いとゆうの読書日記

本の感想を中心に、日々の雑感、その他をつづります。

無伴奏 小池真理子著

2009年07月17日 | 小説
先日、関東甲信越地方は梅雨明けが発表されました。ここ数日の猛暑にこれから始まる夏本番の暑さが思いやられるところでしたが、今朝はどんよりした梅雨空に逆戻り。何だか少しほっとしたような気分です。

さて、今日の本は小池真理子氏の「無伴奏」です。ずいぶん以前から小池さんの本は友人のひとりから薦められていたのですが、ミステリー小説が多いと聞いていたので迷っていました。ですから今までは雑誌のエッセイなどを読んだだけでした。

これはそういう意味ではちょっと雰囲気が違いますね。確かにミステリーっぽいところもありますが、青春小説という方が合っています。

時代設定からすると主人公は私より3年先輩ってことになりますが、ほぼ同世代のちょっとだけ先輩の女性が体験した学園紛争やデモなどの描写が懐かしくもあり、私の中の記憶をくすぐられるような感覚でもありました。

この本は先日偶然立ち寄った書店の集英社文庫のナツイチシリーズの中に並べられていました。友人お薦めの小説とは違ったのですが一応集英社のお薦めってことなら「ハズレではないかな」くらいの気持ちでページも開かずに裏表紙だけ見てすぐレジに向かいました。

蛇足ですが、ナツイチシリーズにはミツバチかなんかのストラップがおまけについてきます。ボーっとしている私に書店の人が「お客さ~ん!そこのかごの中からひとつもっていってください。」と言うのでひとつとってバックに入れました。でもそのときは何だかよくわからず、後で家に戻ってから飴かと思って袋を開けたらストラップだと認識した次第でしたが・・・。

さて、この小説は1969年から70年の仙台が舞台となっていますが、仙台は私自身にとっても思い出に残っている都市です。

著者の小池さんが仙台に滞在していた時から5年後の1975年の夏、当時大学生だった私は、まさにこの小説の主人公響子みたいな・・・一緒にいるといつも奇抜なことに遭遇するように感じられてしまう同じ大学の友人と一緒に東北地方を旅していました。

その時、立ち寄った場所のひとつが仙台だったのです。学生の貧乏旅行でしたから、仙台市内はひたすらよく歩きました。

その時滞在したユースホステルのおじさんからの早朝散歩の誘いで、同じ場所に滞在中だった数名の学生達と共に市内の主な観光地の他に東北大学のキャンパスの中を歩いて廻りました。この本を読み進めるうちに「ああ、ここも数年前は学園紛争の渦の中に飲み込まれていたのかなあ」と思いながら歩いた当時のことが甦ってきました。

その時の仙台は真夏の早朝の陽射しが爽やかで、東北一の都市の威厳も感じられました。

響子=小池真理子みたいな錯覚に陥りそうになりながら、「ビートルズでなくロールリングストーンズとバッハかあ~。私ならサイモンとガーファンクルやカーペンターズとモーツアルトだなあ」なんて思いながら・・・いつのまにか中断できすに一気に最後まで読んでしまいました。

恋愛のねじれた関係がいわゆる普通のケースとは違うのだけれど、最後の驚くべき大事件も結末は案外さりげなく、結構読者の余韻は軽くなるところまで持ち上げてくれてから終わります。

若き日のタイムスパイラルを楽しむにはリラックスタイムにお薦めの本かなと思いました。