Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.265:外食・非常識経営論

2008年03月14日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊
外食・非常識経営論―今の売上で、2倍の利益を上げる方法
大林 豁史
ダイヤモンド社

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かねてより私1.0が注目していた日本レストランシステムズという企業がありました。現在は、コーヒーチェーンで有名なドトールと合併して、ドトール・日レスホールディングスという社名になっている会社です。

では、なぜ私が興味を持っていたか。それは、ひとえに常識にとらわれない(というより真逆の)戦略をとっていながら経常利益率20%越えという業界では優良な数値をたたき出しているところにあります。

例えば、地価の安い郊外ではなく、高くて有名な田園調布にセントラルキッチンをかまえていることや、仕入れをはじめ極限まで内製化をはかるところや、宣伝を行わず、クーポンなどを用いた割引も原則行わないという姿勢などは一見、現在の外食産業のセオリーに反しているように見えます。

しかしながら、本書を読むと、そのどれをとっても実に理にかなっており、常識に基づいた経営ではなく、頭を使って考えてきた経営であることがわかります。

人材育成に関しても、常識には外れるかもしれないけれど合理的なことを実施しています。この会社では、経験則的に教育は幅広くやっても無駄だということがわかっているので、これぞと思ったコア人材に絞って育成しているようです。はじめは、コアに選ばれなかった人のモチベーションが下がるではないか、とふと思ったのですが、この企業は離職率が低いことからも類推できるように、働く人のモチベーションも高そうです。

なるほどそれでは、どのような理由があるのだろうかと、その後自分なりに考えて、以下のような2つの仮説をたてました。

その1:その店の味を伝えられるような舌を持つのは芸術同様の才能なので、見込みのない人を教育することは意味がなく、教育される側にとっても不幸でもある。多くの人が芸術家になれないのと同様、この会社でコア人材になれないのは仕方がないと多くの人が思っている。

その2:コアから外れた人にとって重要なのは、曖昧な評価をされたまま、いつまでも自分もコアになる可能性があるという期待を持っていられることよりも、明確で公正な人事制度システムのほうであるから。

そういう目で本書を読んでいくと、学歴・国政、性別の差別を一切しないとか、年功序列にはしないとか、入ったばかりの人に長時間労働をさせないとか、実質定年なしとか、会長自らが「長く働いてもらうこと」がポリシーだというように非常に理想的な人事システムのように見えます。

ノルマばかり科せられて疲弊したり、不正を働いたりする店長も少なくない業界構造のなか、店長に売上責任を持たせない(本部が規定した標準値を守っているのに成果があがらないのは業態か立地が悪い、つまり本部の責任だと考える)など、合理的な判断ができる上層の存在は全体のモチベーションに大きな影響を与えそうです。

以上のようなことから、仮説その1に関しては、よくわかりませんが、仮設そののほうは何となくいえなくもないかもしれないと思いました。

もし、仮説2の立場をとるのであれば、研修に潤沢なお金も時間も投入できない企業では、研修よりもむしろ制度・しくみのほうに注意を払ってみる、というのも一考かもしれません。

ちなみに、この日レスが展開しているのは、洋麺屋五右衛門・卵と私・さんるーむ・地鶏やなどなどがあります。意外と店名は見たことある、あるいは利用したことがあるという方も多いのではないでしょうか。(文責:松本1.0)

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