大阪 中之島 のホテルにて
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30年前。
大阪中之島の大きなホテルでルームサービスの仕事をしていた。
最上階の客室よりオーダーがあり朝4時におもむいた。
ドアをノックして客室内に入る。
広いダブルルームの家具の上に 白いショールが置かれていた。
「女性ではなく…男性のような雰囲気がするなぁ?」
目線は下に向け、周りは見ず、商品だけを置いて去るのが常識。
伝票にサインをいただく… すると
“美輪明宏”とかかれておりました。
思わず顔を上げてお客様を見ると…
もの凄い眼力でこちらを見つめていました。
眼が合ってしまって……
しばらく固まってしまうほどでした。
この動画の冒頭シーンと同じです。
僕も当時20代半ばでした…
劇中の“川津祐介”さんの演技、
まさにそのモノのようになりました。
再び客室のドアを開け、退室するさなかも、
“美輪明宏”氏はピクリとも動かず…
僕を見続けておりました。
一礼をしドアを閉め…
僕は、客室のドアに向かって、
スゥ~っと…もたれかかり、
訳もわからず、
うなだれて、
ひざをついてしまった…
ちょうど 戯曲「黒蜥蜴」の大阪公演があったときではないでしょうか?
劇中に“中之島のホテル”というシーンがあります。
なので同じロケーションのホテルを利用されていたのだと思います。
ご注文なさったのは 深夜メニュー「天ぷらうどん」でした。
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映画「黒薔薇の館」(1969年)
劇中歌 “薔薇のルムバ”
演:美輪明宏
YouTube のオススメから視聴しました。
動画内のシーンを観て…
今から30年前
1994年の24歳のときの事を思い出しました。
こちらの動画コメントに、
その30年前の出来事を綴ってみました。
上記の一節は、その内容です。
大阪 中之島のホテル
このことは、
いつかブログ内にて文字に起したいとおもっていました。
将来…何をして良いのか分らなかった20代の頃、
求人雑誌でみた“ホテル ルームサービス”の夜勤のバイト。
他の人より悩むことが多かった性質のため、
仕事をつめこんで時間と現実のことを忘れようとした。
大阪の老舗ホテル。
巨大な館内。
お客様で伺うと気持ちのいいものですが…
仕事となると、
毛足の長い厚い絨毯の上を歩き続けていると、
足が不安定になりやすくとても疲れてしまう。
ですが何よりも…
将来への不安の気を紛らわすために
夜勤のルームサービスの仕事に就いたが、
どうしていいのか余計に分らなくなる日々となってしまっていく。
社員への雇用の誘いもありましたが、
それもお断りして、
わずか2ヶ月で終止符を打つことに。
(2週間前には申し出て)
そして最後の日の夜勤。
朝4時ごろ
「ヤマモトく~ん、これお願ぁ~い。持って行って。」
いつものように、
オーダーを受けたルームサービスの食事を持って、
今回は最上階の客室へ。
これが最後の仕事、
最後のお客様となりました。
それが『美輪明宏』さんでした。
まだその時は、
文学的なことも
舞台のことも
芸術的なことも全く知りませんでした。
このときから、
舞台を観るように心がけ、
“自分が良いと思うもの” を
よく知るための努力をしようと心掛けるようになりました。
その為だけに生きていける人生だったら、
なんて豊かなんだろうと思えました。
ルームサービスで客室に伺う時間は、
1分~2分程度でしょう…
ゴールドの布地のソファのある
広めのダブルベッドルーム。
そして長めのサイドボードの上には、
白いショールを掛けて。
美輪明宏さんは、純白のナイトドレス。
それから…
美輪明宏さんの周りには、
白いヴェールのような…
淡いカーテンのようなものが全体を囲んでいて、
そんな様子を肉眼で見ることは初めてでした。
一生涯、忘れられない出来事であり、
悩み多き、若い日の遠い想い出のことです。
客室に訪問中、
結局、
なにも言葉を交わすことはありませんでした。
微動だにせず…
終始まっすぐ…
僕を見続けておられた。