○覇王の死/二階堂黎人 ≪編集者は死んでしまえ≫
二階堂の看板シリーズ、蘭子ものの最新作。シリーズ前作『双面獣事件』や他のシリーズものから、作者のあまりの衰えっぷりが推察されてはいたが、それでも蘭子の本格ものならもしかすると・・・という淡い期待から買ってしまった自分がバカだった。「日本にある外国人だけの移住村」という発想は悪くないと思うが、普通なら伏線を織り込みつつ隠して最後にビックリ的なそのネタを全く隠さずに話は進み、でも何か意味はあるのかもと思っていたら、結局たいした意味は無かった。なんだったんだニューホーリー村・・・。生涯の好敵手だったはずのラビリンスの扱いもあまりに中途半端だし。そして、「あの彼」の子を生んでしまった(と思われる)蘭子がまったくもって意味不明、ていうか奴とやっちゃったのかよ・・・。前作読了時も書いたが、この駄文を書いた作者も作者だが、これをお客に売っても良いと判断した編集者こそ責められるべきだと思う。金返せ、ていうか慰謝料加えて金よこせ。もう次こそ絶対買いません。さようなら二階堂黎人。
○神様ゲーム/麻耶雄高 ≪人を選ぶ傑作トラウマ小説≫
講談社の少年向けミステリーシリーズ『ミステリーランド』の一冊として上梓されたものの、そのあまりの衝撃的展開と無慈悲なまでに突き放したラストに、「トラウマ小説」の名を欲しいままにし、大絶賛と大批判を浴びた作品。ノベルス化を機に再読。あの「銘探偵」メルカトル鮎を生んだ作者だけに一筋縄でいかないというか、ついてこれる奴だけついてこいという作品だが、よくよく読むとミステリーとしての完成度は恐ろしく高く、間違いなく麻耶の最高傑作といえると思う。トラウマ的にも、さすがに小学生に読ませるのはどうかと思うが、高校生以上の人間が読む分には全く問題ない(よね?)。ある「超自然的要素」が原理主義的本格推理マニアに受け入れられないようだが、本策におけるその要素は狂言回しとしての役割であって、ミステリーの根本にかかわる問題ではないことを理解するべきである。
○蛍/麻耶雄高 ≪嫌がらせかリスペクトか≫
正直ネーミングはどうかと思うが、山奥に建つ異形の建築物「ファイアフライ館」を舞台にした。いわゆる「館」ものミステリー。館・大学サークル・数年前の惨劇・連続殺人・叙述トリックと、露骨に綾辻を意識した作風で、前半までは「十角館」や「霧越邸」あたりを読んでいるかのような既視感も。しかしそこは麻耶、後半は叙情的かつ爽快な綾辻系パズラーを意図的に放棄、彼独特のイヤ~な世界観を読者に押し付けまくってくる。パッと見には綾辻ファンへの嫌がらせとしか思えないが、もしかしたら先輩が大好きなのかも(笑)。2つある叙述トリックの片方が最初からバレバレなのもワザとなのか?
○さまよう刃/東野圭吾 ≪映画は駄作だが原作は佳作≫
先に映画版を観てしまったのだが、寺尾聡の演技のみが光り、ぶっちゃけ映画としては明らかな駄作だったこの作品、原作小説はなかなかの力作だった。いつもながら脇役が魅力的で、特にペンションオーナーの娘は良いキャラクターだった。ストーリー的には、正義漢・東野らしい展開で罪と罰の難問に一歩踏み込んではいるが、結論まではうやむやにしているような気も。
○黒笑小説/東野圭吾 ≪くだらないが面白い≫
『超・殺人事件』に代表される、東野の別の一面である出版業界を舞台にした作品を中心としたスラップスティック・コメディ集。魑魅魍魎が跋扈する(と言われる)出版業界、実際にこんな連中が居てもまったくおかしくない気がする。まったくもってくだらないといえばくだらないが、面白く読めることは間違いない。
○犯罪ホロスコープ(1)/法月綸太郎 ≪現代に蘇ったクイーンの冒険≫
法月綸太郎シリーズの短編集。12星座にちなんだ事件を綸太郎が解決していくという、クイーンやポワロの短編集に夢中になった人にはたまらない趣向。ただ、かなり強引に星座にこじつけた話もあるにはある。本格推理短編としては、どの話も切れ味上々。「功績」や「パズル崩壊」ほどの域には達していないが、残る6星座分も楽しみ。
○ついてくるもの/三津田信三 ≪終わり良ければ・・・≫
怪奇・伝奇的推理小説の刀城言耶シリーズで人気の作者の、『赫眼』に続く2冊目のホラー短編集。前作とは異なり、実話怪談風の体裁をとっている話が多くを占めているが、ほぼ全て創作だろう。特に、表題作「ついてくるもの」「八幡藪知らず」「裏の家の子供」あたりが気に入ったが、どの作品も十分怖い。しかし、最後に収録された刀城ものの短編「椅人の如き座るもの」だけは完全に蛇足かつ駄作。まるで、捨て曲を良かれと思ってボーナストラックとして収録したら全体の流れを台無しにしてしまったロック・アルバムのよう。
○八月の暑さの中で・南から来た男/金原瑞人 編訳 ≪瑞々しい文体で名作怪談を≫
翻訳ヤングアダルト小説界の重鎮が厳選した、古典的英米怪奇小説のアンソロジー。2冊とも岩波少年文庫刊なのでつまり子供向けで、グロい話や残酷な話は全く選ばれていないが、文・装丁とも大人の鑑賞にも十分堪える。どちらかといえば、前者の方が怪奇的、後者は叙情的なセレクトが多いか。半分以上が既読作品だったが、少年向けの瑞々しい文体で訳され、新たな命を与えられた作品たちはとても新鮮に感じる。特に、世紀の怪作(傑作とは言えないと思う)「ボドロ島」が新訳で読めたのはちょっと感動的だった。ちなみに編者は感動の傑作ホラーファンタジー、クリフ・マクニッシュ作の『ゴーストハウス』の訳者でもあることに気がついた。
○憑かれた鏡~エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 ≪怖い絵と怖い話の競演≫
絵本作家として有名なゴーリーがセレクトした、英国怪奇小説のアンソロジーで、各話の扉に編者自身がイラストをつけている。この絵がまた、作品のイメージを何倍にも膨らませるような秀逸なもの。特に「空家」「夢の女」「判事の家」には本当にゾッとさせられた。掲載作品も「猿の手」「信号手」のような古典中の古典から、比較的無名な作家の隠れた名作まで、見事としか言いようのないラインナップ。個人的には、『ドラキュラ』が有名すぎて他の作品が霞んでしまっているB・ストーカーの「判事の家」が特に怖かった。
○ゴースト・ハント/H・R・ウェイクフィールド ≪最後の英国怪奇小説家≫
長いこと「防人」など一部作品しか知られていなかった“最後の英国怪奇小説家”ウェイクフィールドの短編集。国書刊行会から出ていた『赤い館』を底本として新訳短編を大幅に加えた本だが、どうせなら「防人」も新訳して入れて欲しかった。それはともかくとして、(良い意味でも悪い意味でも)古臭い怪奇譚ばかりかと思っていたら、意外とモダンなセンスの作品も含まれていることに驚かされた。もちろん期待通りの古典的幽霊屋敷ものもありで、非常に面白かった。ちなみに「防人」「ゴースト・ハント」「目隠し遊び」の3作を読み比べると、舞台・ストーリー展開はほぼ同じなのに味付けが全く異なっており、それぞれに違った恐怖を味わえるところが大変興味深い。ところでファーストネームとセカンドネームのイニシャルはギーガーと一緒だね・・・。
○怪談実話 無残百物語 ゆるさない/黒木あるじ ≪嫌な話(誉め言葉)≫
新耳袋を先駆けとして、綾辻夫婦まで巻き込んで盛り上がりが止まらない実話系怪談。なかでもこの作品集は不気味な話・生理的に嫌な話が目白押しで、単なる幽霊譚や不思議話に飽きた人には最適。逆に気が弱い人、グロが苦手な人は絶対読んじゃ駄目。
○たましくる/堀川アサコ ≪全てがチグハグな駄作≫
最近流行のホラー風味ミステリー。頭脳明晰なイタコと死者の声が聞こえてしまう女性のコンビという、この手のテンプレに従ったキャラ造形だが、割と平凡な事件で超常現象が殆ど出てこず、設定を生かしきれていないような?時代背景が古くてシリアスなストーリーの割に妙に軽い文体もダメ。ゴーストハントシリーズや心霊探偵八雲のレベルには全く及ばない。
○化物語/西尾維新 ≪21世紀の言の葉使い≫
アニメ化もされた大ヒットラノベ。世界観は「怪異」を中心としたラノベ的ファンタジーだが、実質的な作品のテーマは「会話」。それも掛け合い漫才である。本を開くとよくわかるが、一般的に会話が多いラノベのなかでも圧倒的に地の文が少なく、ほぼ全編これ会話。主人公とヒロインたちの繰り広げる夫婦漫才(ダジャレ多数含む)が延々と淡々と続く。そう書くとメチャクチャつまらなそうな本に思えるが、これが破壊的なまでに面白い。作者の持つ、言葉に対する類まれなセンスの賜物だろう。
○僕は友達が少ない/平坂読 ≪リア充は死ね!(笑)≫
まずタイトルに致命的な誤りがあって、正確には「僕には友達がいない」(笑)。それはともかく、友達がいない残念な高校生達が“リア充”を目指して友達作りの練習に励む部活“隣人部”の巻き起こす騒動を中心とした、残念系ラブコメ。主人公が「とらドラ!」の竜児と「俺妹」の京介を足して2で割った感じなのをはじめとしてテンプレ的なキャラクターも多いが、ヒロインの夜空、幸村、マリアなどの奇想天外で残念なキャラ造形はとても面白い。「周囲の人間の行動や思惑を一方的な思い込みで勘違いして描写した一人称」という文章形態だけでなく、邪気眼少女や理系腐女子など「俺妹」との類似点は多いが、こちらはこちらで十分に魅力的で個性的な世界を持っている。
○わたしたちの田村くん/竹宮ゆゆこ ≪個人的には相馬さんが好み≫
名作ラノベ『とらドラ!』の作者のデビュー作。それなりに面白く読めたが、あまりにイタい空回りを続ける田村くんのエキセントリックなキャラには引くしかなかった。ある意味、串枝の原型か。
○ゴールデンタイム/竹宮ゆゆこ ≪作者の伝えたいものが全く分からない≫
同じく『とらドラ!』の作者の新作。今度の舞台はラノベには珍しい大学。主人公の多田万里は、大人しいくせに時々ブチ切れて調子に乗った空回りをみせるという、田村くん2世的キャラクター。ヒロインの加賀香子は、ゴージャスお嬢様なのにアレコレすごく残念というキャラで華々しくデビューしたものの、回を追うごとに四畳半フォーク的地味キャラに変貌。正直、キャラに対する感情移入先が見つからない。万里の「霊魂」がまだ本筋に大きく絡んでこなかったりとか、やなっさんと岡ちゃんの恋が全然発展しなかったりとか、何故か「なな」と読むキャラが二人いたりとか、5巻を経てもストーリーの全貌が全く見えず混沌とした状態で、今のところ大変微妙な感触。『とらドラ!』は何かの奇跡だったのだろうか?
二階堂の看板シリーズ、蘭子ものの最新作。シリーズ前作『双面獣事件』や他のシリーズものから、作者のあまりの衰えっぷりが推察されてはいたが、それでも蘭子の本格ものならもしかすると・・・という淡い期待から買ってしまった自分がバカだった。「日本にある外国人だけの移住村」という発想は悪くないと思うが、普通なら伏線を織り込みつつ隠して最後にビックリ的なそのネタを全く隠さずに話は進み、でも何か意味はあるのかもと思っていたら、結局たいした意味は無かった。なんだったんだニューホーリー村・・・。生涯の好敵手だったはずのラビリンスの扱いもあまりに中途半端だし。そして、「あの彼」の子を生んでしまった(と思われる)蘭子がまったくもって意味不明、ていうか奴とやっちゃったのかよ・・・。前作読了時も書いたが、この駄文を書いた作者も作者だが、これをお客に売っても良いと判断した編集者こそ責められるべきだと思う。金返せ、ていうか慰謝料加えて金よこせ。もう次こそ絶対買いません。さようなら二階堂黎人。
○神様ゲーム/麻耶雄高 ≪人を選ぶ傑作トラウマ小説≫
講談社の少年向けミステリーシリーズ『ミステリーランド』の一冊として上梓されたものの、そのあまりの衝撃的展開と無慈悲なまでに突き放したラストに、「トラウマ小説」の名を欲しいままにし、大絶賛と大批判を浴びた作品。ノベルス化を機に再読。あの「銘探偵」メルカトル鮎を生んだ作者だけに一筋縄でいかないというか、ついてこれる奴だけついてこいという作品だが、よくよく読むとミステリーとしての完成度は恐ろしく高く、間違いなく麻耶の最高傑作といえると思う。トラウマ的にも、さすがに小学生に読ませるのはどうかと思うが、高校生以上の人間が読む分には全く問題ない(よね?)。ある「超自然的要素」が原理主義的本格推理マニアに受け入れられないようだが、本策におけるその要素は狂言回しとしての役割であって、ミステリーの根本にかかわる問題ではないことを理解するべきである。
○蛍/麻耶雄高 ≪嫌がらせかリスペクトか≫
正直ネーミングはどうかと思うが、山奥に建つ異形の建築物「ファイアフライ館」を舞台にした。いわゆる「館」ものミステリー。館・大学サークル・数年前の惨劇・連続殺人・叙述トリックと、露骨に綾辻を意識した作風で、前半までは「十角館」や「霧越邸」あたりを読んでいるかのような既視感も。しかしそこは麻耶、後半は叙情的かつ爽快な綾辻系パズラーを意図的に放棄、彼独特のイヤ~な世界観を読者に押し付けまくってくる。パッと見には綾辻ファンへの嫌がらせとしか思えないが、もしかしたら先輩が大好きなのかも(笑)。2つある叙述トリックの片方が最初からバレバレなのもワザとなのか?
○さまよう刃/東野圭吾 ≪映画は駄作だが原作は佳作≫
先に映画版を観てしまったのだが、寺尾聡の演技のみが光り、ぶっちゃけ映画としては明らかな駄作だったこの作品、原作小説はなかなかの力作だった。いつもながら脇役が魅力的で、特にペンションオーナーの娘は良いキャラクターだった。ストーリー的には、正義漢・東野らしい展開で罪と罰の難問に一歩踏み込んではいるが、結論まではうやむやにしているような気も。
○黒笑小説/東野圭吾 ≪くだらないが面白い≫
『超・殺人事件』に代表される、東野の別の一面である出版業界を舞台にした作品を中心としたスラップスティック・コメディ集。魑魅魍魎が跋扈する(と言われる)出版業界、実際にこんな連中が居てもまったくおかしくない気がする。まったくもってくだらないといえばくだらないが、面白く読めることは間違いない。
○犯罪ホロスコープ(1)/法月綸太郎 ≪現代に蘇ったクイーンの冒険≫
法月綸太郎シリーズの短編集。12星座にちなんだ事件を綸太郎が解決していくという、クイーンやポワロの短編集に夢中になった人にはたまらない趣向。ただ、かなり強引に星座にこじつけた話もあるにはある。本格推理短編としては、どの話も切れ味上々。「功績」や「パズル崩壊」ほどの域には達していないが、残る6星座分も楽しみ。
○ついてくるもの/三津田信三 ≪終わり良ければ・・・≫
怪奇・伝奇的推理小説の刀城言耶シリーズで人気の作者の、『赫眼』に続く2冊目のホラー短編集。前作とは異なり、実話怪談風の体裁をとっている話が多くを占めているが、ほぼ全て創作だろう。特に、表題作「ついてくるもの」「八幡藪知らず」「裏の家の子供」あたりが気に入ったが、どの作品も十分怖い。しかし、最後に収録された刀城ものの短編「椅人の如き座るもの」だけは完全に蛇足かつ駄作。まるで、捨て曲を良かれと思ってボーナストラックとして収録したら全体の流れを台無しにしてしまったロック・アルバムのよう。
○八月の暑さの中で・南から来た男/金原瑞人 編訳 ≪瑞々しい文体で名作怪談を≫
翻訳ヤングアダルト小説界の重鎮が厳選した、古典的英米怪奇小説のアンソロジー。2冊とも岩波少年文庫刊なのでつまり子供向けで、グロい話や残酷な話は全く選ばれていないが、文・装丁とも大人の鑑賞にも十分堪える。どちらかといえば、前者の方が怪奇的、後者は叙情的なセレクトが多いか。半分以上が既読作品だったが、少年向けの瑞々しい文体で訳され、新たな命を与えられた作品たちはとても新鮮に感じる。特に、世紀の怪作(傑作とは言えないと思う)「ボドロ島」が新訳で読めたのはちょっと感動的だった。ちなみに編者は感動の傑作ホラーファンタジー、クリフ・マクニッシュ作の『ゴーストハウス』の訳者でもあることに気がついた。
○憑かれた鏡~エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 ≪怖い絵と怖い話の競演≫
絵本作家として有名なゴーリーがセレクトした、英国怪奇小説のアンソロジーで、各話の扉に編者自身がイラストをつけている。この絵がまた、作品のイメージを何倍にも膨らませるような秀逸なもの。特に「空家」「夢の女」「判事の家」には本当にゾッとさせられた。掲載作品も「猿の手」「信号手」のような古典中の古典から、比較的無名な作家の隠れた名作まで、見事としか言いようのないラインナップ。個人的には、『ドラキュラ』が有名すぎて他の作品が霞んでしまっているB・ストーカーの「判事の家」が特に怖かった。
○ゴースト・ハント/H・R・ウェイクフィールド ≪最後の英国怪奇小説家≫
長いこと「防人」など一部作品しか知られていなかった“最後の英国怪奇小説家”ウェイクフィールドの短編集。国書刊行会から出ていた『赤い館』を底本として新訳短編を大幅に加えた本だが、どうせなら「防人」も新訳して入れて欲しかった。それはともかくとして、(良い意味でも悪い意味でも)古臭い怪奇譚ばかりかと思っていたら、意外とモダンなセンスの作品も含まれていることに驚かされた。もちろん期待通りの古典的幽霊屋敷ものもありで、非常に面白かった。ちなみに「防人」「ゴースト・ハント」「目隠し遊び」の3作を読み比べると、舞台・ストーリー展開はほぼ同じなのに味付けが全く異なっており、それぞれに違った恐怖を味わえるところが大変興味深い。ところでファーストネームとセカンドネームのイニシャルはギーガーと一緒だね・・・。
○怪談実話 無残百物語 ゆるさない/黒木あるじ ≪嫌な話(誉め言葉)≫
新耳袋を先駆けとして、綾辻夫婦まで巻き込んで盛り上がりが止まらない実話系怪談。なかでもこの作品集は不気味な話・生理的に嫌な話が目白押しで、単なる幽霊譚や不思議話に飽きた人には最適。逆に気が弱い人、グロが苦手な人は絶対読んじゃ駄目。
○たましくる/堀川アサコ ≪全てがチグハグな駄作≫
最近流行のホラー風味ミステリー。頭脳明晰なイタコと死者の声が聞こえてしまう女性のコンビという、この手のテンプレに従ったキャラ造形だが、割と平凡な事件で超常現象が殆ど出てこず、設定を生かしきれていないような?時代背景が古くてシリアスなストーリーの割に妙に軽い文体もダメ。ゴーストハントシリーズや心霊探偵八雲のレベルには全く及ばない。
○化物語/西尾維新 ≪21世紀の言の葉使い≫
アニメ化もされた大ヒットラノベ。世界観は「怪異」を中心としたラノベ的ファンタジーだが、実質的な作品のテーマは「会話」。それも掛け合い漫才である。本を開くとよくわかるが、一般的に会話が多いラノベのなかでも圧倒的に地の文が少なく、ほぼ全編これ会話。主人公とヒロインたちの繰り広げる夫婦漫才(ダジャレ多数含む)が延々と淡々と続く。そう書くとメチャクチャつまらなそうな本に思えるが、これが破壊的なまでに面白い。作者の持つ、言葉に対する類まれなセンスの賜物だろう。
○僕は友達が少ない/平坂読 ≪リア充は死ね!(笑)≫
まずタイトルに致命的な誤りがあって、正確には「僕には友達がいない」(笑)。それはともかく、友達がいない残念な高校生達が“リア充”を目指して友達作りの練習に励む部活“隣人部”の巻き起こす騒動を中心とした、残念系ラブコメ。主人公が「とらドラ!」の竜児と「俺妹」の京介を足して2で割った感じなのをはじめとしてテンプレ的なキャラクターも多いが、ヒロインの夜空、幸村、マリアなどの奇想天外で残念なキャラ造形はとても面白い。「周囲の人間の行動や思惑を一方的な思い込みで勘違いして描写した一人称」という文章形態だけでなく、邪気眼少女や理系腐女子など「俺妹」との類似点は多いが、こちらはこちらで十分に魅力的で個性的な世界を持っている。
○わたしたちの田村くん/竹宮ゆゆこ ≪個人的には相馬さんが好み≫
名作ラノベ『とらドラ!』の作者のデビュー作。それなりに面白く読めたが、あまりにイタい空回りを続ける田村くんのエキセントリックなキャラには引くしかなかった。ある意味、串枝の原型か。
○ゴールデンタイム/竹宮ゆゆこ ≪作者の伝えたいものが全く分からない≫
同じく『とらドラ!』の作者の新作。今度の舞台はラノベには珍しい大学。主人公の多田万里は、大人しいくせに時々ブチ切れて調子に乗った空回りをみせるという、田村くん2世的キャラクター。ヒロインの加賀香子は、ゴージャスお嬢様なのにアレコレすごく残念というキャラで華々しくデビューしたものの、回を追うごとに四畳半フォーク的地味キャラに変貌。正直、キャラに対する感情移入先が見つからない。万里の「霊魂」がまだ本筋に大きく絡んでこなかったりとか、やなっさんと岡ちゃんの恋が全然発展しなかったりとか、何故か「なな」と読むキャラが二人いたりとか、5巻を経てもストーリーの全貌が全く見えず混沌とした状態で、今のところ大変微妙な感触。『とらドラ!』は何かの奇跡だったのだろうか?
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