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学校の「当たり前」をやめた。 - 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 - (工藤 勇一)

2021-07-14 08:12:25 | 本と雑誌

 いつも聞いているpodcastの番組に著者の工藤勇一さん(千代田区立麹町中学校校長)が登場して、ご自身の学校改革のお話をされていたのですが、その内容がとても興味深かったので手に取ってみました。

 まず「はじめに」の章で示された工藤さんの根本的な問題意識。
 工藤さんは、学校教育の「目的」は “「自律」する力を身に付けさせる”ことだと考えています。

(p6より引用) 今、日本の学校は自律を育むことと、真逆のことをしてしまっているように感じます。

 その課題感をもって、工藤さんは数々の改革に取り組みました。教師の立場、教育委員会の立場、校長の立場・・・、さまざまな職責での工藤さんの実績は、どれも独創的でありチャレンジングなものでした。特に、東京の「教育困難校」に赴任した際の経験談は強烈でしたね。

 さて、本書を読み通してみての感想ですが、期待どおり数多くの気づきを得ることができました。それらの中には、大いに首肯できるものもあれば、多面的により深く考えなくてはならないと感じたものもありました。

 たとえば、「心の教育」についての工藤さんの考えです。

(p61より引用) そもそも「心はみんな違っていい」はずです。人の価値観、考え方はみんな違ってよいのです。 私は生徒たちに、人は行動こそが大切だという「行動の教育」を伝えていきたいと思っています。

 「違いを認める」までは多くの人が言っていることですが、「それゆえに『行動こそが大事』」と一歩踏み込んだ指導を志向しています。陽明学の「知行合一」と同根の考え方でしょうか。

 そういった“割り切った考え”の工藤さんですが、同時に「弱者に対する心のケア」を忘れないのが素晴らしいところです。

(p62より引用) 幼稚園や保育園、小学校で心の教育の象徴としてよく言われている、「みんな仲良くしなさい」という言葉があります。この言葉によって、コミュニケーションが苦手な特性を持った子どもたちは苦しい思いをしているのではないでしょうか。 ・・・ 「人は仲良くすることが難しい」ということを伝えていくことの方が大切だと私は考えています。

 もうひとつ、現代社会における未来を切り開く道筋について。

(p195より引用) 現代社会においては、特定分野の技能を磨き続けることが、その人の可能性を広げることにつながるのです。ちょっと変な言い方かもしれませんが、自分の進路は狭めていけばいくほど、その後の進路は広がると思います。

 逆説的な言葉ですが、なるほどと思いますね。

 そして、最後に、本書の中で工藤さんが何度も語っている「目的」の共有の大切さについて。

(p203より引用) 一見、極端に相反する考え方も、その1つか2つ上の目的を確認し合えば、同じ目的を目指していることが分かったりします。それを確認し合うことで冷静に議論ができるようになることもあります。この経験を積み重ねていけば、対立を恐れることなく、協働して何かを決めることができるようになります。 民主主義社会の形成において、学校教育が果たす役割は大きいものがあると考えます。

 「手段の目的化」の弊害があらゆるところで顔を出す今日、「自律的思考」を身に付けた人材をいかに育成できるか、やはり「教育」が社会基盤再生のカギを握っているのは間違いありません。

 

 


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