洗濯物に水垢のような汚れがつくようになった。
「あーあ、洗濯槽を洗わなくちゃ。この前やったばかりなのに」
この前といっても、10月か11月だった気がする。3カ月に1回は掃除しなくてはいけないのだろう。
うちの洗濯機の場合、「槽洗浄コース」は3時間か11時間のどちらかを選ぶ。11時間だと夕飯までかかるので、いつも3時間にしている。仕事のない日を選び、通常の洗濯に続けて槽洗浄をするのが常だ。
この日も槽洗浄のスイッチを押してから、洗濯物を干し始めた。今年は暖冬。洗濯物が短時間でパリパリに乾く。厚手のパジャマもスウェットも、乾燥機の世話になる必要はない。
「あれ? 靴下が片っぽないや」
すべての洗濯物を吊るしたあとで、足りないものに気がついた。夫の靴下だ。右足分はあるのに、左足分がない。さて、どこにいったのだろう。
「廊下に落としたのかも」
洗濯物がたくさんあると、移動の際にカゴから落下することがある。それかと思ったのに、廊下に靴下はなかった。
「脱衣所かな?」
運悪く、脱衣所で迷子になる衣類もある。洗濯機に入れてもらえず、扉の陰などでひっそりと誰かに見つけてもらえるのを待つのだ。だが、ここにもなかった。
「となると、残るはひとつ……」
一番やってはいけない可能性が残っていた。もしかして、洗浄中の洗濯槽に入っているのかもしれない。
一時停止ボタンを押して洗濯機の扉を開けると……
「あちゃ~、やっぱりここか!」
洗浄剤が溶けて空色になった洗浄水の上に、夫の白い靴下が「プカア」と浮かんでいた。水死体を見たことはないが、こんな感じなのかもしれない。無言で抗議しているような切ない姿が目に痛い。望んでこんな状況になったわけではないと、責められている雰囲気だ。
「ゴメンゴメン、今出してあげるからね」
おそらくは、洗濯槽から洗濯物を出すときに、上部の死角にへばりついていたのだろう。これだけ取り残してしまったようだ。青い洗浄液に手を伸ばし、溺れている夫の靴下を救った。茶色の水垢も一緒についてきたが、潔く水で洗い落とす。そのまま両手でゴシゴシとこすり、かたく絞って物干しに吊るした。証拠隠滅。これで私の悪行がバレることもない。
日本海側はどうか知らないが、カラカラに乾燥した関東地方は昼過ぎに洗濯物が乾く。夫の靴下も、両足分が何事もなかったかのように、畳まれていた。
「いやあ、気持ちいいな。洗濯物もバッチリだ」
夫はすこぶる機嫌がいい。
舞台裏は知らない方がよさそうね。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「あーあ、洗濯槽を洗わなくちゃ。この前やったばかりなのに」
この前といっても、10月か11月だった気がする。3カ月に1回は掃除しなくてはいけないのだろう。
うちの洗濯機の場合、「槽洗浄コース」は3時間か11時間のどちらかを選ぶ。11時間だと夕飯までかかるので、いつも3時間にしている。仕事のない日を選び、通常の洗濯に続けて槽洗浄をするのが常だ。
この日も槽洗浄のスイッチを押してから、洗濯物を干し始めた。今年は暖冬。洗濯物が短時間でパリパリに乾く。厚手のパジャマもスウェットも、乾燥機の世話になる必要はない。
「あれ? 靴下が片っぽないや」
すべての洗濯物を吊るしたあとで、足りないものに気がついた。夫の靴下だ。右足分はあるのに、左足分がない。さて、どこにいったのだろう。
「廊下に落としたのかも」
洗濯物がたくさんあると、移動の際にカゴから落下することがある。それかと思ったのに、廊下に靴下はなかった。
「脱衣所かな?」
運悪く、脱衣所で迷子になる衣類もある。洗濯機に入れてもらえず、扉の陰などでひっそりと誰かに見つけてもらえるのを待つのだ。だが、ここにもなかった。
「となると、残るはひとつ……」
一番やってはいけない可能性が残っていた。もしかして、洗浄中の洗濯槽に入っているのかもしれない。
一時停止ボタンを押して洗濯機の扉を開けると……
「あちゃ~、やっぱりここか!」
洗浄剤が溶けて空色になった洗浄水の上に、夫の白い靴下が「プカア」と浮かんでいた。水死体を見たことはないが、こんな感じなのかもしれない。無言で抗議しているような切ない姿が目に痛い。望んでこんな状況になったわけではないと、責められている雰囲気だ。
「ゴメンゴメン、今出してあげるからね」
おそらくは、洗濯槽から洗濯物を出すときに、上部の死角にへばりついていたのだろう。これだけ取り残してしまったようだ。青い洗浄液に手を伸ばし、溺れている夫の靴下を救った。茶色の水垢も一緒についてきたが、潔く水で洗い落とす。そのまま両手でゴシゴシとこすり、かたく絞って物干しに吊るした。証拠隠滅。これで私の悪行がバレることもない。
日本海側はどうか知らないが、カラカラに乾燥した関東地方は昼過ぎに洗濯物が乾く。夫の靴下も、両足分が何事もなかったかのように、畳まれていた。
「いやあ、気持ちいいな。洗濯物もバッチリだ」
夫はすこぶる機嫌がいい。
舞台裏は知らない方がよさそうね。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
ウチは旦那様が選択担当でよく私の下着を干し忘れることがあります。
洗濯ネットに入れたまま気づかなかった場合も多いです。
布製マスクなどの小さなものは特に。
夫の靴下はネットに入れないので、今回はノーマークでした。
汚い水にさらされて気の毒だったわぁ。
ヤッギーさんの下着も難儀でしたね。
普通の靴下だとズボン下を穿くといつの間にか回転してずれることがあるので五本指は何かにつけ有効かもしれません。
こちらも一月は洗濯物を外干しして乾かしていたようです。
買い物のお使いは毎度ですが今のところ洗濯機には触らせてもらえないです(*^―^*)ゞポリポリ
でも洗濯に出してないこともあるので、
深く追求しませんw
うちは「自動槽洗浄コース」にしていて、
毎回さっと洗ってくれているみたいです。
でもたまには、ちゃんときれいにしないとね。
パリパリに乾いてはいましたがやはり匂いが・・・(笑)再度全て洗い直ししましたよ。
干していてたまに靴下の片方だけが無くなるのは結構あるあるなのでは?風で飛んでしまうとか?
無線LANのトラブルでレスが遅れ、失礼しました。
洗濯をしたことがないのですね。
羨ましい。
夫は4月から肩が痛いと言い始め、洗濯を拒否しています。
まだ治らないのかしら……。
雪国だと洗濯物を外に出せないわけですね。
住む場所が違うと新鮮に感じます。
なるほど、毎日サボらずに洗ってくれるんですね。
それが一番正解です。
うちのにも同じ機能がついているのかしら……。
片方しかなくて困るものの筆頭は、やはり靴下でしょうね。
昔は綿の手袋をして寝ていました。
手荒れがひどかったんです。
使わなくてもすむ今をありがたいと感じます。
洗濯槽に入れっぱなしでも乾くんですね。
臭いさえ気にならなければ(笑)
洗濯物が飛ぶのは、きちんと洗濯ばさみで留めないからでしょうね。
普通はなくならないし、道路に落ちてるなんてこともありません(笑)
今年は強風の日が少ない気がします。
20年前に自転車通勤していたときは、逆風にあおられ、進まなくて困りました。
洗濯物も危険!