徒然なるままに~のんびり、ゆったり、こまやかに

猪突猛進型の60代。そして卵巣がんですっ転んで8年。目指すはのんびり、ゆったり、細やかな生活!無理かなー(#^.^#)

父のことー入院52日目「奥さんに会いてえなあ・・・」-

2016-01-17 10:36:30 | 父とのこと
92回目の新年を無事迎えられた父。
今日は妹の住まい近くの療養病棟のある病院に入院して52日目。

妹夫婦と私たち夫婦、合わせて4人でお見舞いに。
廊下側のベッドにいる父。
なので私たちは、病室に入る前の父の様子が見える。
妹も、あっ、今日は起きているな、
あっ、今日は寝てるなって思いながら入るという。
起きているときと寝ているときでは、
お見舞いに行く側の心のもちようが微妙に違う。

今日の父。
目を開けていた。
そしてミトンをされていた。

私はまっすぐに父のところに進み、
「お父さん!R子よ!R子!」(私)
「・・・・・、(ちょっとうなづく)」(父)
うーーーん、分かっているかな、分かっていないかな・・微妙なところ。

「お父さんS夫です」(夫)
「・・・・(目を見てうなづく)」(父)
「お父さん、前回ははっきり僕だってわかったけど、うーん、どうかなあ・・」(夫)

続いて妹と義弟。
それぞれに「おとうさん!」と呼びかける。

「(モゴモゴ…聞き取れない)、帰るのか?そうか?」(父)

「あれ、みんながいるから、家のこと思い出したのかしら?
私だけがお見舞いに来るときは、こんなことなかったわ。」(妹)

そう言えば、このところ、父はまだ結婚する前の父の時代にいることが多かった。
妹のことも、父の妹のM江と呼んだりすることも多かったし・・・。

それが、今日は一挙に4人も行っちゃったから、
何か違うところが刺激されたのかも・・・。
家族だってことは認識されたのかしら・・・、
なんて考えていると、

「奥さんに、会いてえなあ・・・」(父)と一言。

えっ、奥さんて、母のこと??
えっ、父が母のことを言うなんて、
ここのところ、とんとなかったから私たちはびっくり。

「今、奥さんに会いたいって言ったよねえ」(私)
「うん、言った、言った!」(妹、夫、義弟)

「・・・帰るのか?眠たいから寝るな」(父)

これだけの言葉しかない。
だから私たちは、「これって、自分の家に帰るのか?
だけど自分は眠たいからその前に寝るぞっていっているのかなあ」
なんて、言いながら、父の言葉の翻訳作業に勤しんだ。

そして結論。
私たちが私たちだっていうことが
それぞれはっきり認識しているかいないかは分からない。
けれど、近しい家族だってことは認識されたようだ。
そしてそれが、父の家に帰りたい気持ちに火をつけた。
さらに「奥さんに会いてえなあ」って言葉をよんだ。

このところずーっと、母のことは出てこなかったのにだ。

認知症になると、現在に近い記憶から消えていって、
昔に戻るという話はよく聞く。
それで言えば、父は結婚前の父の世界に住んでいた。
でも、今日はこうして母と一緒だった時代に戻ったのだ。
「会いたいな」って思いながら。

家に帰りたいって聞こえた時、
一体どの時代の家に帰りたいんだろうと思った。
でもその次に出てきたこの「奥さんに会いてえな」の言葉を聞いて、
ああ、母と一緒にいる時代のどこかに帰りたいんだなって思った。

家に帰りたいってことは、ここが家ではないことはしっかりわかっている。
これから寝るぞなんてわざわざ言うのは、
今の自分の状況をちゃんと言葉にできている証拠。

はっきりしているところと、はっきりしていないところ。
妹がほぼ毎日言ってくれているおかげで、
それが日によって時間によって、父のその時の状況によって
全く違うことがわかる。

だから、分かっていないともわかっているとも決めつけられない。
その日その日に応じて父と関わってくれている妹。

最近は、父の言っていることが間違っているときに
以前のように正しいことに訂正することはやめたという。
とりあえず、父の言っていることに頷く。
父の頭の中のストーリーに付き合うと言ったらいいだろうか。

そしてそのあとに、あれはいったい何のこと、
何を言おうとしていたのかっていうことを、
妹は父通信に書いてくれる。
それを私たち姉妹の連れ合いも子どもたちも読むようになった。
皆がそれぞれにおじいちゃんや、舅や父である「父」のことを考える。

胃瘻装着後、今の命を生きている父。
もちろん理解できないことはいっぱいだけれど、
その父の今の生き様が私たちに考える時間をくれる。

これも、考えてみればメールという文明の利器のおかげだ。
昔だったら、手紙ということになるが、
そんなにいっぺんに多くの人に出すことはできない。

手紙ほど深くは考える前に出すメールという手段ではあるけれど、
こういう共有ができるのはやっぱりありがたいことだと思う。

さて、これから父はどんな時間の旅を続けるのだろうか。
なるべく心の晴れやかだった時代の旅をしてほしいとは願っているけれど、
なかなか、そうではないっていうことを、
このところの父の心の旅に付き合って思った。

「奥さんに会いてえなあ」が夢の中でも実現しますように!
会いたいなら、会ったら優しくしてあげてねって思う娘なのでした。

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