私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「マッチポイント」

2006-09-24 22:44:13 | 映画(ま行)
2005年度作品。イギリス映画。
富豪の娘と結婚し、イギリス上流社会の仲間入りを果たした元テニスプレイヤー、クリス。しかしアメリカ出身の女優の卵と出会い彼女との関係にのめりこんでいく。
監督は「アニーホール」などのウディ・アレン。
出演は「ベルベット・ゴールドマイン」、「M:i:III」のジョナサン・リース・メイヤーズ。「ロスト・イン・トランスレーション」などのスカーレット・ヨハンソン。


内容自体はオーソドックスである。
結婚によって地位と名誉をつかみかけている男が、浮気相手にのめりこんでいくことで人生の危機に直面していく。浮気を扱った恋愛映画によく見られるパターンだ。そのため物語自体は途中まで概ね予想の範囲内で進んでいく。

そうなると普通、映画そのものが退屈になっていくものなのだが、本作ではまったく物語から興味がそがれることがなかった。それは単純に見せ方が上手いからだと思う。
物語の構造はオーソドックスなものの、プロットの中にきちんと緊張感を張り巡らせている点が秀逸だ。しかもそれをピーンと張りつめたかと思うと、所々で緩めたりと、とにかく緩急の付け方はすさまじく上手い。退屈と感じる余裕など微塵もなかった。
しかもその緩急織り交ぜた緊張感を、最後まで持続しているからすばらしい。その手腕は鮮やかと言うほかない。

さて本作のメインはなんと言ってもラストである。
この物語はオーソドックスにもっていきながら、ラストで見事安直な展開に落ち着くことを拒否している。そしてそのラストは冒頭のテニスシーンにおける独白、作中で何度となく言及される運という点、「罪と罰」という観点に収束していく。
そのテーマ性のとらえ方とフォーカスの仕方はただただ上手い。さすがベテラン監督である。

しかしこれを見て、人生に落ちている運というものについて複雑な感慨を抱いた。運というか偶然というものは本当に人生を左右する。そう考えると若干というかかなり恐ろしいものを感じた。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

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