齢仙寺雑記帳

滋賀県にある臨済宗妙心寺派のお寺、齢仙寺の日々のお話

8月のことば 「喫茶去(きっさこ)」

2015年08月11日 | 今月の言葉
お盆の月ですね。
更新が遅れて申し訳ありません。

今月のことばは

「喫茶去(きっさこ)」

この語は掛け軸などでよく見かけます。

「去」は強調の助辞で「去る」の意味はないそうです。
一般的には「まぁ、お茶でも召し上がれ」という意味のようですね。

中国唐末の禅僧「趙州(じょうしゅう)和尚(七七八-八九七年)」は、
求道の二人の来訪者に、「ここを曾(かつ)て訪れたことがあるか」と聞き、

一人が「ある」
と答えると「喫茶去」と言い、

他の「無い」と答えた者にも
「喫茶去」と言ったそうです。

それを聞いていた侍者が

何故状況が異なるのに同じように「喫茶去」と言うのか?

と問うと、

これに対しても「喫茶去」といったそうです。

そこで侍者は、

はっと気づいたという話があるのだそうです。


趙州和尚は、

状況の異なり、有無、美醜など相対的なものを断ち切った、何とも表現し難い「絶対」の立場、
すなわち分別の無い無心のところから

三人の誰に対しても、さらりと「喫茶去」と発したのですね。

茶席などでは同席者の老若、社会的地位、男女などを問わず
この無心の心で茶を点(た)てたり、一碗の茶を喫することをこの言葉に託して掛け軸にかけるのでしょう

しかし、この語は求道者に返された言葉なのです。世間話をしているのではないわけです。

この場に以前に来たかどうかを問われ、この二人は「有無」を「のうのうと答えた」のである。
そして侍者はその差異にこだわった。ということで、ここでもう終了。

趙州和尚は道を求めた者や侍者に「喫茶去」と返すことでその境地を示したのであるが、

併せて
「未熟者め!そんな程度で道を求める問答などにここに来るのは十年早いわ。せっかく来たのだから茶ぐらい出すけど、さっさと茶を飲んで帰れ!!」

とメッセージを発したのではないでしょうか。
ちょっと難しいですけど、一挨一拶。ご用心。ご用心。


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八月十三日・十四日 棚経
八月十五日 午前八時 山門施餓鬼
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平成二十七乙未葉月