2020@TOKYO

音楽、文学、映画、演劇、絵画、写真…、さまざまなアートシーンを駆けめぐるブログ。

■ニューイヤーコンサート 2009

2009-01-02 | ■芸術(音楽、美術、映画、演劇)
  
  昨日、世界の各国に同時放送されたニューイヤーコンサートはじつに素晴らしいものでした。最初から最後まで放送された内容のすべてを見たのは、小澤征爾さんが指揮をつとめた2002年以来のことです。
  
  この年、この時代に、ダニエル・バレンボイムさんが指揮者として登場したことにも大きな意味があります。これについては、2007年7月16日に書いたブログのことを思い出したので、以下に当時のブログの全文をコピペしておきました。

  ■2007年7月16日のブログ

  新潟と長野で大きな地震が起きた。同じ時刻、東京でも揺れを感じた。被害が拡大しないこと、一刻も早く復旧が進むことを祈りたい。

  台風一過の快晴となるかと思いきや、午後からどんどん雲が増えて、どんよりした空模様になってしまった。散歩のついでに本屋に立ち寄り、大江健三郎の「読む人間」(集英社)と、ロッキング・オン・ジャパンの増刊号「SIGHT」を買ってきた。「SIGHT」の特集は、“反対しないと、戦争は終わらない”というもので、坂本龍一と藤原帰一の対談が面白そう。一方の「読む人間」をぱらぱらめくっていると、エドワード・サイードとダニエル・バレンボイムの対談「音楽と社会 = Parallels and Paradoxes 」のことが出ている。

  みすず書房から出ている「音楽と社会」邦訳の表4に、2人のプロフィールの概略が載っている。『かたやエルサレム生まれカイロ育ち、ニューヨークに住むパレスチナ人エドワード・サイード。かたやユダヤ人としてブエノスアイレスに生まれ、イスラエル国籍、ロンドン、パリ、シカゴ、そして現在はベルリンを中心に活躍する指揮者・ピアニスト、ダニエル・バレンボイム。つねに境界をまたいで移動しつづけている2人が、音楽と文学と社会を語りつくした6章だ』。

  サイードは、残念ながら2003年に病死したが、その著書は、みすず書房、平凡社などから出版されており、日本でも彼の思想に容易に触れる事が出来る。バレンボイムは、指揮者・ピアニストとして八面六臂の活躍をつづける才人だが、長い間、イスラエルではタブー視されていたワーグナーを演奏し、物議をかもした。時は2001年7月7日、ベルリン国立歌劇場管弦楽団を率いてエルサレムへの演奏旅行に出かけたバレンボイムは、プログラムにワーグナーのワルキューレ第1幕を予定していた。ところが、主催者側からクレームがつき、急遽プログラムをシューマンとストラヴィスキーに変更する。

  「事件」はその後に起きた。演奏を終えたバレンボイムは聴衆に語りかけた。「これからアンコールでワーグナーのトリスタンとイゾルデからの抜粋を演奏しようと思うがどうだろうか?」会場は、賛否両論の意見が飛び交う。「ワーグナーを不快に思う人は退席してもかまわない」。すると、何人かが席を立った。結果的に、席に残ってアンコールを聞いた2,800人の聴衆は、バレンボイムとオーケストラに熱狂的な拍手をおくった。

  この出来事は、当時一般の新聞でも取り上げられたので覚えているひとも多いと思う。ワーグナーが反ユダヤ的であったかどうかはともかく、彼の音楽の中に、露骨な反ユダヤ主義の台詞、響きは聞こえてこない。エルサレムでの出来事について、サイードの意見が「音楽と社会」の巻末に載っている。「バレンボイムとワーグナーのタブー」というタイトルである。

  「音楽と社会」は原書でも持っているのだが、それはリタイアした後、辞書を片手にゆっくり読もうと思い、海外から取り寄せたものだ。大江健三郎がこの本をどう読んだのか、「読む人間」のページを開くのが楽しみだ。久しぶりに、わくわくする読書の誘惑である。
  
コメント
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