小鳩君と小山内さんは恋愛関係にも依存関係にもない、互恵関係にある高校一年。小市民を目指し、慎ましやかな暮らしを目指す二人だが、次々と起こる奇妙な事件の謎解きをしていくはめに。
ライトノベル風の軽やかタッチで、ミステリを描く米澤穂信のシリーズ第1弾。
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
『さよなら妖精』が個人的にはツボだったので、軽く読めそうな本作も手にとってみた。
ライトノベル的世界観でミステリを描く(らしい)作者の手腕が存分に生かされている。
本作は日常の謎、という、いわゆる北村薫につながる系譜の作品だ。語られる謎は小さなものだが、それをコミカルなタッチで描いており、ところどころくすりとさせられ飽きさせない。
キャラ造形もうまい。特に小山内さんのキャラは個人的にははまってしまった。おとなしそうで、それでいて裏にどす黒いものをはらんでいる感じが最高にいい。そして小鳩くんとのふたりの適度な距離感が心地よい一品である。
ラストの謎解きはなにか煙に巻かれたような強引な感じがして、幾分ひっかかりを覚える。それにパンチが弱いため、地味な印象を受ける。
うまいし、キャラもよく、読みやすい文章もいいだけにそのあたりが残念であったが、少なくとも読んでいる間は幸せな時間をすごすことができた。
評価:★★★(満点は★★★★★)