昼過ぎ、彼を乗せた黒のリムジンが
長くクラクションを鳴らして発車した。
顔を上げて、心の中で最後の挨拶をする。
目が自然とリムジンを追いかける。
すると側で、
「あっ、あれはあいつの車だね」
と声がした。
仕事でお世話になった教授の声だった。
みんな一斉に車を見た。
赤いレガシーが、
彼を乗せたリムジンの後をついて走って行った。
あの日、、、
同じ会議に出席した後、
駐車場まで数人を送ってくれた彼は、
「ここまできたら、帰り道が分からなくなった」
そんなふうに私に助けを求めた。
「仕方ないですね~、それじゃ途中まで誘導するから
私の車の後をついて来てくださいね」
私はそう言って、彼のレガシーを誘導した。
分かりそうな道に出ると、途中で彼を先に行かせた。
彼は窓を開け右腕を出して手を振ると
さっとスピードを上げて行ってしまった。
「ありがとう」と彼の手が言っていた。
後になって、
「どうしてあのまま行かせてしまったんだろう」
と随分後悔した。
「せっかく話しかけてくれたんだから、
もっと話をしたら良かったのに」
・・・機会はまだあると思っていた。
教授が瞬きをして目頭を抑えるのが見えた。
「本当に、寂しくなります」
そう言ったつもりなのに、言葉が詰まった。
空は雨が降りそうな鉛色をしていた。
駐車場で、自分の車を見て、不意に涙が出た。
彼の車と同じ赤い色だった。
車に乗ってしまうと、
次々といろいろな事を思い出した。
手を振った彼の
「ありがとう」の後に、きっと
「またね」がついていたのじゃなかったのかと
その時になって思った。
ずっと憧れていた。
背中ばかりを追いかけていた。
そのうち、年だけは追い越す時が来る。
その時、彼のように笑っていたいと思う。
いつかまた、会いましょう。
長くクラクションを鳴らして発車した。
顔を上げて、心の中で最後の挨拶をする。
目が自然とリムジンを追いかける。
すると側で、
「あっ、あれはあいつの車だね」
と声がした。
仕事でお世話になった教授の声だった。
みんな一斉に車を見た。
赤いレガシーが、
彼を乗せたリムジンの後をついて走って行った。
あの日、、、
同じ会議に出席した後、
駐車場まで数人を送ってくれた彼は、
「ここまできたら、帰り道が分からなくなった」
そんなふうに私に助けを求めた。
「仕方ないですね~、それじゃ途中まで誘導するから
私の車の後をついて来てくださいね」
私はそう言って、彼のレガシーを誘導した。
分かりそうな道に出ると、途中で彼を先に行かせた。
彼は窓を開け右腕を出して手を振ると
さっとスピードを上げて行ってしまった。
「ありがとう」と彼の手が言っていた。
後になって、
「どうしてあのまま行かせてしまったんだろう」
と随分後悔した。
「せっかく話しかけてくれたんだから、
もっと話をしたら良かったのに」
・・・機会はまだあると思っていた。
教授が瞬きをして目頭を抑えるのが見えた。
「本当に、寂しくなります」
そう言ったつもりなのに、言葉が詰まった。
空は雨が降りそうな鉛色をしていた。
駐車場で、自分の車を見て、不意に涙が出た。
彼の車と同じ赤い色だった。
車に乗ってしまうと、
次々といろいろな事を思い出した。
手を振った彼の
「ありがとう」の後に、きっと
「またね」がついていたのじゃなかったのかと
その時になって思った。
ずっと憧れていた。
背中ばかりを追いかけていた。
そのうち、年だけは追い越す時が来る。
その時、彼のように笑っていたいと思う。
いつかまた、会いましょう。