いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

紫禁城 入江曜子著

2009年10月05日 | その他
現在故宮博物院となっている北京の紫禁城は、明朝三代永楽帝の造営だそうですが、現在の形はそのほとんどが清朝の時代とのこと。この本は1644年に始まる清朝の歴史に沿って解説されています。

先日加藤徹氏の「西太后」を読んだ直後でしたので、西太后やその周辺の時代について入江曜子氏のやや異なる視点も興味深いものでした。

清王朝の栄枯盛衰、歴代の皇帝と共にその多くは薄幸ともいえる皇后や側室たち・・・また少数派の満州民族が漢民族にどう君臨したか等々・・・。

また、ほんのわずかですが、終章の芥川と魯迅についての記述が印象的です。

日本の天皇に関しては古くから信じるかどうかは別として万世一系といわれてきましたが中国では「天使は天の命によって天子となるので、天子に徳がなくなれば天の命は他の人に下るー天命が革まり天子の姓が易(か)わる」とされ、王朝の交代が起こってきました。

紫禁城の入口とも言える天安門は天子である皇帝が天の受託をうけたことを象徴する場・・・「天と地をつなぐ場」とされてきました。

中国が清から中華民国へそして中華人民共和国へ移り変わり、紫禁城すなわち故宮は博物館となりました。


1989年6月4日、民主化を求めるデモ隊と軍や警察とが衝突して多数の死傷者を出した天安門事件は記憶に新しいところですが、やがてまた天安門広場は北京有数の観光名所として、盛大な式典の場として広く世界に紹介されています。

もう十年以上以前のことですが初めて故宮へ行ったとき、その厖大さに驚きました。その佇まいはなんともいえない威厳を感じます。


2009年10月1日、中国は第60回目の“国慶節”を迎えました。言い代えれば中華人民共和国が還暦を迎えたってことでしょうか。(もっとも正確には10月1日は中華人民共和国中央人民政府が成立した日で実際の中華人民共和国の成立した日は1949年9月21日のようですが・・・。)

日本でも中国の盛大な国慶節の様子が報道されていました。このとき久しぶりにテレビでニュース番組などをじっくり見た私はかつて見た天安門広場の光景と映画ラストエンペラーなどで見た皇帝就任の式典の様子を思い浮かべていました。日本の報道陣は皆ここからマイクを持ってあれこれ様子を伝えていましたから。

北京オリンピック開催も成功し、もうすぐGDPで日本を抜き米国に次ぐ世界第2位の経済大国となることがほぼ確実な中国・・・・。この本を読み終わったばかりの私は「ああそうか!今は胡錦濤の時代なんだ!!」 そんな想いが浮かんできました。

   天安門は天子である皇帝が天の受託をうけたことを象徴する場
                   ・・・天と地をつなぐ場

もちろん、現在は「天の受託って何?」という感じの世の中になったのかもしれません。中国も日本も政治経済その他いろいろ実にギクシャクしたものをたくさん抱えている世の中でもありますから・・。でも、ふっと雑念を振り払って、向き合ってみると人の心を動かす建物と歴史の威厳は健在そうです。