これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

指は甘やかしちゃいけないのよ

2024年04月28日 21時29分02秒 | エッセイ
 指輪のサイズは10号である。
 決して細い指ではないが、10代の頃は11号だったので、これでもワンサイズダウンを達成した。しかし、昨年、不摂生から体がむくんで指も太くなり、指輪が「なかなか入らない」事態になってしまった。第一関節は通過するのだが、第二関節が外に張り出したせいで引っかかり、「やだやだ」と抵抗するのだ。
 朝の出勤時、太ってウインナーのようになった指に、無理やり「えいえいっ」と指輪を押し込む作業が続くと、毎日が憂鬱になってくる。また朝から指と格闘しなければいけないのかとため息がもれる。そういうときは、脳がストレスを回避しようと頑張るのかもしれない。ピピッと合理的なアイデアが浮かんできた。
「そうだ、母からもらったプラチナの指輪に替えてみたらどう?」
 私の母は指が太い。手だけ見たら、男性と間違われるであろう。薬指でも13号というサイズなので「もうつけないからあげるわ」なんて言われて指輪を渡されても、ついぞありがたみには結びつかなかった。たまに中指にはめる程度で、引き出しの中で眠り姫と化していたアレを生かすチャンスだよ、と思い出させてもらったようだ。
「どれどれ」と指輪を取り出してみる。



 薬指にはめてみたが、以前と変わらずゆるゆるで、ポケットから手を出した弾みで、指輪が取れてしまったなんてこともあった。なくさないように気を付けなければ。
 でも、締め付けられる窮屈さがなくて、靴を脱いで素足になったときのような解放感が味わえる。指も自由を満喫し、さぞ爽快に違いない。
「このまま放っておいたら、第二関節が元に戻ったりして。様子を見てみよう」
 楽観的に都合よく考え、3カ月ほど放置していたのだが、残念ながら仮説は間違いであった。
 先日、好き勝手に過ごさせた薬指の太さを確認しようと、10号の指輪をはめてみた。
「ううっ、前よりもきつくなっている!」
 体重は1kg減ったというのに、薬指は太っていることが解せない……。



 この状態では、10号の指輪が全部入らないということになる。お気に入りのパールも、並んだダイヤも、はめるのを諦めるなんてことはできず大問題だ。この第二関節を何とかしなくてはと焦った。
 本気で考えると、さらにアイデアが生まれるものらしい。
「右手の親指と人差し指で、問題の関節を挟んでみたら、少しは細くなるかも?」
 まさかねとの思いもあったが、四の五の言わずにやってみた。痛くない程度に挟む指に力を入れると、関節の幅が多少は小さくなる。押さえたまま、指輪を下に動かしてみたら、スルッと第二関節を通過した。
「やった~、入った!」



 指の根元に肉が増え、指輪がめり込んでいるけれど、つけているうちに細くなるであろう。明日からは13号ちゃんには眠ってもらい、10号ちゃんに働いてもらうことにした。
 得られた教訓は、指を甘やかしてはいけないということだった。
 加えて、もっと早く思いつけよコラッ、と自分を叱った。

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コメント (8)
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