雫井脩介の大ベストセラー警察小説「犯人に告ぐ」を読み、前後して映画の方も観ました。
やはり、「劇場型捜査」というアイデアは秀逸ですね(少々荒唐無稽な気はしますが)。
小説版・映画版ともに一長一短はあり、どちらもなかなか良い作品でしたが、
双方には、けっこうプロットの違いがありました。
小説は、劇場型捜査に戸惑いながら試行錯誤していく様を描いていますが、
映画では、最初から巻島にそれなりのプランがあったように描かれています。
また、序章となる「ワシ」の事件の犯人(と目される)有賀は、
小説では殺人への罪悪感に押し潰されて自ら命を絶ちますが、
映画では警察の捜査が遂に自分に迫ったことを悟っての自殺でした。
小説版は足柄署の名物刑事・津田長が非常に重要な役回りを演じますが、
(巻島とストーリーにとって大きな岐路となる、心に残る名言をいくつか発している)
映画版では、笹野高史の渋い演技力は光るものの、
それほど重要なキャラクターではなくなっていました。
なによりも、小説では、過去の恋愛にとらわれて策謀を巡らすが、
情けなくもどこか憎めない小者として描かれた植草が、
映画版では何を考えているのか分からない、冷徹な官僚的人物とされていました。
やはり文庫で650ページを超える大作だけに、
映画化にはいろんな面での取捨選択・改編が必要だったようです。
ただ、巻島の家族関係の設定や、犯人を追い詰めるクライマックスでの緊張感は、
映画の方が優れていると感じました。
有賀の扱いも、小説版は少々あっさりしすぎでしたね。
映画版は、トヨエツをはじめ、石橋凌、小沢征悦、笹野高史、池内万作、
といった存在感のある役者たちの演技が見事でした。
最近のエンターテインメント小説(特に警察小説)では、
多くのキャラクターからの多重的な視点でストーリーを展開させていくことが多いんですが、
この小説はほぼ、巻島と植草の二人からのみという、限定的な視点で構成されています。
(ごく一部、ダメ刑事・小川からの視点のパートがありますが)
あえて採用された構成だとは思うのですが、
犯人側や遺族側、TV局側などからも描かれていれば、
もっと重厚な作品になり得た気もしました。
なにはともあれ、クライマックスでの、
「バッドマンに告ぐ。お前は包囲された。
今夜は震えて眠れ」
このセリフには、本当にシビれました。
それまで、ある意味犯人に媚びを売らざるをえなかった巻島が、
遂に乾坤一擲の反撃に出たあの場面、劇的なカタルシスを感じさせてくれました。
P.S. 映画のラスト、負傷し病院のベッドで眠っていたトヨエツが、
いきなり目をカッと見開くシーンで唐突に終わりますが、アレには何の意味が?
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映画はまだ見てないんですよ。
映画は映画でまた違った面白さがあるようですね。
とりあえず映画化されるとまず原作は読むのですが
結局映画をみないまま…という作品がごろごろです。
映画も見たいがライブDVDも見たいし、CDも聞きたいしで
時間の使い方がヘタなので、やりくりが難しいです。
reGさんは時間の使い方がお上手ですよね。
見習わなくては!!
映画版には続編の予定があるのかと思ってしまいました(笑)
やはり小説の方がテーマは伝わってきましたね。
映画の方がテンポは良かったですが。
僕も時間の使い方はヘタですよ ^^;
読んでない小説、ロクに観てないDVDがゴロゴロしてます・・・。
確かにありそうなセンです。
バックトゥザフューチャー辺り以来、
とりあえず続編の予定なくても伏線入れとけ!
っての増えましたよね。