本書は、2004年、日本経済新聞に「やさしい経済学 歴史に学ぶ」というシリーズで掲載されたものをもとに1冊の本としてまとめあげられたものです。
大不況・金融危機の克服から年金・雇用問題、人口減少や環境問題等々15の経済的諸テーマを、当該分野の専門家がその歴史を辿り概括することにより解説して行きます。
確かに、「歴史という視座」からものごとを俯瞰すると、「新たな気づき」が生れます。
たとえば、「覇権経済国家の出現」に関する説明です。
(p16より引用) 近代最初の覇権国はイスラム教圏をたばねたオスマン帝国に対し、レパントの海戦を勝利に導いて「太陽の沈まぬ国」となったスペインであり、その王はフェリペ二世(1527~98)であった。
一方、ユーラシア大陸の東端では、フェリペ二世と同時代の豊臣秀吉(1537~98)が天下統一の覇者となって明帝国の征服をもくろんでいた。フェリペ二世がイスラムのオスマン帝国に軍事的圧力をかけていたように、秀吉は明帝国に軍事的圧力をかけ、その結果、明は疲弊してしまい、女真族(清帝国を樹立)に滅ぼされた。それは、ヨーロッパと日本が、同時期に対等の力をつけていたことを物語っている。それはまた、覇権経済国の出現が西洋に限られた現象ではなかったことをも、物語っているのである。
同時代の歴史地図を俯瞰することにより、スペインと日本とを対比しその類似性を指摘しています。
16世紀のスペイン、17世紀のオランダ、18世紀のフランス、19世紀のイギリス、20世紀のアメリカ・・・と西洋の覇権国家が並びますが、16世紀には、ユーラシア大陸の東西で覇権経済国家が出現していたのです。
その後、一方の覇権国家、日本は鎖国に入りますが、17世紀の覇権国家であるオランダとは貿易を続けていました。その意味で、日本が西洋の覇権国家オランダを経済面で支えていたとも言えます。当時の日本は金銀銅の産出量は世界トップクラスだったのです。
もうひとつの気づきは「開発支援」についてです。
途上国に対する開発支援は、多くの場合「資本(援助資金)の投入」という形をとります。
しかしながら、いくら援助資金を投入しても成長・発展が起こらないケースが散見されるのです。
資金投入が「発展の呼び水」として機能するためには、ある程度の経済機構が整っている必要があります。多くの途上国には、それさえまだ整備されていないのです。
(p266より引用) 「豊かな国の経済は互いに似通っているが、貧困な国はそれぞれの理由で貧しい」のである。
そうである以上、それぞれの理由をはっきりと見極めたうえで、対象国に適した援助・協力戦略を策定することが、最も重要な課題であるはずだ。いずれにせよ、開発理念とそれを根拠づける経済理論のありかたを検討しておくことこそが、援助・協力の歴史を振り返る作業の最も重要な論点なのである。
「貧困」の理由は様々です。
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