現在の日本は国債残高が巨額化し、財政面での大きな課題となっています。
歴史を遡ると、国債制度は1692年英国で始まったそうです。当時の英国は国債発行により巨額の軍事資金を確保し、いくつもの戦争に勝利することにより大英帝国樹立に踏み出したのです。
国債発行の歴史は、戦争の歴史でもあります。
(p71より引用) 戦争と国債発行が影響しあった典型的な例は、第一次世界大戦(1914~18年)に敗北したドイツである。
・・・戦争中は歳出の八割にも達した軍事費を、主に戦時国債の発行で賄っていたからである。
ドイツ政府はこれらの歳出需要を賄うために貨幣を増発し、ハイパー・インフレーション(超インフレ)が起こった。・・・
このような極端なインフレは、ドイツ国内で巨額の所得・資産の再配分をもたらした。インフレでもっとも得をしたのは、政府であった。貨幣を大量に増発した結果、インフレで実質的に国の借金を棒引きしてしまったのである。しかし、国民の持っていた国債は紙屑同然となってしまった。
同じようなことは、第二次世界大戦直後の日本でも起こりました。
1945年度のハイパー・インフレーションにより国の債務は急速に圧縮されたのです。
(p73より引用) ここで注意をしたいのは、実質的な債務の削減が可能となったのは、ハイパー・インフレーションが統制・封鎖経済の中で生じたからだという点である。自由経済のなかでハイパー・インフレが予想されるようになると、通常であれば、資本逃避や金利上昇など市場の反応が生じる。その場合、利払いが膨張するため、インフレだけで財政破たんを回避することは難しい。インフレが予想されても、規制経済であったから、政府債務を実質的に帳消しにすることができた。
しかし、意図的なインフレで債務を帳消しにするような方法は現在では適用できません。
(p74より引用) 金融自由化や国際化、情報化が進んでいる現在の環境では、短期間に大きな資本逃避が生じる。既発国債を持つ投資家はそれを売却して外国の資産に移し替えようとするだろう。
債務を圧縮する名案は、どうやら過去の歴史に頼るわけにはいかないようです。
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