platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

回転ドアと四門出遊

2006-01-13 | グランドホテル ザ ミュージカル
また歌舞伎の話からでごめんなさいよ。(口調まで歌舞伎調。かぶれやすい)

 松竹座・昼の部の仁左衛門・玉三郎の『十六夜清心(いざよいせいしん)』、僧侶・清心が遊女・十六夜に夢中になり追放され、心中しても死に切れず、泥棒になり・・・という話なんですが、立場は違っても、高貴な存在である男性が泥棒に転落する、という設定、『グランドホテル』とも共通してます。また、もう一つの演目、『源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)』というのは芝居の半分くらいが切りあいのすさまじい演目で、仏倒しと呼ばれる大技(襖を使ってお立ち台(?)をつくるのです)をはじめとして、背景の襖を一気に外して奥行きの広がりをパッと見せたり、迫真の階段落ちがあったり、あの手この手で「死にゆく様」を表現する、歌舞伎演出のさまざまな手法が堪能できる演目でした。

 ピストルが登場してから、芝居のなかでの殺人も随分変わったのだろうと思います。「切り合い」のような劇的・時間的なひろがりのなかで描くものではなくなり、運命を一転させる一瞬の惨事というかたちが増えたのではないでしょうか。でも、『グランドホテル』の"Roses at the station"は、銃声の鳴り響く一瞬をスローモーションで見せてくれるような曲で、人が死ぬ、その瞬間に頭の中を走馬灯のようにめぐる想いを語りかけてくる気がします。私はミュージカルに疎いので他にもそんな作品はたくさんあるのかもしれませんが・・・。

 いろいろな方のこの作品への想いを読んでいるうちに、この作品には「生老病死」が描かれていることに気がつきました。エリックに子どもが生まれ、グルーシンスカヤは老いにおびえ、オットーは不治の病にかかり、男爵は死に・・・。ヴィッキー・バウムが仏教者だったとはとても思えませんが、この作品の力は文化の違いを超えて人間の普遍的な姿を見つめ、的確に切り取ったところにあるのかもしれません。出家するとまではいかないけれど、こういう作品が愛される日本って捨てたものじゃないですよね。僧侶が盗みをする芝居を見続けるところも。


最新の画像もっと見る