在宅訪問介護~もうひとつの命の存在~
10年ほど前、僕は在宅介護の仕事をしていました。
男性スタッフということもあり、主に大柄のおじいさん(男性利用者)の入浴介助を何件も受け持って、それぞれ週三回(隔日)のペースで訪問しておりました。
担当していた男性利用者のひとり、「Y」さん宅でのお話しをひとつ。
「Y」さんは80代、奥さんと二人暮らし。
すぐ近所にはご長男さんが住んでおられ、毎日身の回りの様子を見に、まめに来られている。
「Y」さんの体調は、筋肉が衰えて自力では起きられないものの健康は保たれており、ご自宅一階の居間に介護ベットを置いて生活されている。
奥さんは日常の家事等は、なんとか出来る具合。
とある日の午後、いつものように玄関をガラァっと開ける。
『「Y」さ~ん!山本で~す。今日はお風呂の日やで~~っ。』
と、関西弁で元気にいつもの挨拶で訪問する。
玄関を上がるとスグ左に二階への階段があるが、ご夫婦は歳老いてから、もう何年も二階には上がっていないという。
僕はいつもなにげに気になって、その誰も居ないはずの二階へ通じる階段の先をチラッと見あげてしまうのだ。
それは、何か・・ナマナマしい生きた感覚を二階から感じてしまうからだった。
実は「Y」さんには、もう一人息子さんがおられたことを聞いている。 次男にあたる息子さんで、若くして亡くなられたそうだ。
もしや・・その次男さんの魂が、いまも二階に居るのではないか!?、それは訪問する度にいつも感じていた。
そしてある日、その謎が証明される出来事が訪れたのです。
いつものように居間の介護ベットで寝ておられる「Y」さんの顔をのぞきこんで、入浴を促す声かけをしました。
その時です・・。
ふと枕元を見ると、銀色にひかる「パチンコ玉」がひとつ置かれてあったのです。
パチンコ玉?。
奥さんや長男さんが置くわけはない、何度も訪問していればわかる。
僕の胸の奥では、もう気づきはじめていた。
僕はパチンコ玉を指で取って、「Y」さんの眼の前に見せて・・・、
『「Y」さん?このパチンコ玉、どうしたんですか?、誰かここに置いたんですか?』
と、聞いてみた。
すると
『あぁ・・・。死んだ息子が、よう集めとったなぁ。』
え゛っ!!!???
僕は居間の天井を見上げた。
やっぱりそうだ、次男さんの魂は亡くなられた後も、ずっと二階で生きている。今も父親のもとに居て、大事に見守っているんだ。
それを僕に知らせてくれた。
知らせたかった?。
青年のままの若い次男さんがいる。
この事は、他のご家族には言わず、僕と亡き次男さんだけの秘密にしておこう・・・そんな気がしたのです。
なぜなら、実は「Y」さんと奥さんは再婚されていて、亡くなられた次男さんは「Y」さんの実子なのです。
父親の肉体的生涯を全うするその日まで、次男さんは待っている。
次男さんの大切な時間を静かに僕も見守っていよう。
映画「となりのトトロ」劇中、家の天井からドングリが落ちてくるシーンがありました。
僕のこの体験では「パチンコ玉」で!?。
この世には時間という概念があるが、あの世には存在しない。
生前・死後にかかわらず、大勢の方々の魂を透視し、カウンセリングしてきましたが、死後の世界も各々様々なのです。
しかし「Y」さんの亡くなられた息子さんの死後には、父親と繋がった『切れることのない時間』が存在していました。
肉体はなくとも、息子さんの一途な思いをパチンコ玉で、その存在を証明されました。
そしてほどなくしてから、僕は介護職をはなれました。
またそれから更に暫くたち、介護職時代の先輩に「Y」さんが亡くなられたと聞きました。
息子さんと、父親の「Y」さん
一緒に旅立たれたと思います。
サイキックの眼 山本 コージ
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