昨日は、お嫁ちゃんと孫が来て、皆で相生山へ花見に出かけました。
折悪しく小雨に降られました。(笑)
高木の山桜や三つ葉ツツジが、森のあちこちに咲いてきれいでした。
◇◇◇ 最近読んだ本 ◇◇◇
角田光代 著 『トリップ』 光文社文庫
駆け落ちに失敗した女子高生と離婚を考えている主婦が、並んで川原に仰向けになり、気が狂ったふりをして何か大声で叫んでいます。それを橋の上から、クスリで酩酊気味の主婦が幼子の手をひいて眺めています。それを眺めているのが、少しやさぐれた主夫で、昼食は肉屋でコロッケを買って済ませます。肉屋の主婦は、結婚生活に倦んでいます。
なんとなんと、こんなネガティブな短編小説はなんだ
場所は東京近郊の小さな町。私鉄の駅前にロータリーがあってその周りに商店街があります。肉屋があって、酒屋があって、花屋、古本屋、喫茶店が物語の舞台になります。橋を渡った向うに一戸建ての住宅地がある。住みやすそうな町ですなぁ。都心まで一時間半ぐらいの距離だそうです。
そこで暮らす人たちの、小さな不幸や不満、そして小さな幸せ、そんなのが、十編の連作短編小説に描かれていました。
LSDに依存してしまっている主婦は、高校生の時に父親を亡くしたらしい。病院に見舞いに行った時の記憶が殆どなく、病院の食堂の無味無色の印象だけがトラウマのように残っています。いつもクスリで酩酊ふらふらしている様だが、この人にも救いがあるようです。愛する息子と理解ある夫を示唆していました。
少年の頃、橋に向うの墓地に住むホームレスの浮浪者を飼っていた男の話。浮浪者に餌を運んでいたが、あるときそれを止めてしまった。その後、浮浪者がどうなったのか、大人になっても気にかかる。
大学のときの同級生を追いかけるストーカーの話。どうやらこれは追いかけられる女性の話のようだった。大学卒業したから結婚までの生活、今の生活の小さな不満。
ひがみ全開の結婚できない三十女。不倫相手が離婚されてしまったので、結婚を余儀なくされる男の話。大好きな祖母の病弱から逃避して、出かけた海外の旅先で盗難に遭う女。
ずいぶん暗くって嫌な物語ばかりだと思うけど、これって、普通に隣近所にある話ではなかろうか。何故か笑える。普通の人生は、こんなものだと!
クスリに病んだ主婦は思います。
”何一つ選べずにここにきたのではなく、選んできたのだと、それがよいものでもそうでないものでもそれを選んできたのだと、いつか言えるときがくるんだろうか・・”
そう、私もこの歳になるまで、転機となる事が幾度も有りました。違う道を選んでいたら、如何だっただろうか? 結局は、今その事態に戻っても、違う道は選ばないし選べない。私の生きて来た道は間違いでなかったと思います。
角田さんの小説を読むのは、これで二作目です。以前に読んだのは『ツリーハウス』
なんだか、面白い。また角田さんの小説を読んでみたいと思います。
この小説のお気に入り度:★★★☆☆
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