留」)である」と述べているからだ。つまり孫子にとって君主・将軍とは、戦争による人命・物資の膨大な損失を考慮した上で、戦争の可否を判断すべき存在である。外交は血を流さない戦争であり、その方針は国益(損得バランス)の冷静な分析により判断されるべきである

TPPの問題について考えると、日本にとって有利なルールもあれば、不利となるルールもある。議論されている分野は29もあり、交渉に加わっていない日本はまだその全容は把握できていないが時の経過とともに詳らかになっていくだろう。

さて「知者の慮は必ず利害を雑う」という孫子の命題に従って、TPPに関わる日本の利害を考えてみよう。3月の政府試算によると、参加国が総ての関税を撤廃する場合、TPP不参加の場合と比べ10年後のGDPは3.2兆円増える(一方極端な前提ではあるが、農林水産業の生産額が3兆円程度減るという試算もある)。

日本企業がTPP交渉参加国に輸出する際、負担している関税は4,700億円で、日本が農産物等の関税で受け取っている収入は2,300億円に過ぎない。従って国全体としての収支としては明らかに12カ国がTPPに参加して総ての関税が撤廃された方がメリットがある。

といったそろばん議論をすると、TPP反対派の人から「食料自給率の問題はどうするのだ」「食の安全基準の問題は?」という反論が呈されるだろう。たしかに政府試算ではコメの場合、国産の3分の1が米国産と豪州産に奪われる、とされている。だが食料自給率が低下する国の安全が保てないと考えるのは幾つかの点で大きな問題がある。

一つは「既に日本の自給率はかなり低い(自給率は計算方式により異なる。話が複雑なので数値は省く)。だがそのこと国家の安全性に直接影響を与えているとは思われない。従って今後自給率を100%に引き上げるという大方針を遂行するのでなければ、自給率の低下がTPP参加可否の決め手にはならない。」という点である。次にこちらの方が大事なのだが、今の農業は石油がないと成り立たない、のである。石油がないと耕うん機も脱穀機も動かない。化学肥料も作れないし、収穫した農産物を消費地に運ぶことができない。つまり食料確保の問題を論ずるのであれば、石油資源の確保をどうするか?ということを議論しなければならないのである。さらに国家の安全性を確保するには、名称はどうあれ、自衛力の維持・向上が必要で、そのためには税収とその元になる経済力が必要なのである。

「食の安全基準」については、遺伝子組み換え食品について、米国には表示制度がない。一方日本、オーストラリア、ニュージランドは表示を義務付けられている。ここは「消費者の安全と健康を守ることが最大の国益」という姿勢で、譲るべきではない。

短いブログの中でTPPの得失を十分に論じることはできないが、それを検討する政治家を選ぶ時に私は「知者の慮は必ず利害を雑う」という言葉を思い出すと良いと考えている。国としての総合的な利害をきちんと分析して、判断する前に、「とにかく反対」という感情論が先行する人や、一部のセクターの損得による判断を下す人が国政のリーダー足り得ないということを、孫子は2千5百年前に喝破したのである。

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経済成長のスケープゴートに終わる可能性が大きい中国農民

2013年06月17日 | 国際・政治

昨日(6月16日日曜日)のNHKスペシャルhttp://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0616/は中国各地で起きる農民と地方政府の衝突、そしてその一つの解決策としての「紛争仲介人」の問題を取り上げていた。NHKのホームページによると「中国政府は、大規模な予算をあてて、人々の不満を緩和しようと懸命に取り組んでいる。 新生中国は、各地で高まる民衆の不満を解消し、更なる成長を続けることができるのか。」ということだが、私はかなり懐疑的に見ている。

中国の「都市化政策」は実質的には2,30年前にスタートしているが、改めて強調されたのは昨年12月の中央経済工作会議だった。そこで「都市化を積極的かつ穏便に推進し、都市化の質を高める」ことが改めて決めれた。なぜ都市化の推進が改めて取り上げられたか?というとそれが輸出に代替する経済成長エンジンと考えられるからだ。

ニューヨーク・タイムズはChina's Great Uprooting:Moving 250 million into cities「中国の大移転:2億5千万人を(農村から)都会へ」というタイトルの記事で、都市化政策の危うさに警鐘を鳴らしている。Uprootという言葉は「根こそぎ引きぬく。根絶する。(人やものを元の環境から)引き離す」という意味で、まさに農民を農村から引き剥がして都市に移住させる、ということだ。タイムズによると、中国政府の最終的な目標は、2025年までに国民の7割、9億人を都市に住まわせるというものだから、まさに大移転だ。だが「大移転」という言葉が記事に登場する理由はその規模の大きさのゆえだけではない。それがGreat Leap Forwardつまり「大躍進」の現代版と反対派には見えるからである。大躍進政策は1958年に毛沢東が推進した大増産政策だが、結果は数千万人の餓死者を出す失敗に終わった。

中国政府の狙いは「都市化に伴う大規模なインフラ投資」「都市化した住民の所得増・消費増に伴う持続的な経済成長の維持」だが、目論見通りにいく保証はない。

都市化による経済成長拡大の試みは、ブラジルやメキシコでも行われたが、結果としては失業率の拡大と都市の貧困層の拡大に終わった。

中国の農民が都市移住に反対する理由は、彼らの土地が不当に安い対価で収容されることだけではない。就業やライフスタイルに対する不安が大きいのだ。たとえ都市に移住した当面の雇用は確保されるにせよ、50歳、60歳になっても雇用される保証はない。また長年農業に従事してきた人たちにとって、やることのない都市でどのような生活を送るのか?ということも大きな不安材料だ。

教育レベルが低く専門的職業経験がない農村からの居住者が、職を失い貧困層に転落するリスクは大きい。

中国の都市化政策は、農村の自然環境・伝統的文化の破壊と都市における貧困層の拡大を招くリスク大であり、そのそのメリットを受けることができるのは、既に経済的基盤を確立している都市住民の一部にとどまるのではないだろうか?

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発表されなかったことが知りたい米中首脳会議

2013年06月09日 | 国際・政治

先週金曜日(6月7日)から土曜日にかけて、米国カリフォルニアでオバマ大統領と習近平国家主席の首脳会談が行われた。

両首脳は、核武装をした北朝鮮、サイバースパイ問題、地球温暖化、自由貿易、人権問題を含む諸問題について話し合った。会談後習近平主席は「大国関係の新しいモデル」ということを強調したが、オバマ大統領は「長い時間をかけて討論を重ね、具体化しなければならない多くの課題がある」と慎重な姿勢を示した。

日本人として特に気になる問題は、尖閣諸島問題についてどのようなことが話されたか?ということだ。NHK(ネット版)は「オバマ大統領は習近平主席に日中両国は外交手段を通じて問題解決を図り、緊張を高めないことを要請した」と報じている(ドニロン大統領補佐官の談話)。

一方ニューヨーク・タイムズはLittle was said publicly about the range of other issues that have confronted the two coutries, inclueding a raft of maritime territorial disputes between China and Japan, Vietnam and the Philippines・・・(中国と日本、ベトナム、フィリッピンの間の領土紛争を含むその他の問題については、ほとんど公的な発表はなかった)と述べている。

中国のパートナーという立場とアジアの同盟国の防波堤という立場を持つ米国にとってこれは中々微妙な問題であり、討論内容は公表されなかったという見方が正しいだろう。我々が知りたいことは「オバマ大統領が領土問題の平和的解決を求めた」ということより、それに対して習近平主席がどう答えたか?ということなのだが、その答は公表されていない。

だが、少し前に英国の国際戦略研究所がシンガポールで行った会議で人民解放軍の戚建国副総参謀長が鄧小平の「尖閣問題は次世代の解決に期待して棚上げするべきだ」という持論を繰り返したと報じられているから、習近平主席が同様の主張を行った可能性は高い。推測の範囲だが。

サイバースパイ問題など平行線をたどったと報じられる問題もあるが、具体的に成果が出てきたのは、中国が北朝鮮をおとなしくさせたことだ。北朝鮮は今日にも6年ぶりに韓国と閣僚レベルの会談を持つ予定だ。

国家主席就任早々に党軍事委員会主席を兼務して、軍権も掌握した習近平主席の実力が示された案件と考えて良いだろう。それだけに仮に習近平主席が「尖閣問題は棚上げ」と主張した時にオバマ大統領がどう答えたかは知りたいところである。

政治も外交も生き物だ。少し前までは中国はTPPは米国による中国封じ込め施策だ、と批判していたが最近は中国の経済改革に有効な手段ではないか?という意見も中国内ででていると聞く。

発表されたことより発表されなかったことの方が気になる米中首脳会談だった。

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