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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

Father O'Donnellは・・・

2006-02-01 | ビューティフル・ゲーム
『ビューティフル・ゲーム』は、ロンドンの批評家協会賞を受賞しているものの、一年足らずの上演期間は興行として大成功とはいえず、またブロードウェイでも上演されていない・・・その理由としてテロリズムを真正面から扱った事があげられている批評を読みましたが、同時にアンドリュー・ロイド・ウェバー自身がブロードウェイでの上演を切望している作品でもあるそうです。自分の長い創作活動の中でもベストといえる曲がいくつかあり、若い人たちが宗教的対立に引き込まれていく状況は、作品を書いたときよりも今のほうが語るに適している、とも語っています。

 年始にテレビ放映されていた「ブロードウェイの100年」で、資金面での問題に加えて、ニューヨークという街がテロリズムによって受けた傷が語られていたことを思い出すと、彼のような大ヒットメーカーでも意のままにならないことなんだな、とアメリカのショービジネスの厳しさ、そして宗教的対立の根深さを垣間見る思いです。それをブロードウェイの、それもアイルランド系の振付・演出家で見られるのですから日本の観客はやはり幸せですね。

 前の記事で書いた、アイルランドの自由のためにハンガーストライキという形で命を捧げたIRA戦士の中に、Joe McDonnellという方がいます。『ビューティフル・ゲーム』の舞台となるベルファスト出身、妻と二人の子がありながら、’77年に14年の禁固刑を受け、’81年の5月9日からハンガーストライキに入り、その間ようやく妻子と面会がかない、7月8日に30才で亡くなった方です。『ビューティフル・ゲーム』にはFather O'Donnellという神父さんが出てきますが、("Mc"と"O'"はどちらもアイルランド名の特徴)この人も、脚本のベン・エルトンに物語の着想を与えた一人なのでしょう。

 サウンドトラックCDのケース内側には、試合のシーンからでしょうか、二人のサッカー選手の写真があります。青山さんのダンスを思い出すような躍動感溢れるポーズです。国と自由への激しい想いと、この生命の輝きがどう絡み合って舞台で描かれるのでしょうか。


2月15日付記: 前の記事で紹介した『ビューティフル・ゲーム』日本公演チラシの、「愛する妻子を残し、プロサッカー選手になる夢を叶える目前で、ハンガーストライキによって・・・」という文章は、一人の人物ではなく、ハンガーストライキで亡くなった方たちのエピソードを複合したもののようです。誤解を招くような書き方になり、申し訳ありませんでした。


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2 コメント

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2006-02-02 (あゆあゆ)
2006-02-06 12:03:55
スポーツのフォルムを青山さんのダンスに組み込んでしまうという素晴らしい試み、「おどろんぱ!」では、秀作「ピュアピュアダンス」のストンプ部分において、ファンは体験していますが、あのときは実際のバスケットボールを用いてのダンスでしたよね。今回は、サッカー、どんな感じなのでしょう。「ピュアピュア」では本物のバスケットボールをドリブルしていて、青山さんの身体の一部というか、ダンスのパートナーというか、バスケットボールがまるで生きているかのように感じられました。『ビューティフル・ゲーム』では、舞台上で実際のボールを使う演出というのはおそらく考えにくい(飽くまで勝手な想像ですが・・・)、しかし、実際のボールはなくても、きっとエネルギーの軌跡が見えるような、そんなダンスかもしれないですね~。(いつものことながら、ホントに勝手な想像。でもあのサントラCD聞いていたら、次から次へと勝手なイメージが頭の中に浮かんできてしまいます~。)



以前に読んだダンスに関する本に書いてあったことなのですけれど、観客が、動くダンサーの身体に見出す、力やエネルギー、そしてそれらの作用、いわば生命のリズムというものは、「視覚的幻影」、つまりはイリュージョンなのだそうです。しかし、この虚像にすぎない、現実にあるわけではない力こそが、舞踏を見ている観客の眼差しに生じる「芸術としての価値を持つ何か」だそうです。イリュージョンだと言われても、確かに観客である我々が感じ取ってしまうこの力は、「舞踏を見る」という独特の眼差しにおいて、出現するものということですが、青山さんには、こちらが「見るぞ!」と身構えていなくても、そういう観客の眼差しを誘い出してくれる不思議なチカラがありますよね。(世の中には、どんなにこちらが「ダンス見るぞ!」と気合いれて行ってみても、この「イリュージョン」が現れてくれないものもあるように思います・・・)『グランドホテル』では、「動」のベクトル、「静」のベクトルの両方に同じぐらいのエネルギーが詰め込まれている青山さんのダンス、あるいは身体の動きが、強烈に観客の心に刻み込まれましたが、今回も次々と未知の領域を開拓していくような青山さんが、本当にファンとして楽しみで楽しみで仕方ありません。



サントラCD、冒頭のOvertureからアイルランドのルーツ、ケルト文化を彷彿とさせるような音が響いて、郷愁と幻想の世界に誘われますね。・・・かと思うと、ロンドン原産の作品ということもあってなのか、当時のパンクロック的な音がしたり、イギリスのポップス的な音もしたり、教会音楽的な音がしたりと、ミュージカルの音楽としてとても新鮮な印象を受けました。こういう音楽と青山さんのダンスがどういう出会いをするのか、ということも非常に興味深いですね~♪



サントラCDに収められている、Let Us Love in Peaceという曲は、同時多発テロの追悼式典(2001年10月)でも、式を締めくくる歌として歌われたそうです。(ロンドン版The Beautiful Gameの公式HPに書いてありました)IRAということでは、私個人としては、随分前に見たThe Crying Gameという映画が思い出されます。こちらもアイルランド、ベルファストを舞台にした作品で、IRAの活動をハードに描きながらも、切なく哀しいラブストーリーで、最後に流れるボーイ・ジョージの同名テーマソングとともに、とても強く印象に残っています。もう一度見直してみようと思っています。



それからすっかりお礼が遅くなりましたが、早速サープについて、詳しく教えていただきまして、ありがとうございます!ギエムの公式HPの帽子被っているバリシニコフ、ホントに青山さんだ!衣裳は全然違うけれど、なんだか『グランドホテル』の「鏡の中のあの子になりたい」を思い出してしまいました~。あのシーンを思いださなくても、なんだか青山さんを彷彿とさせますね~。ジャンルの垣根を飛び越えるようなサープの作品を踊る青山さんも、いつの日にか見られたら、うれしいですよね。



1年前に教えていただいたのに、ずっと言いそびれていたのですけれど、『ホワイトナイツ』のバリシニコフの「若者と死」、素晴らしいですね~。中学生ぐらいのときに、この作品を部分的にさらりと観たことはあったのですが、冒頭のこの部分は見たことがなかったし、当時はグレゴリー・ハインズに注目して見てました・・・。DVDのジャケットのバリシニコフのポーズ写真を見たときも、「なんだか、青山さんだな~」って思ってしまったのですが、こんな私って、考えすぎでしょうかね~。フレーズとフレーズの切れ目で、エネルギーのようなものがほとばしる感じ、青山さんの放つ「閃光」に通ずるような気がする・・・、それから肘で腕を折ったときの腕のラインと指先にかけての端整さとか・・・、なんだか挙げだしたらキリがないのですけれど・・・。



『グランドホテル』の詳細レポ(???)のようなもの、2月中に、少しずつアップすることができたらいいな、と思っています。今回も私の非常に偏った個人的感想になりそうですが、あの素晴らしい作品と青山さんのことは、再演への熱き期待も込め、是非記録しておきたいと思っております・・・。ついつい長くなりましたが、今夜はこのへんで失礼します・・・。

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これからも宜しくお願いします (へーま)
2006-02-06 12:05:34


これからも宜しくお願いします (へーま) 2006-02-02 23:15:00



早速こちらにもコピーさせてもらいました、いつもコメント有難うございます。

青山さんって本当に表現するために生まれてきたというか、どんなことでも自分のツールにして、艶やかに見せてしまうような感じですよね。今度の「サッカー」も今から目が空想の世界を泳ぎっぱなしです。A.L.ウェバーの曲をどう表現するのか、期待で一杯です。



またとても「見せ方」を工夫されるというか、「ピュアピュアダンス」のボールや箒、『グランドホテル』での三つの輪なんかの綺麗な扱い、また「マネトリックス パフォーマンス」のすその長いコート、『グランドホテル』の燕尾服の「踊りにくさ」を「美しさ」に転化してしまうところ、本当に素晴らしいです。精神的にも柔軟な方なんだろうな、とよく思います。





『ビューティフル・ゲーム』については、またゆっくりと開幕まで心の準備をするとして(落ち着くように自分に言い聞かせてる)、御礼なんていって頂くと恐縮です~。アメリカのダンスは私も青山さんで開眼したというか、それまでは一通り見ていただけですし、なにより「百聞は一見にしかず」、「なんかそんなこと言ってたのがいたわね」ぐらいに思ってください。



バリシニコフはバレエファンにとっては一番「~みたい」とたとえちゃいけないというか、あれだけの天才ですから、他の誰かと「並び称する」というのは皆がさけているような人なんですけど、私は青山さんのダンスを見ていると本当によくバリシニコフを思い出します。

ファンだから、といわれればそれまでですが、たとえばバリシニコフが少年の頃、波に向かってふざけている写真があるんですが、それがまるでダンスの一シーンのように綺麗なポーズになっているんです。この人の「動き」そのものが天から与えられた才能に包まれているんだな、と思わずにはいられない写真です。

で、青山さんのダンスにも、そうした天然の美しさをよく感じます。古い曲だけど「からだはがっきだ」のイントロ部分なんて、あれは他の人がどんなに練習して真似したってああは踊れないと思います。話題に出たついでに「ピュアピュア」でボールをつきながら脚を開脚して飛ぶところなんかもハッとしました。

もちろん「違う点」を幾らでもあげることはできますが、そのダンスを見て「うけとるもの」が、私にとっては同質なんです。結構長く、こういう人を探していました。

生きる時代も国も違うけれど、ダンスファンでない人も夢中にさせるところも同じですしね。青山航士ファン、見る目ありますよ、絶対!



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