竹林が、好きだ。
竹と竹の間が適度に隙間が空いていて、
雑草が生い茂ることもなく、薄暗い空気は
少しひんやりとしていて、若竹の匂いが混じっている。
見上げると、優しい木漏れ陽が、天から静かに降り注いでいる。
そんな竹林が、好きだ。
子どもの頃、そんな竹林が近所にあった。
僕らにとって、格好の遊び場のひとつだった。
でも、そこでどんな遊びをしていたのか、具体的に思い出せない。
友達と嬌声を上げながら、その竹林の中を走り回っていたのか、
それとも地面に座り込んで優しい風の音を聴きながら、絨毯のように
地面を覆う笹の葉で何かを作っていたのか。。。。
今では、もう思い出せない。
先日、仕事の途中で、そんな竹林の側を車で走った。
思わず、車を停めた。
路肩に停めた車から出ると、僕は何かに引き込まれるように
竹林の中に入っていった。
笹の匂いが鼻をくすぐる。優しい風がどこからともなく流れてきて、
僕の頬を撫でる。見上げると、残暑とは思えない柔らかい木漏れ陽が
木々の隙間から注ぎ降りる。
「おかえり」
竹林がそんな風に、僕の耳元で囁いたような気がした。
眼を、閉じた。
竹林の真ん中で、僕は眼を閉じて、心だけを、竹林に解放した。
静かに、本当に静かに、僕は竹林と同化していった。
嬉しいこと、虚しいこと、楽しいこと、哀しいこと、愛しいこと、
苦しいこと、愉快なこと、不条理なこと・・・僕の身体を竹林の風が
通り抜けるにつれて、僕の心の中に混在する、ひとことでは説明できない
感情や出来事のすべてが、竹林に同化して、そして浄化されてゆく気がしていた。
でも、きっとそれは、錯覚なのだ。
もう立派な大人になった僕が、子どもの頃と同じように、
そう簡単に竹林と同化して、浄化されることはないだろう。
僕は、あまりにもいろんなものを背負いすぎてしまった。
そしてこれからも、僕は様々なものを背中に背負い、腹に抱え、
両手に持ち、両足にくくり、どこかへ向かって歩いて行くのだろう。
それがどこなのかは、今はまだ分からないけれど。。。。。
浄化されたい。
もう一度まっさらな自分に戻って、
無邪気だった子どもの頃のように、竹林と同化したい。
しばらくして、僕は眼を開けた。
薄暗い木陰と木漏れ陽の日なたが交差する景色に
眼が慣れるまで、僕は眉間に皺を寄せて顔を歪めた。
風は、笹の葉の匂いを乗せて、相変わらず僕の頬を
優しく撫でていた。
僕は、一度だけ空を見上げると、背伸びをしながら
深呼吸をして、車に向かって歩き出した。
僕が歩くたびに、笹の絨毯がミシミシと鳴った。
僕は竹林が、好きだ。
竹と竹の間が適度に隙間が空いていて、
雑草が生い茂ることもなく、薄暗い空気は
少しひんやりとしていて、若竹の匂いが混じっている。
見上げると、優しい木漏れ陽が、天から静かに降り注いでいる。
そんな竹林が、好きだ。
子どもの頃、そんな竹林が近所にあった。
僕らにとって、格好の遊び場のひとつだった。
でも、そこでどんな遊びをしていたのか、具体的に思い出せない。
友達と嬌声を上げながら、その竹林の中を走り回っていたのか、
それとも地面に座り込んで優しい風の音を聴きながら、絨毯のように
地面を覆う笹の葉で何かを作っていたのか。。。。
今では、もう思い出せない。
先日、仕事の途中で、そんな竹林の側を車で走った。
思わず、車を停めた。
路肩に停めた車から出ると、僕は何かに引き込まれるように
竹林の中に入っていった。
笹の匂いが鼻をくすぐる。優しい風がどこからともなく流れてきて、
僕の頬を撫でる。見上げると、残暑とは思えない柔らかい木漏れ陽が
木々の隙間から注ぎ降りる。
「おかえり」
竹林がそんな風に、僕の耳元で囁いたような気がした。
眼を、閉じた。
竹林の真ん中で、僕は眼を閉じて、心だけを、竹林に解放した。
静かに、本当に静かに、僕は竹林と同化していった。
嬉しいこと、虚しいこと、楽しいこと、哀しいこと、愛しいこと、
苦しいこと、愉快なこと、不条理なこと・・・僕の身体を竹林の風が
通り抜けるにつれて、僕の心の中に混在する、ひとことでは説明できない
感情や出来事のすべてが、竹林に同化して、そして浄化されてゆく気がしていた。
でも、きっとそれは、錯覚なのだ。
もう立派な大人になった僕が、子どもの頃と同じように、
そう簡単に竹林と同化して、浄化されることはないだろう。
僕は、あまりにもいろんなものを背負いすぎてしまった。
そしてこれからも、僕は様々なものを背中に背負い、腹に抱え、
両手に持ち、両足にくくり、どこかへ向かって歩いて行くのだろう。
それがどこなのかは、今はまだ分からないけれど。。。。。
浄化されたい。
もう一度まっさらな自分に戻って、
無邪気だった子どもの頃のように、竹林と同化したい。
しばらくして、僕は眼を開けた。
薄暗い木陰と木漏れ陽の日なたが交差する景色に
眼が慣れるまで、僕は眉間に皺を寄せて顔を歪めた。
風は、笹の葉の匂いを乗せて、相変わらず僕の頬を
優しく撫でていた。
僕は、一度だけ空を見上げると、背伸びをしながら
深呼吸をして、車に向かって歩き出した。
僕が歩くたびに、笹の絨毯がミシミシと鳴った。
僕は竹林が、好きだ。
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