本書では、まず最初にお馴染みの「ロジカル・シンキング」の要諦を分かりやすく概説したあと、「ラテラル・シンキング」「インテグレーティブ・シンキング」の解説を続けます。
ロジカル・シンキングが垂直的に掘り下げていく思考法であるのに対し、 「ラテラル・シンキング」は「水平思考」ともいわれます。直線的な結論ではなく、斬新さや飛躍したアイディアを生むための思考法です。
その代表的な発想法として著者が挙げているのは3つ。
1.ひらめきを生む発想法「アブダクション」
2.異質なものの共通点を探して結びつける「シネクティクス法」
3.定型化した問題解決のパターンから新たなひらめきを生む「TRIZ(トゥーリーズ)」
その中からひとつ、「アブダクション」というのは、以下のような推論形式をとります。
(p86より引用) 驚くべき事実Cが観察された。
しかし、もし説明仮説Hが真であれば、Cは当然の事柄であろう。
よって、説明仮説Hが真であると考えるべき理由がある。
そして、この「説明仮説H」を検証すればいいのです。いわゆる「仮説検証型」の思考法ですね。
さて、このように、発想力を高めるのがラテラル・シンキングですが、そのためには「創造力」が必要です。とはいえ、全く白地のうえでは「創造力」の発揮はできません。
(p131より引用) 創造力だけで勝負できる場所などどこにも存在しないのであって、地道に積み上げたスキル(基礎)の上に、そのスキルの文脈の範囲内においてのみ花咲くのが価値ある創造性だということです。
直線的なロジカル・シンキングだけでは、矛盾や対立が常在している現実社会の問題解決は困難です。そこに統合思考「インテグレーティブ・シンキング」が必要とされる素地があるのです。
(p141より引用) インテグレーティブ・シンキングのエッセンスは、対立する2つのアイディアを同時に検討する力であり、2つのアイディアのうちの一方をすんなり選んだりはせず、2つの対立するアイディアが持つポイントを同時に受け入れるような、より優れた第3のアイディアを生み出すというものです。
著者は、このクリエイティブ・シンキングの説明にあたって、もうひとつの思考スキームを提示しています。「サバイバル・シンキング」と名づけられたものですが、これは「目的達成のために、取り得るアクションを洗い出し、メリットとデメリットを評価する活動」のことです。
著者によると、インテグレーティブ・シンキングとは、このサバイバル・シンキングを「発展的に否定する」ものだというのです。
(p173より引用) インテグレーティブ・シンキングとは、このサバイバル・シンキングの最終段階で、1つのアクションを選ぶのではなくて、洗い出された複数のアクションを「腹の底」に定着させて、それらの相反するアクションのよさを失わないままに「融合」するような新たな解を生み出そうとする知的ステップのことです。
本書で紹介している3つの思考法ですが、これらを企業活動に当てはめると、
・経営ビジョンの策定には「インテグレーティブ・シンキング」
・経営ビジョン実現のための戦略の策定には「ロジカル・シンキング」
・さらにその戦略を実行する人材を育てる人材ビジョンの策定には、「ロジカル・シンキング」+「ラテラル・シンキング」
が活用されると著者は主張しています。
これもロジカルな整理ですが、私などは単純なので、どんなことを考えるにあたっても、基本は懐の深い「インテグレーティブ・シンキング」だと考えてしまいます。
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