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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

形のないダンスに胸躍らせて

2006-01-11 | グランドホテル ザ ミュージカル
あちこちで覗かせていただいている『グランドホテル』評、肯定的なものにも否定的なものにも、作品そのものへの観客の愛着と期待を感じます。ヒーローとヒロインを頂点としない群像劇は、混沌とした現代の感覚によくあう、ということなのかもしれません。実際の人生でそうであるように、一人一人が物語の主役である、それを舞台にのせる・・・イメージとしてはミケランジェロの『最後の審判』の20世紀版のようなものが頭に浮かんでいます。群舞が成功すればどんなに素晴らしいものになるか、トミー・チューン版をご覧になった方の気持ち、想像できますし、羨ましいです。

 今回のウォルフォード版は、そのヒット作とは違うものを、ということで創られているせいなのか、いわゆるダンスシーンは少ないようですね。青山ファンにとっては残念ですが(青山さんが踊る姿はホントにかっこいいですからね~)、優れたダンサーは、「ダンス」という形を外しても、全ての立ち居振る舞いが形のないダンスであるような演技を見せてくれるので、今回はそれを楽しみたいなと思っています(あゆあゆさんの話しておられた「カラス」、ずっと気になってます♪)。

 例えば「ボレロ」の記事で書いた、完璧な技術の持ち主であるギエムも、近年では演劇性の高い、マイムのような作品を多く踊っていますし、ロシアやフランスを代表するようなベテランダンサー達も、跳躍や回転のない、シェークスピアを扱った作品を上演しています。また、ロンドン版『グランドホテル』を振付けた元英ロイヤルバレエ団のアダム・クーパーは、ミュージカルにとどまらず、最近はストレート・プレイにも出演しています。長い鍛錬によって体の全ての筋肉、関節をコントロールする力をつけた人たちが、爪先から指の一本にいたるまでフルに駆使して見せる「表現」、それが無数の言葉を織り込むようにして披露されると、何倍速という速さで物語が展開されるような気がするのです。私はダンスファンで、ダンサーの技術を見て驚嘆するのもとても好きで楽しいのですが、それ以上に、一挙手一投足が語りかけてくる「ことば」に胸をうたれます。ベルリンの豪華ホテルのベルボーイもきっと言語を介さない台詞をたくさん話しているに違いありません。

 ミュージカルが好きな方は、こんな見方はなさらないのかもしれません。ただ、あれこれ批評を読んだうえでの想像でしかありませんが、トミー・チューン版がお好きな方なら、きっとダンスもお好きだと思います。「言語」を介さない台詞、横の変なダンス好きが薦めているな、と思っていただけたら嬉しいです。 


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