Goo・ちょき・パーで、なに作ろう!

定年退職してしまいましたが、再任用でまだまだ老後の蓄えをしなくてはなりません。それでも悔いのない人生にしたいと思います。

故:石川政雄さんに捧げる!

2017年12月26日 21時45分09秒 | Weblog

 2017年12月20日石川政雄さんが、亡くなられたよ!
その悲報はJAかもとのH審査役(同級生)から携帯電話に入って来ました。
 つい先月の農業大学校の黒石原祭でも、研修生OBのテントで元気よく「いらっしゃませ~!今年の米はとってもおいしく出来ましたよ!」
と、客寄せの呼び込みをされていたのに?
早すぎる死、(享年65歳)信じられませんでした。

 22日の葬儀には参列しました。
告別式の読経の中で、人の命の儚さ・無常・今後のアスパラガス等残された経営の事も考えました。
 いろいろな思い出が蘇って来て「たくさんの研修生たちがお世話になった、石川さんの足跡・思い出をブログに載せて、時々偲ぶためにも残そう。」と思いました。

 ただ、私も職場が変わり、写真データも自分のデジカメと自宅PC等手元には少ししか無く、講義資料は全くありませんので、ほんの一部の紹介になりましたが、関わった人は少しでも思い出してもらいたいと思います。

 石川さんとの出会いは、私が農業大学校勤務を始めた、平成25年4月です。
 菊鹿町は同郷でもあり、気さくな性格に馬が合いました。
それから5年間、ずっと講義や現地視察、農大の黒石原祭出店でもお世話になっていました。
 繊維業界の会社の倒産を機に、平成19年度の農業大学校・新規就農研修生として入学し、他の研修生と同じく、初めての実践的な農業の勉強を始めました。
 55歳での農業参入。それから現在までの経営改善の道のりを、リアルなリアクション入りでしゃべってもらっていました。




 これは先輩の体験を参考に、これからの参入に活かしてもらおうという「経営者講義」の風景です。
 机上の白い糸の巻物が、パンティ-ストッキングの繊維です。
毎回のように、50cmくらいに切ったのを、教室の端から端まで引っ張らせて、
「戦後、女性とパンティ-ストッキングは強くなった!こんなに伸びるんですよ!
しかしながら、競争の激しい分野です。会社が倒産しました。社員従業員の退職・再就職の世話等の後始末を任されて、私が最後に辞めました。

さて、地元菊鹿町に帰り、何を作って暮らせば良いものかと農協のいろいろな部会を観察しました。その中でアスパラ部会員が一番良い車に乗り、総会でもツッカケ履いて来る人は居らず、TPOもピシッと出来る農家が多かった。だから儲かっていると思い、アスパラガスを作ることにした。」
 石川さんは、民間企業でいろいろな渉外担当もした経験から、対人の観察力が鋭い人でした。
 そして、開口一番。アントニオ猪木みたいに「こんにちわ!元気ですか!」と、声がデカい!
 その調子で、講演は続きました。
 アスパラガス栽培の経緯に限らず、麦の原種栽培・水稲、栗栽培・農村集落の付き合い方等々多岐にわたりました。
 まさに、「口角泡を飛ばす!」勢いで、一人の居眠り研修生も出さない人でした。
 3時間の講義で、あわや休憩することも無くしゃべり続けられるので、「石川先生!休憩を!」と腕時計を指して催促するのが、僕の役目でした。




 初夏になると、現地視察研修です。
山鹿市菊鹿町にあるJAかもとのアスパラガス選果場を見て、石川さんのアスパラガス視察をルートに組んでいました。
 農協のH審査役から、毎回アスパラガス栽培の概要を説明してもらっていました。




 アスパラ農家は、収穫したものを既定の長さ・大きさに選別して、コンテナに立てて選果場に持ち込みます。



 従業員の方々は、農家ごとのアスパラを、1本1本動くベルトに並べると、光センサー・カメラ・重量選別機へと流れて行きます。



 各種センサー等を通過すると、等級・階級別に分別され、1束が自動的に同じ重さになるような組み合わせを経て、テープ結束機で1束にされます。



 既定の量たまると、発泡スチロールの箱に詰められ。



 冷蔵庫に詰められ、配送トラックが来るまで低温で保冷されます。



そして大都市圏の市場に向けてトラックで配送されます。



選果場の後は移動して、いよいよ石川さんのアスパラガス圃場です。



こんな感じで、ハウス前で「先日の講義で話した実際を、私の圃場でしゃべります!」で始まります。



左の青いネットは、防風ネットで台風被害に備えてあります。



すぐ傍に生活道路はあるのですが、水田内に軽トラックが入れる、芝生の通路が確保されています。



いよいよ、ハウス内に招き入れられ、アスパラガスの栽培の話になるかと思いきや、周りの地形や条件の説明。
「見てください。周りは水田ばかり地下水位が高いんです。ここは、基盤整備が済んでいますが、なんと私のアスパラガスの水田はその前は、生活道路と水路が、向こうからこっちに斜めに通っていて、その上に土を盛って四角に整備してあるから、昔の道路の上はとても固いし、水路跡にはやっぱり水が集まって来るんです。だから圃場条件っていうものは、上っ面を見ただけでは分からないこともあるんです。皆さんも農地を借りたいと土地を探すときには、基盤整備された所であろうが、いろいろ周りの人に聞いてみることです。ともかく、水を制御出来ないと良い作物は出来ません!」



次に紹介されるのが、潅水や液肥に使う用水の話です。
「皆さん!水タンクはどうしてらっしゃいますか?研修生だからマイ・タンクは未だ持っていない。でも聞いてください。長く使っているとタンクの内側にアオコが発生します。そして太陽にさらされると、脆くなり割れやすくなります。また、タンクの底に砂粒を沈殿させ、その上澄みを使うから綺麗です。光が当たらないように私は地下水槽にして、蓋にはさらに木の蓋をして光が入らないのと、人に踏み割られない様にしています。」
一同「ウオーッ!」



「この辺りの側溝の水は、山に近いし綺麗なのですが、田植え時期には濁り水です。砂抜きのフィルター(イスラエル製?)は必ず必要です。灌水チューブが砂粒で詰まったらどうしよもありません。」



次は、アスパラガスの話しか?
まだ、ハウス内に入らない。
「皆さん!農家にとっては土は大事ですよね。畝の作土も大事ですが、ハウスの間の溝も元は水田の表土・作土です。雨が降るとハウスの屋根から落ちて集まり、雨樋の様に一挙に激流となります。そうすると土は圃場から排水溝へ、さらに川に流れ出し大事な表土が知らぬ間にだんだんと減っていくんです。」



「だから、私はこの様に、シルバーマルチでパイプハウスの地ぎわから全面を覆うようにしました。効果
は4つあります。1:土が流出(エロージョン)しない。2:雑草が生えない。3:雑草が生えないと害虫が飛んでこない(少ない)。4:溝からの水分侵入が入らないので、潅水パイプによる水管理がしやすい。」一同「オーッ!」



いよいよアスパラの話しかと思いきや、ハウスの向こう側に案内され、まだハウス内に入らない。
「皆さん!農大では、草刈りを良くする(させられる)でしょ!でも、みんなと一緒にするから大した面積じゃない。ところが、就農すると一人や家族だけですることになります。しかも大変な面積を、年何回もしなきゃならないのです。私は、少しでも軽減できる様に、芝生を敷き詰めました。3年すれば覆ってしまい、本当に楽になります。見てください!綺麗でしょう!・・・皆さんが来られるので、昨日刈ったばかりですが!(笑)




「効果は4つあります。1:害虫が住む雑草が生えない。2:雑草が生えないと害虫が飛んでこない(少ない)。3:草刈り(芝刈り)が楽、早く終わる、省力。4:燃料代が抑えられる。」一同「ホオーッ!」
「この土手は4m位あります。滑りこけたら危ないですよ。自分の足を切ったり、側溝のコンクリートに頭打って死にますよ。1回の刈り払い機の振りでは無理ですよね。だから中断に小道を作りました。」



いよいよ、ハウスの入り口に近づきました。
これはマリーゴールド・フレンチ(ボナサンザオレンジ)です。
単なる景観植物ではなく、線虫侵入忌避効果や、土着天敵のヒメハナカメムシ類・アカメガシワクダアザミウマのバンカー植物(天敵の養成処)として、害虫のミナミキイロアザミウマを減らすために植えられています。IPM(総合的病害虫管理)に早くも取り組まれていたのです。



「ここは、さっきも言いましたが、一部は湿田で、どうしてもアスパラの生育が悪かったんです。そこで、地元の(農業改良普及所)鹿本普及・振興課に相談して、排水対策に暗渠を入れました。効果はありました。でも、地下水位がどこまで来ているのか、この目で見たかったのです。それがこの手作り地下水位計です。ホームセンターからフロートとなる油差しと塩ビ管、プラスチック棒を買いました。それでこんなのを作ります。」



「このたくさんの穴を開けた塩ビ管を1mの垂直な穴を掘り埋めます。」



「そして、塩ビ管にフロート部分を差し込みます。
10cmごとの色分けメジャーですから、今、25cm出ているということは、100-25cm=75cm
今、地下75cm面に地下水位があると読めます。
これがたくさん立ち上がってくると、地下水位が高まり、根腐れの原因になりますので、暗渠排水や明渠排水、雨水侵入防止に努めます。」




それから、やっとハウス内に入っての栽培管理の話になります。



 病気の発生はほとんどなく、うまく行っているようです。
「私が留守にしていると、JAの指導員が、メモを置いて行きます。先日のメモには、(薄緑の脇芽を出来るだけ、摘み取ってください)と書いてありました。
 この10cm位の薄緑のが脇芽です。今、ずっと脇芽取りをしています。大変でしょ!こんだけあるんですから。教科書に書いてないような作業がいろいろあるんですよ!




 とうとう出発予定の11:30になってしまいました。
が、次は納屋に移動しての講義の始まりです。



「トレサビリティー・栽培管理記録の元になるカレンダー記入です。
初出荷2月10日・立茎(リッケイ)の時期4月7日とか、何月何日にどんな作業をしたかのメモです。
記録原簿であり、これが即メモ用紙になり、作業日誌や栽培履歴の原本になります。忘れないように、すぐに書き込むことが大事です。この集荷伝票を見てください。2月10日が初出荷で、わずか〇kg少ないですね・・ところが1日おきに収穫は続き・・この日はウン万円・・・次の日はウン万円・・・現在のトータルはウン百ウン十ウン万円・・・こんな集計が楽しいですよね!」
と、出荷伝票の束を公開しながら、リアルな収益を上げる喜びを表現してくれました。




 毎年、一生懸命に話されるので、毎回時間オーバーになり午後の視察に影響が出ていましたので、3年目くらいからはもう、昼飯を遅らせ、午後の視察箇所も遅らすことにしました。



 研修生たちは、石川さんのキャラクターに引き込まれ一所懸命に話しを聴いていました。
 石川さんのこの様な取り組みは、地域の評価を受け、
・JAかもとの新規就農者激励会での講演・JAの理事への就任・平成23年度熊本県農業コンクールの新人王部門で優良賞を受賞されるなど、農大で社会人研修制度が始まって(前年に山都町の西山氏受賞)に次ぐ快挙でした。
 そして近年は、JAかもとアスパラ部会での10a当たり収量3トンの成績を修められられるほどの栽培技術でした。



指導熱心な石川さんを頼りに、視察研修後も個人的に訪ね、アスパラガス経営を始めた研修生がたくさんいました。

石川さん、たいへんお世話になりました。
石川さんと同じ立場で、農業を始めようとする者にとって、たいへんな励みやヒントをいただきました。
そして農村への参入者の心構えと、あるべき姿勢を教えてくれました。

まだまだ伝えきれないエピソードがたくさんありますが・・・
これをまとめながらも、すでにこの世にいらっしゃらないのが、今でも信じられません。

どうぞ、これからも新規就農の彼らを見守ってください。

合掌。



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