これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

2023 ししゃもを贈るバレンタイン

2023年02月19日 20時32分53秒 | エッセイ
 コロナ禍以前はバレンタイン特設会場に行き、目で楽しめるチョコを選ぶことが楽しみだったが、ステイホームが続いたせいか、すっかり面倒になってしまった。
「どうせ夫にやるだけなんだから、スーパーで十分でしょ」
 チョコレートに対する興味や買い物に行く意欲がなくなったのであろう。さっさと済まそうと、1月早々に30個入りの豪華な詰め合わせを購入した。しかし、母の誕生日に送る品が足りず、どうしようかなと困ったとき、この詰め合わせと目が合った。
「また買いに行けばすむよね」と簡単に考え、母あての段ボールにしまい込む。「横流し」とはちょっと違うが、決して褒められた行為ではない。しかも、次の週には同じものを買いに行ったら、すでに売り切れていた。
「あらっ、ちょっと予想外……」
 近隣の主婦たちも「安近短」で済まそうと企んでいたに違いない。代わりの商品を購入したが、これといった特徴がなく、少々不満であった。何かインパクトのあるチョコはないかと探したら、生協のカタログに、串に刺さった「子持ちししゃも」のチョコレートが載っていた。
「これだ!」
 メインは決まった。あとは六花亭のストロベリーチョコやトリュフなど、私の好きなものを加える。本命チョコは、もはや死語かもしれない。家族チョコとして、自分の好みを揃えることしか考えなかった。
「パパ、これどうぞ」
「ありがとう」
 夫はチョコがいくつも入った紙袋を開け、中身を確認していたが、ししゃもで手が止まる。
「なんだこれ」



「ししゃもだ」
「面白いでしょ」
「うん」
 彼はパッケージを見て「あはは」と笑った。
「製造元は香川県、販売元は愛知県か」
 しかし、なぜか食べようはとせず、紙袋に戻してしまった。代わりに、確実に美味しいとわかっているストロベリーチョコを手に取り、開封してバリバリと食べ始める。リンツの丸いチョコにも気づき、結構な速さで封を切った。
「…………」
 ちょっと気に入らない。ししゃもチョコはどうするのか。
「今日はもういいや」
 夫はパジャマを持って風呂場に向かった。ひと風呂浴びたら、テレビを見て寝るつもりだろう。私はししゃもが気になり、彼に代わって封を開けた。
 個包装の中も、ししゃもになっている。



 甘さは控え目。割にさっぱりしたチョコレートであった。
 塩気のあるイメージで後回しにしたのかもしれないが、1個食べられたと知ったら、あわてて頬張るのではないか。
 といっても、賞味期限は今年の11月。
 ゆっくり食べなさいねと言っておこう。

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コメント (6)
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