platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

All Shook Up/好きにならずにいられない

2007-10-30 | ALL SHOOK UP
 ミュージカル『All Shook Up』のサントラ、誰でも「あら? これどこかで聞いたような・・・」という曲があるのではないでしょうか。勿論プレスリーのヒット曲ばかりなので、なにかと耳にする機会が多いのもありますが、意外な曲がカバーされていて、すぐには気付かなくても知っている曲だったりします。
 例えば、前にも取上げた"Love Me Tender"はアメリカ民謡の"Aura Lee/オーラリー"の歌詞を変えたものです。サントラの女声をきいていると、学校の音楽の時間に歌ったのを思い出しましたが、皆さんいかがですか?
 また、"Can't Help Falling in Love/好きにならずにいられない"はなんと18世紀のフランス歌曲"Plaisir d'Amour/愛の喜び"をカバーしたもの。ソプラノ歌手のキャスリーン・バトルが歌う繊細な旋律が記憶に残っていますが、BW版『All Shook Up』でもどちらかというと女声がメインですね。もともとは失恋した男性の歌ですので、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーンなんかも歌っているこの曲、あらためてプレスリーの線の太い声で聞くと、なるほど感があります。日本版はどんなバランスになるんでしょうか。
 歌詞のほうは、プレスリーにそんな失恋ソングは似合わないということなのか、「これから恋に落ちるところ」に変更されて、映画『ブルー・ハワイ』(61)の挿入歌になりました。ただ、ファンの方のサイトめぐりをすると、この曲はライブのほうが断然いいようですね。クラシックを堂々と歌い上げるプレスリーは、観客にとってまさに「好きにならずにいられない」存在だったようです。
 さて『All Shook Up』の稽古が始まって、気もそぞろな毎日ですが、思えば私も5年前『Shinla』で舞台の青山航士さんを見て以来、毎回「これから」なトキメキを味わっています。いや~ホントにワクワクする~、日頃おさえてるけど、こういうフレーズ聞くとやっぱりファンモード全開になります

All Shook Up/ニューヨークのブルースエードシューズ

2007-10-29 | ALL SHOOK UP
 ミュージカル"All Shook Up"の設定となる「55年夏」が終わったころ、プレスリーは大手レコード会社RCAと契約を結びます。BW版サントラに収録されている"Blue Suede Shoes"は、シングル"Heartbreak Hotel"に続いてRCAから初めて出したアルバム"Elvis Presley"の記念すべき第一曲目。この曲は56年1月から2月にかけてニューヨークのスタジオで録音されたものなのだそうです。
 「なにをしたっていいけれど
  俺のブルースエードシューズに触れるんじゃないぞ」
 いろいろなインタビューを読んでいると、個人的に親しかった人の回想には決まって、エルヴィスにはとても内省的な面があり、自分が誰なのか、自分がどこへ行こうとしているのかを常に意識していた、というような話が出てきます。
 「ひとつには金のため/二つにはショーのため」と歌い始まるこの曲は、自分の音楽が巨大ビジネスのなかに組み込まれていく時期のエルヴィスにとって、アイデンティティを宣言する曲だったかもしれません。
 "All Shook Up"の舞台であるアメリカ中部に強い愛着のあったエルヴィスは、大スターになってからもニューヨークでは「自分はさほど受け入れられていない」と感じていたそうです。実際にはマディソン・スクエア・ガーデンのコンサートは連日満員で大人気だったのですが、スポーツでいう「アウェー」のような感覚だったのでしょうか。後、頻繁に使用することとなるナッシュビルのスタジオではなく、そのアウェーの大都会・ニューヨークで録音されたという彼の歌声には、まるで縄張りを広げていく若い獣のような勢いと獰猛さを感じます。
 ・・・そう思うとBW版サントラは、やはりNYタイムズ紙のレビューのいうとおり、少しお行儀よく洗練されすぎているというか、若き日のエルヴィスの生身と殺気を感じさせる「うた」とは異質な仕上がりですね。ミュージカルにはストーリーの展開もあるので、一概にどちらがいい、とはいえないけれど、デビッド・スワン版は一体どんな仕上がりになるのでしょうか。50年以上前に、アメリカの青年がドキドキしながらエルヴィスのアルバムをプレイヤーに乗せたとき最初に聞こえてきた曲、「ブルースエードシューズ」。その衝撃、感じてみたいです~

All Shook Up/ロックとミュージカルといえば・・・

2007-10-27 | ALL SHOOK UP
 ロックとミュージカル、と聞くと、青山航士ファンはやっぱり今年の春の『TOMMY』を思い出します。『ALL SHOOK UP』関連の記事をあれこれ読んでいるうちに、今年10月22日に開催された"Rockers on Broadway"の記事が目に留まりました。収益金をエイズ治療と研究のために寄付するこのコンサート、93年のBW版"Tommy"上演中に企画されたもので、今年は一晩だけ復活したということです。"Tommy"の作者、ピート・タウンゼントはミュージカルの俳優達にもコンサートのようにロックバンドと歌い、舞台ぎりぎりの生の感触を味わう機会を提供したかったといいますが、BW版"All Shook Up"からはアンサンブルとして出演したJohn Eric Parkerが参加していますね。
 こういう記事を読むと、気持ちは盛り上がってくるんですが、実はひとつ気になっている事が・・・。これは坂本昌行さんファンの方に是非聞いていただきたいのですが、『TOMMY』のとき、客席に「どう反応するべきなのか」という緊張みたいなものがあり、演奏されているのはロックなんだけど、客席はミュージカルのマナーに沿って静かに聴いている方が多かったんです。公演回数が重なるにつれて、客席もリラックスしてきたんですが、「静かに見たい(聴きたい)」「他の人に迷惑をかけない」派と「コンサートのノリで楽しみたい」派の溝はなかなか埋まりませんでした。素晴らしい声を聞かせてくれた主役の中川晃教さんはコンサート的に見て欲しかったというような発言もされていたのですが、他の人に気を遣ってじっとしていた方も多かったようです。
 プレスリーの曲は『TOMMY』よりもノリやすいし、『ボーイフロムオズ』のあの暖かい客席を思うとそんなことは考えなくていいのかもしれませんが、舞台の上の人たちが従来のミュージカルとは違うことをしているのだから、客席もそれに反応して新しいマナーを生むくらいのリラックスした客席になると楽しいんじゃないかな、と思います。ちなみに『TOMMY』のときは一幕終わりあたりでもスタンディングあり、に落ち着いたようでした。坂本さんファンの方も、チャドの挑発にどうぞ遠慮なく乗っちゃってくださいね~。

All Shook Up/All Shook Upコーヒーでひと休み

2007-10-24 | ALL SHOOK UP
 初日まであとひと月半あるのに「『ALL SHOOK UP』歌稽古開始!」に浮かれすぎる自分にブレーキをかけたいので今日は(も?)脱線します。
 アメリカにいたときも、街のいたるところでエルヴィス・グッズを見かけましたが、当然のようにアメリカ人にとっての「お茶」、コーヒーもありました~。メンフィス特産品のようですが、まさか専門メーカーまであるとは・・・その名もずばりElviscoffee。なんて分りやすいんでしょう。左のインデックスバーの"Signature Coffees"をクリックすると、曲名の付いたコーヒーがいっぱい! "All Shook Up"コーヒーは現在トップに表示されていますね。
 また同じインデックスバーの"ShopElvis com."を見るとあまりのグッズの豊富さにびっくりしますが、やっぱりウケちゃうのは"Costumes"です~。あの白のジャンプスーツ+マント、一般人が着るとなんともいえずお茶目な姿。海外通販もあるので忘年会で吹っ切れたい方なんか今から購入しておくといいかもしれません。
 『All Shook Up』チラシの坂本さんもファンならずとも「ぉお」と思うカッコよさでしたが、あの衣装が似合うエルヴィスって、やっぱりハンサムでスタイルがいいんだわ、としみじみ思いました。 

All Shook Up/Palace Theaterより青山劇場!

2007-10-22 | ALL SHOOK UP
 青山航士さんのブログでついに『ALL SHOOK UP』の歌稽古が始まったという記事が とうとうそんな季節になりました
 『ALL SHOOK UP』、ブロードウェイではキャパシティ1740の名門パレス・シアターで上演されました。その際のニューヨークタイムズのレビューを読んでみると、もう少し小さい劇場で、かきわりの背景なんかを使って若い役者で見たら(いい意味で)もっと違ったものになったのではないか、なんて書かれていますね。彼に言わせるとパレス・シアターはちょっとこの作品にそぐわなかったようです。
 また、プレスリー=チャドとすると20才(1955年)、という設定になりますが、BW版チャドはどっちかというとラスベガス時代のプレスリーにイメージが近いような・・・これはアンサンブルにもいえることで、皆さん恰幅よくて、貫禄もありますね~。あれだけのコーラスを歌い上げるためと思えば納得なのですが、「若さがあふれるような」という感じではなかったようです。
 日本で翻訳ミュージカルをやる、というと本場に比べてなにかと欠点を上げられがちですが、こんな記事を読むと、アジア人の若さや、渋谷の雑踏の向こうに見えてくる青山劇場という場所が、今回はいいように作用する気がします。NYタイムズの記者氏は、当時のティーンエイジャーの親達が心配したようなプレスリーのセックス・アピールが感じられないのも不満なようですが、これはもう坂本昌行さんのファンの方に盛り上げて、どこまでも乗せていただきたいですね
 全体的に辛口な批評のなかでも「巧妙」と評されている音楽は、ステファン・オルムスがゴスペルをベースにアレンジしなおしたといいますが、いかにも難しそうですね。難しい曲を小奇麗にではなくパワフルにカッコよく決める、って大変そうだけど、渋谷の街が踊りだすような舞台になるといいな~~。

All Shook Up/プレスリーに会いに

2007-10-20 | ALL SHOOK UP
 前にも少し書きましたが、プレスリーの邸宅、グレースランドには今も世界中からファンが集まり、命日の8月16日には広い敷地一杯にファンの捧げたキャンドルの火がゆれるそうです。プレスリーは生前、彼を一目見ようとするファンにいつも追いかけられていたそうですが、特大(?)ファンとしてはやはりビートルズの名前が挙がるんじゃないでしょうか。
 ジョン・レノンはエルヴィスを知って人生が変わったと話したともいわれ、他のメンバーもプレスリー・ファン。マネージャー同士が知り合いで連絡をとり、65年のビートルズ3度目のアメリカ公演の際、プレスリーのビバリーヒルズの邸宅でこの超大物スター同士が対面したそうです。彼らのファンが一斉に追っかけたりしたら地震が起きるんじゃないか、と思わず心配になりますが、実際その時の混乱は凄かったようです。「極秘だ」とスタッフには口止めしながら、パーカー大佐は情報をリークして騒動を大きくし、話題作りに最大限活用したと語っている記事も目にしました。
 ・・・で、その様子なんですが、例えば彼らが一緒に演奏したのか、ということ一つとっても、読めば読むほど語る人によって食い違いがあり、芥川龍之介の『藪の中』ではないけれど、皆それぞれにとってのプレスリー、あるいはビートルズを語っているような気がしてきます。大スターといわれる人はファンの一人一人に「自分のために歌っている(演じている、踊っている)」と錯覚させるほどの強い魅力があるといいますが、その場にいたという人たちの談話も興奮未だ冷めやらず、という感じで、ちょっと素面ではないような
 『All Shook Up』は、若き日のプレスリー/チャドが小さな町の人々を変えてしまう瞬間を切り取った舞台のようですが、その後アメリカだけでなく、実際に遠いイギリスのリヴァプールの青年の人生も変えたのだと思うと、人の想いのうねりのようなものを感じてしまいます。そんな何十万、何百万という想いを一身に受けたプレスリーが42才でこの世を去ったのも、無理のないことだったのかもしれません。

追記:先日、総閲覧数が24万pvを超えました。拙文、読んで頂いて本当に有難うございます。

All Shook Up/A Little Less Conversation

2007-10-17 | ALL SHOOK UP
 『ALL SHOOK UP』サントラの"A Little Less Conversation"、これも女性コーラスがカッコイイ~~。これは68年の映画『バギー万才』(原題"Live a Little, Love a Little")の挿入歌の一つ、エルヴィスがコンサート活動に復帰する直前の作品ですね。
 この映画で憧れの人・エルヴィスと共演した女優セレステ・ヤーナルは、インタビューで彼の紳士ぶりを回想していますが、やっぱり(?)彼女から見たトム・パーカー大佐は好ましい存在ではなかったようです。ただ撮影所にはあまり顔を出さず、それがエルヴィスには居心地良かったのかもしれないな、という気がします。彼女の回想ではエルヴィスはいつも閉じ込められ夜しか外出できない生活を続けていたようで、アイドルはいつの時代もどこの国でも大変ですね。
 そして彼女のインタビューのなかで、キング牧師暗殺に対するエルヴィスの反応も語られていました。(なんなの唐突に、という方はこちらの記事を読んで頂けましたら幸いです)撮影中はいつも一緒にランチを食べていた彼女がエルヴィスの楽屋に行くと、ちょうどその葬儀の様子がテレビで流れていたそうです。エルヴィスはキング牧師が暗殺されたことにひどく動揺していて、彼女の腕の中で泣いたといいます。
 実はこのインタビューを読む前に、50年代半ば、エルヴィスがテレビで黒人差別発言をしたことがある、という複数の記事を目にし戸惑っていたのですが、ヤーナルの話でなにか腑に落ちるものがありました。
 言ったかどうか、ということは私には確かめられませんが「黒人文化の影響下にある」ということがアメリカ社会でキャリアを築くには不利だった時代、そういう発言を周りに勧められたり、周りが仕組んでも不思議ではありません。別のインタビューでは、自分の選んだ黒人女性コーラスグループを侮辱した招聘先に「彼女達を出演させないというなら僕も行かない」と言ったとも語られている彼、そのテレビでの発言だけがあまりにも異質で、浮き上がっているのです。
 33才の世界の大スターが声を上げて泣くほどの悲しみは、追悼の念だけから生まれたものではないと思えてなりません。もちろん、彼の心の中を知る由はありませんが、黒人教会でゴスペルに聞き入っていた少年のことをどうしても忘れることができないのです。

All Shook Up/日本公演アンサンブル

2007-10-15 | ALL SHOOK UP
 桑原麻希さんのブログで『All Shook Up』のフルキャストが発表されていました。メインの方はあちこちですでにお名前を拝見していますので、アンサンブルの皆さんをここでご紹介・・・といってもいつものごとく拙ブログの「不完全版」です。ネットで調べただけの付け焼刃で、不備・失礼があるかとは思いますが、どうぞご容赦くださいませ。訂正箇所・最新情報などのお知らせ、大大大歓迎ですので、皆様どうぞ宜しくお願いします

(敬称略)
青山航士 (あおやまこうじ)  『TOMMY』(07) 『ビューティフルゲーム』(06)『ウエストサイドストーリー』(04/05)
石川 剛 (いしかわつよし)  『パウロ』(06) 『クラウディア』(05)
織田和馬 (おだかずま)  『ミス・サイゴン』(04) 『ニューヨーカーズ』(03)
折井洋人 (おりいひろと)  『ミーアンドマイガール』(06 ) <東京ディズニーシー ブロードウェイミュージックシアター>(01-06)
坂元宏旬 (さかもとひろみつ)  『ビューティフル・ゲーム』(06) 『君に捧げる歌』(06) 
下道純一 (したみちじゅんいち) 『ハイスクールミュージカル』(07) 『ウエストサイドストーリー』(04/05)
丹宗立峰  (たんそうたつみね)  『レ・ミゼラブル』(07) 『翼を下さい』(06)
橋本好弘  (はしもとよしひろ) 『DAMN YANKEES』(07) 『十二夜』(06)

浅野実奈子 (あさのみなこ)  『レ・ミゼラブル』(07) 『ビューティフルゲーム』(06)
歌山ゆき  (かやまゆき)   『レ・ミゼラブル』(06・「香山ゆき」さんのお名前で出演)  <シャンソンバー蛙たち>(07)
桑原麻希  (くわはらまき)  『レ・ミゼラブル』(05) 『Mama Loves MAMBO』(04)
福田えり   (ふくだえり)  『翼を広げた女神たち』(07)


10月30日 付記: 今日までに発見された間違いはなんと4箇所・・・。気付き次第、訂正しておりますが、本当に申し訳ありません。
11月8日 付記: 丹宗立峰さんのお名前の読みを間違えて記載していましたのを、ご友人の方から教えていただき、訂正致しました。失礼、心よりお詫び申し上げます。また、情報をお寄せいただきましたこと、まことに有難うございました。


All Shook Up/ハウンド・ドッグ

2007-10-14 | ALL SHOOK UP
 昔ストーンズフリークだった頃、ストーンズがプレスリー追悼のため歌ったと知り、レンタルして聞いた(当時もオタク体質)覚えのあるのがこの「ハウンド・ドッグ」です。
 エルヴィスのオリジナルではなくR&Bナンバーのカバーですが、かなり原曲とは違う仕上がりなのだそうで、「これぞロックンロール」という一曲ですよね。
 R&Bのけだるい感じではなく、激しいドラムに合わせてこの曲を歌う姿が56年のテレビショーで流れた事がきっかけで、エルヴィス・プレスリーは全米中で良くも悪くも話題の人となったのです。熱狂的な支持と同じくらいに批判もあび、青年層のあらゆる非行が彼の影響のようにいわれたこともあるようです。まあ、60年代終わりになってもザ・フーの「アシッド・クイーン」を麻薬奨励ソングときめつけていた副大統領がいたくらいですから、50年代半ばなら推して知るべし、でしょうか。
 そんな大人たちの偏見とは裏腹に、エルヴィスの仕事振りを語るスタッフの回想からは、アーティストとしての良心がひしひしと感じられます。冷房もなく、防音のため締め切った部屋で、まわりが音を上げても彼は変わらぬ集中力で33回もこの曲を録音、それが終わると今度はその一つ一つをじっくり聞いて最良のテイクを選び出す・・・という調子だったそうです。トム・パーカー大佐とエルヴィスの信頼関係について、まだ私にはよく分らないことが多いのですが、こういうことに時間をかけることを認めていたからかもしれないですね。
 以前ふれたワイントローブも、ビジネスに関してエルヴィスはまったくノータッチだったと語っていますが、アーティストして共演ミュージシャンの選択については譲らなかったそうです。当時はまだ「興行師」が、人材育成や著作権もなにもなしくずしに、ひたすら利益を追求することが多かったことを思うと、エルヴィスは自分が何をするべきなのか、よく知っていたということでしょう。歌詞は黒人ミュージシャンによる、白人への揶揄とも言われているそうですが、私にはなにか、自分に群がる大人たちへ21才の青年エルヴィスが歌い放っているように聞こえます。
 

All Shook Up/Love Me Tender~何やってんだー

2007-10-11 | ALL SHOOK UP
 "Love Me Tender"、これもプレスリーといえば、の代表作ですが、彼はこの曲がそんなに好きではなかったらしいです。代表作=好きな作品という訳ではないのは、色々なアーティストのインタビューを読んでいるとよく感じることですが、この初出演映画の劇中歌も、今こうして少しだけ彼の音楽的バックグラウンドを知ると、確かにウケを狙った選曲かな、と思えます
 それでもこの曲がプレスリーの曲として世界中の人々に愛されてきた事実に変わりはなく、数え切れないほどのアーティストがこの曲をカバーしています。なかでも当たり前のカバーを超えて、忌野清志郎さんは"Tender"に引っ掛けた「何やってんだー」という反核ソングを全曲カバーバージョンのアルバム『COVERS』に収録しています。あまりに強烈なメッセージに所属レコード会社・東芝EMIは発売を中止しましたが、その後キティレコードからリリースされたこのアルバムはオリコン初登場1位を獲得する大ヒットになり、『Love Me Tender/何やってんだー』もシングルカットされました。
 この曲は、青山航士さんファンには『TOMMY』のアンコール曲としておなじみの"Summertime Blues"と一緒に88年の広島ピースコンサートで演奏されています。(そういや、『TOMMY』での青山さんの台詞に「何やってんだー!」ってありましたよね。)
天国のエルヴィスの「愛だぜ、ベイベー」という声、聞こえてきたでしょうか。

All Shook Up/ エド・サリヴァン・ショー

2007-10-10 | ALL SHOOK UP
 ミュージカルのタイトルにもなっているエルヴィス・プレスリーの"All Shook Up"は1957年4月13日から5月27日まで全米チャートの第一位を獲得しました。
 ビリー・ジョエル、ポール・マッカートニー、ロッド・スチュワートとロン・ウッド参加のジェフ・ベック・グループ他、たくさんのスターがカバーしているのも納得のカッコよさです。
 この年の1月、エルヴィスは、エド・サリヴァンの"Toast of the Town Show"に3回めにして最後の出演をしています。とにかくエルヴィスというと、当時としてはあまりにもセクシーすぎ、公序良俗を犯す存在のように言われていたのが、エド・サリヴァンがこの番組内でエルヴィスを賞賛したことでぐっと好感度がアップしたそうです。当時のアメリカの視聴者に対して最も影響力があり、テレビ業界でも有力者だったといいますが、今の日本で言えばタモリさんとみのもんたさんが合体したぐらいの方だったんでしょうか。
 とはいえ、この番組の一部をエルヴィス・プレスリー公式サイトで見たところ、なんとウエストから上のショットだけ。ダンスファンとしては許せないような感覚なんですが、アメリカはもともとは敬虔な信者が宗教的迫害を逃れてたどり着いた国なので、日本で想像するよりも宗教と社会の結びつきが強い感じがあります。腰を振って歌う若い男性の姿がお茶の間(リビングか)に流れるなんてオーマイガー!という時代だったんですね。このアップばかりの画面、当時の青年層はかなりイライラして見たんじゃないでしょうか~
 その動画はエルヴィス・プレスリー公式サイトのトップページインデックスの"all about Elvis"→"1935-1957"の5ページ目で見られます。アメリカという国も、50年間でものすごく変わったんですねえ

All Shook Up/百万ドルの夢

2007-10-07 | ALL SHOOK UP
 エルヴィス・プレスリーのプロモーターをしていたジェリー・ワイントローブの2005年のインタビューを見つけましたが、読んでいるとまさに「アメリカン・ドリーム」! 事実は小説より奇なり、といいますが、これ実話? といいたくなるほどの内容です。
 1965年にマネージメントⅢという小さな会社を立ち上げた彼があっという間に「大物」の仲間入りをしたのは、エルヴィスのコンサートをプロモートしたのがきっかけなのだそうです。ニューヨークに住んでいた彼はある夜、夢を見ます。自分がプロモートしたエルヴィスのコンサートの看板がマディソン・スクエア・ガーデンにかかっている夢でした。彼にはそれが天からの啓示のように思えて、その日からトム・パーカー大佐にアプローチ。当時はまだ名前も知られておらず、大佐が取り合うわけもないのに、電話をかけ続けていたら、ある日大佐が「明日11時までに百万ドル持ってくるなら」と言い出します。
 当時の百万ドルがどんな価値だったのかは想像もつきませんが、そう言われてめげるどころかジェリーはまた電話をかけまくり、出資者を探します。もうすぐタイムリミットというところで、さる大物(もちろん匿名)と話がつき、エルヴィスとの仕事で得る収益の半分を渡す、という条件でこの20代の青年は百万ドルを手にしました。
 それを持っていく先はラス・ベガスのカジノ。大佐はギャンブルに目がなく、常連客だったので百万ドル受け渡しのための待ち合わせ場所も「聞けばわかる」とだけ言ったといいます。よほど景気よく遊んでいたらしく、実際すぐ分ったそうなんですが、話しが決まるなり葉巻の味を覚えろと口に葉巻を突っ込まれたとか・・・。そのまんまハリウッド映画みたいな話ですよね~。このときアメリカの大物プロモーター、ジェリー・ワイントローブが誕生し、彼はフランク・シナトラ、ボブ・ディランといった音楽界の大スターとの仕事だけでなく、ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー出演の映画『オーシャンズ11/13』のプロデューサーとしても知られています。エルヴィス自身も「伝説」ですが、その周りの登場人物も現実離れしたエピソードの持ち主が多いですよね~。エルヴィスを追っていると、アメリカ製の神話を読んでいるような気がしてきます。
 この人もエルヴィスは礼儀正しく、金銭的にもとても綺麗ないいやつだった、と回想しています。『All Shook Up』のチャドも小さな町に幸せを運ぶキャラクターのようですが、エルヴィスはたくさんの人に百万ドルの夢を見せる、ある意味天使のような存在だったのかもしれません。

All Shook Up/トム・パーカー大佐

2007-10-04 | ALL SHOOK UP
 ・・・とタイトルを書いたものの、実はまだまだわからないことばかりです。「え? 大佐? エルヴィス・プレスリーのマネージャーが?」と思った時から色々気になって見ているんですが、奥が深いというか、かなり複雑な背景を持った人のようです。
 プレスリーが亡くなったのは1977年の8月16日ですが、その22年前、またもや「1955年」の8月15日(公式サイトより)にプレスリーとトム・パーカーは事実上の契約を結んでいます。なんと書類はなく、「握手と口約束」だったそうで、つい映画『ゴッドファーザー』の世界を想像してしまいました。彼らを良く知るスタッフによると、まるで長年連れ添った夫婦のような信頼関係で結ばれていたとか・・・。
 「大佐」の称号は、ルイジアナ州の政治家ジミー・デイビスの選挙をサポートした代償にもらったようです。最初はアメリカ生まれで、サーカスについて家出したと、いかにもウソっぽい生い立ちで押し通していたのが、あるとき訴訟沙汰になり、じつはオランダでドイツ人の家庭に生まれたということが発覚しました。プレスリーがあれほど世界の注目を集めながら、アメリカとカナダでしかツアーをしなかったのは、大佐のパスポート取得が難しかったから、ともいわれているそうです。
 アメリカは3代さかのぼれば殆どの人は外国人、というぐらいで、今も世界中からいろいろな人が寄せ集まって暮らしているのが実感できる国です。そういう意味ではアメリカを代表するスター・エルヴィスのマネージャーが、冬の長いヨーロッパの国から無一文のような状態でやって来た(らしい)ことも、いかにもアメリカ的だな、と思います。
 未知の大地で故郷をふりかえらずに働き続けた移民のパワーが、あの新しい国をあっという間に経済大国に押し上げたように、大佐のマネージメントでエルヴィスは、歴史の浅い、若い国アメリカの「キング」になりました。大佐は国籍詐称が発覚した際、オランダのテレビ局から取材を受け、そこで初めて兄弟の死を知ったそうです。そんな風に肉親の死を知る人が、アメリカにはこれまで何人いたことでしょう。 

All Shook Up/ピンクのシャツを着た男

2007-10-01 | ALL SHOOK UP
 青山航士さんがピンクのトップスを着ている写真を時折ブログで目にして「お洒落~」と喜んでしまうファンは私だけではないと思いますが、さすがプレスリーはその「お洒落~」を今から50年以上も前に決めていたそうです。
 あちこちで『All Shook Up』の設定となる50年代半ばのエルヴィスが語られているインタビュー記事を読んでいたところ、エルヴィスは、レコーディングの際、自分の気に入ったミュージシャンに直接頼みに行く事があったそうです。幾度も共演した二人のミュージシャンが、初めて会いにきたとき、あのもみあげでピンクのシャツ(そのうちの一人の回想によると、それにピンクと白のストライプのパンツと白い靴!)を着てきた、と語っています。今でこそ男性がピンクを着ることは珍しくなくなりましたが、当時そんな格好をしている男性はいなかったので、かなりビックリしたようです。(上下ピンクは今も少ないんじゃないでしょうかね~。)共演依頼のときの勝負服なのかもしれませんが、想像するだけでハッピーになってしまいそうですよね。
 現在のアメリカとは違って、腰を振って踊るエルヴィスに、教会は「悪魔の歌」の烙印を押したほどで、彼のやることなすこと全てがセンセーショナルだったわけですが、ステージを降りた彼は真面目でスタッフをよく気遣い、どんなに忙しくても感情に任せて声を荒げることもない、大変な好青年だったとか。彼と音楽を創りあげることは本当にハッピーだったという回想ばかりです。『All Shook Up』もなんだか見る人をシアワセにしてくれそうな舞台ですよね。坂本昌行さんの衣装も上下ピンクで決めちゃってはいかがでしょうか