Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.407:Preziで始めるズーミングプレゼンテーション

2011年06月06日 | オープニング
Preziで始めるズーミングプレゼンテーション
筏井哲治著
日経BP社


■■"Prezi"とは何か?
おそらく殆どの人にとって初めて聞く言葉ではないかと思います。一般には
プレゼンテーションツールと説明されるのですが、PowerPointやKeyNoteと
いったプレゼンテーションツールとは根本的に異なっており、ちょっと説明
しにくいソフトです。アプリケーションソフトかというと、それもちょっと
異なっておりまして、正確にはクラウドのサービスなんです。ハイ。

なにはともあれ百聞は一見にしかず。下記のURLに
"Future-Proof Your Education"
というプレゼンのコンテンツがありますので、ご覧下さい。
http://goo.gl/DrmEe

今までのプレゼンツールとは大分異なる事が分かっていただけたと思います。

コガがPreziを初めて知ったのは、昨年の教育工学会全国大会で広島大学の
安武先生が発表で使っているのを観た時でした。詳細はBlogのバックナン
バー「vol.382:日本教育工学会 第26回全国大会 参加記【その3】」をご
覧下さい。

安武先生の衝撃的なプレゼンを観て以来、Preziに対する興味を持ってはい
たものの、忙しさを理由に、慣れたPowerPointを使い続ける日々が続いてお
りました。そんなある日、これまた安武先生がTwitterで本書のことを紹介
していたのを発見。これは神の啓示に違いないと思い即購入。GWに読みつつ
Preziをいじっておりました。

■■再びPreziとは何か?
「スライド」を何枚も作り、それを紙芝居的に紹介していくのが従来のプレ
ゼンツールのイメージだとすると、Preziは言いたい事を「模造紙」1枚に
まとめるというのが一番近いイメージかもしれません。しかも、Preziの模
造紙は大きさの概念がないため「拡大←→縮小」によりもの凄く小さな文字
や図を追加することが可能です。

しかし、そんな大きさの異なる情報が1枚の模造紙の中に混在していては、
プレゼンテーションの際に困ってしまいますよね。そこで活躍するのが、
Prezi最大の特徴である「自動ズーミング」と「パスの設定」です。

Preziではプレゼンテーションの際、説明したい部分だけをズームアップし
たり、ズームアップの順番を事前に設定できたりするのです。しかも極めて
簡単に設定できます。自分がズームアップしたい範囲をフレームで囲み、数
カ所のフレームをどの順番で見せるかを決めます(パスの設定)。すると後
はソフトが自動的に再生してくれるのです。パスにそって画面が移動し、目
的のフレームでズームアップしていく動作は、理屈抜きで「カッコイイ」の
です。これらの機能を活用することでプレゼンテーションの「全体像」と
「詳細」を自由に行き来することが可能となり、プレゼンがより分かりやす
くなります。

さらに凄いのは、このソフトがクラウドのサービスである点です。できあが
ったプレゼンは通常PreziのWebサイトに保存し、それを仲間と共有したり、
あるいは人のプレゼンを複製して自分のプレゼンに改造して活用するという
使い方ができます。知の共有や創造が促進されるというメリットがあるのみ
ならず、一々パワポの資料を印刷して配布しなくても、「本日の資料はWeb
サイトををご覧下さい」と言うことで紙資源の節約にもなるというスグレモ
ノなのです。ではインターネットの使えない環境ではプレゼンができないの
かと思うかもしれませんがご安心ください。オフラインで発表するためのダ
ウンロード機能もついています。

■■本書の内容
本書はそんなPreziの魅力や使い方をまとめた日本で最初の本です(おそら
く)。全200ページのうち、最初の70ページでPreziの基本的な使い方がまと
めてあります。これを読めば「使い方」はほぼマスターできます。というの
もこのソフトはあまり凝った事ができないのです。図の作成やアニメーショ
ンの設定はできないし、日本語のプレゼンにおいてはフォントや文字色の変
更すらできないのです。だから操作の説明は70ページもあれば十分という訳
です。

実はWeb上にも「Prezi 日本語マニュアル」というのが公開されており、こ
ちらを学習すれば、ほぼ使えるようになります(eラーニングですね)。
http://dev.screw-axis.com/doc/prezi/

では、操作方法さえマスターすれば、素晴らしいプレゼンができるのかとい
うと、そうではありません。Preziは「スライド」という枠組から解き放た
れているため自由度がとても高い表現ツールです。そのためきちんとしたプ
レゼンの全体像や構造を考えないとプレゼンとして成立しないのです。

そうした点を補うため、本書の残りのページでは、アイデア発想の方法、プ
レゼン内容のブラッシュアップ、語り手としてのスキルアップといった事に
ついて詳述されています。特にアイデアの発想に関してはPreziを活用した
ブレイン・ストーミングの方法についての説明がありまして、これはちょっ
と使えそうです。eラーニングの初期の頃、CSCL(computer supported coll
aorative learning)というコンピュータを利用した共同学習が流行したの
ですが、ブレストツールとしてのPreziの使い方はまさにCSCL的です。

■■世界観の表現
本書の終章で著者は

「Preziの神髄はレイアウトデザインによって世界観を表現し、聞き手に
『気づき』を与えることにあります。これこそがPowerPointではどうしても
表現できなかったものです」

と述べています。
前述の"Future-Proof Your Education"で言えば、
The World of Tommorow(ママ)と書いてある絵全体が世界観の表現になっ
ているのでしょう。こうした全体像をきちんと考慮しなくても、なんとなく
プレゼン資料が完成してしまうのが、従来のスライド式プレゼンソフトの良
い点でもあり致命的な欠点でもありました。Preziを使うと今までの「ごま
かし」は効かなくなります、でも構造のしっかりしたプレゼンができるよう
になる筈です。さてあなたは、どちらの道に進みますか?

コガは当面、パワポとPreziの併用で進んでいきたいと思います。
(文責:コガ)


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