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四谷荒木町とおじいちゃん

明治から昭和のなかほどにかけて、花街三業地として栄えた、四谷荒木町。
生まれ育った町である。

今でも、裏道は、路地があり、坂があり、石畳があり、まるで映画のセットの
ような雰囲気のある町だ。小路には猫がたくさん住んでおり、昼間などは、
石畳で毛づくろいなどしている。
夜は、小さな小料理店やバーなどが、味わいのあるネオンをつける。

新宿と銀座の間にあって、またそのどちらにもない独特の雰囲気を持った、
大人の町。

大通りは、この十数年でずいぶん様変わりしてしまったけれど、この荒木町
の裏路地、店の名前は変わっても、路地のあちこちは、昔と何も変わらない。
その変わらない場所を探して歩く。

四谷で石屋をしていた私の祖父が作った石畳や石垣、石の階段などが、
未だに、その形を残していたいたりする。
祖父がまだそんな仕事をしていた時から、すでに30年近い月日が流れて
いるのに。

小学生の頃、墓石を彫る仕事のほかに、そうやって町のあちこちで仕事を
していた祖父と一緒に居るのが好きだった。その仕事を見ているのが好き
だった。祖父のセメントにまみれたごつい手、セメントの匂い、石を彫ったり、
セメントを塗ったり、カンナを使ったりする、器用な手さばき。
未だに目にやきついているし、それを見ているのが大好きだった気持ちも
覚えている。

荒木町がこのままで、この石畳そのままで在るうちは、私の大事なものも
まだそこにずっとあるような気がして、安心する。

おじいちゃんに会いたいな。
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