platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

神崎順さん公式サイト"Jewel"様より『テネシーワルツ』再演詳細

2006-04-30 | テネシーワルツ ~江利チエミ物語~
 『テネシーワルツ ~江利チエミ物語~』で夢一杯のレビューシーンを華やかに盛り上げてくださった神崎順さんの公式サイト"Jewel"管理人ぼのさんより、2006年の『テネシーワルツ』再演情報をメールで頂きました。午前4時の速報をこんな時間にアップしている私・・・「爪の垢でも煎じて」という気持ちになります。本当にいつもお世話になりっぱなしで、有難うございます。残念ながら東京以西の公演日程・・・他地方の方も、地域の文化事業団体などに上演希望の声をあげればさらに次もあるかも?
 ミュージカル初心者の私は『ウエストサイドストーリー』に続いてこの『テネシーワルツ』で島田歌穂さんの歌をたっぷり味わいました。WSSのマリア役は、声域が島田さん本来のものとは違うということで、もちろん別格の上手さではありましたが、声域だけでなく声の質もこの『テネシーワルツ』のほうがあっているような気がします。島田さんの魅力溢れる生の声をたくさんの方に聞いていただきたいです。
 青山航士さんが出演されるかは未定ですが、往時を知る方には懐かしい名曲が次々と披露される素敵な作品なので、母の日のプレゼントにこの公演のチケット目録、なんていいかもしれません。
 
神崎順さん公式Web Site "Jewel"
トップの[ENTER]で開くページ上部インデックスの[Schedule]をクリックしてご覧下さい。ぼのさんのとっても見やすいレイアウトがグッジョブです~、素晴らしい!

 青山オタクとしては、あの「エル・クンバンチェロ」の青山さんが眼に浮かびます。なんであんなに罪作りなカッコいいことするんでしょう。

あやさん、初めまして!

2006-04-28 | ビューティフル・ゲーム
 昨日の「『ビューティフルゲーム』千穐楽も終わり・・・」に櫻井翔さんファンのあやさんよりコメントいただきました。私がこのブログを始めたのは、舞台で青山航士さんのダンスに眼を留めた方に出会いたかったからなので、こんなコメント頂くと、とっても嬉しくてはしゃいでおります。本当に有難うございました
 私も青山さんが出演されるということで『ウエストサイドストーリー/夏・冬版』『ボーイ フロム オズ』『ビューティフルゲーム』と、4本のフジTV+ジャニーズの舞台を見たことになりますが、作品のセレクトがいいですよね。それから例の盗み聞きによると観客の関心が、歌とダンスのどちらかというとダンスにあるのも私には嬉しいです。
 今月号の「ダンスマガジン」の連載<ダンスと私>には、元アイドル歌手、今は劇団四季でベテランとして活躍中の荒川務さんがご登場です。また今年1月の『グランドホテル』で、舞台を引き締める素晴らしい演技を見せてくれた藤木孝さんにもアイドル時代があったといいます。演じる側も見る側も、人は変わっていくものだし、舞台ってテレビよりもその変化が実感しやすいような・・・。櫻井さんはちゃんと周りの見える方のようなので、将来、ジャニーズ事務所のミュージカル部門の顧問なんかになってくれたら面白いんじゃないかと思ってるんですよ。(その時の演出・振付はもちろん青山さんで)
 『うたっておどろんぱ! プラス』は今年度から残念ながら5分番組になってしまったのですが、明日土曜日午後5時40分~午後5時45分の放映分では「三忍者」が見ごたえあると思います。是非ご覧になってください~。この番組の青山さんは、歌と踊りのお兄さんとしてまた違った面を見せてくれます。それと・・・『ビューティフルゲーム』のアンサンブル、野島直人さんのブログ(お名前でグーグル検索するとすぐ表示されます)、今日は櫻井さんについての記事でした。ご存知かな、とは思いましたがお知らせまでまたいらして下さいね! 

『ビューティフルゲーム』千穐楽も終わり・・・

2006-04-27 | ビューティフル・ゲーム
 まだ興奮冷めやらない、とはいえ、昨日よりは多少冷静になりました(・・・と自分では思います)。
 今回の大阪公演、照明が良かったです。スタッフの方が調節なさったのか、あるいはNHKホールは録画を前提としているせいでしょうか、殆どハレーションが起きていませんでした。
 多少のハレーションはお芝居だとそんなに気にならないんですが、ダンスだと、立体感は抑えられる、どうしても皮膚の露出したところに起きやすいので手・指の表情もなくなる、プロポーションも変わって見える、とす~ごく嫌なんですね。青山劇場で見たときも、パーティー/"The Craic"では腕がかなり膨張して見える感じでした。『ボーイ フロム オズ』の時も同じで、ハレーションは青山劇場に限った事ではないのですが、少し不満の残ったところです。その点NHK大阪ホールは輪郭の鮮明な照明だったので、青山さん達のシャープでセクシーな動きが際立って、また惚れ直しダンスの照明はいつもこうであってほしい! 東京でご覧になった方、青山さん「もっと」カッコ良かったですよ~。
 メインキャストではダニエル役の黒田勇樹さんの演技が、何気ないようでキャラクターがじんわりと伝わってきて魅力的だなと思いました。ジョンの赤ちゃんを抱く手にも、女性陣の誰よりも優しさが感じられたりして、台詞のないときもアイルランドの一青年の気持ちがよく出ていたと思います。パンフレットの黒田さんのコメントにも背景みたいに目立たないような演技を、とありますが、自然なたたずまいがあんなに若いのにさまになって・・・と思ったら6才で大河ドラマデビューしておられるのですね、納得です。
 それからバーナデット役の遠藤麻綸さんの歌、劇団四季のファンの方が太鼓判を押すわけだ・・・とこれも納得でした。台詞を語るように歌う方で、これなら「突然歌いだすから」ミュージカルが嫌い、な方もOKなのでは。直接のモデルではないとウェバー&ベン・エルトンは言っていますが、ハンガーストライキでなくなったIRA兵士のボビー・サンズの妹の名がバーナデットです。彼女の兄の死に接した時の涙もこんな風だったかと思うくらい、深い痛みの感じられる歌でした。
 反対に惜しまれるのはやはり「監獄」のシーンが思っていたよりインパクトが弱く単調だったことです。歌舞伎みたいに看守の制服を引き抜いて悪魔の姿に・・・とは言いませんが、看守の皆さん、「合法的な範囲」というかあんまり怖くない。事実そのままにする必要はなくても、観客が怖くて泣き出すくらいでちょうどいい場面なのではないでしょうか。歌舞伎って「恐怖」「暴力」の演出はものすごく優れていると思うので是非マクニーリーさんにも日本でご覧になってほしいです。
 もっと本音をいうと、ここでは恐怖と暴力によってジョンの中に起きる精神的変化を青山さんの振付で見てみたいです。エディンバラ国際フェスティバル参加作品『森羅』で精神世界の闇の部分を踊っておられますが、劇場の温度が下がったんじゃないかと錯覚したぐらいに、凍てつく深海のように厳しく、苛酷な精神の営みを描き出してくれました。あの時の心を揺さぶるような厳然とした美しさは今でも忘れられません。「いつかまた」、そう思っています。

BG青の11番=WSS青のタンクトップ=青山航士

2006-04-27 | ビューティフル・ゲーム
 『ビューティフルゲーム』千穐楽、行ってまいりました。
 カーテンコールのあと、"The Beautiful Game"が流れるとオールスタンディング状態の観客が全曲手拍子、とても暖かい客席でした。ラストの"Wow~~~~!!!"で盛り上がったところに「本日の公演はすべて終了しました」のアナウンスが・・・。でもここで帰る観客はわずかで、拍手は鳴り止まず、再び櫻井翔さんが舞台に。
 日本でマクニーリーとともに一から創りあげた作品、という話に続いて、他のキャストを舞台に呼ぶ際に、「ビューティフルゲーム日本版、初演・オリジナルキャストです」と紹介しておられたのが印象的でした。くどいようですが「決勝戦」は世界のどこにもっていっても通じる内容だと思います。以前、日本で世界プレミアとしてアダム・クーパーの『危険な関係』が製作・上演されましたが、今後もさまざまな形で日本から発信するものが増えるかも、と思うと嬉しいですね。
 
 さて観客のおしゃべりの盗み聞き(ははは)。東京の劇場って本当に静かだといつも思いますが、やはりここは大阪、幕間も終了後の化粧室もマシンガントークがあちこちで炸裂していました。製作の方、問題はあるかとは思いますが、化粧室に集音マイクなど設置されてはいかがでしょうか、とお勧めしたくなるくらい観客の本音が渦巻いておりました。櫻井さんのファンの方ってWSSの時もそうだったんですけど正直で屈託なくて、私好きですね~。カーテンコールでのマナーもよく、バレエ公演なんかでも舞台上にこんもりと山が出来るほどの、握手と引き換え・花束攻撃があることを思えば皆さんお若いのに自制心が強い。
 で、東京も含めて本当に毎回、「ダンスが少ない」、「サッカーの試合の場面が一番面白い」、そして「一人ものすごくジャンプの高い人がいる」という声が聞こえてきました。皆さん想像以上に舞台に対して客観的で、かならずしも櫻井さんの見せ場でなくてもいいものはいい、と素直に楽しんでいる印象をうけます。このあたり製作側の読みと現実が少しくい違ってるのではないでしょうか。
 
 「ものすごくジャンプの高い人」は青の背番号11、彼女達の記憶のどこかに今はそっとしまわれているのかもしれないけれど、あの人は『ウエストサイドストーリー』の「青いタンクトップの人」でもあります。あの素晴らしい「決勝戦」のシーンは、日本がパフォーミングアートの発信地としてひとつステップアップした記念碑のようなシーンだと思います。その目撃者達と青山航士さんの再びの出逢いがありますように。『うたっておどろんぱ! プラス』も見てね。 

青山航士は万人受けするのか玄人受けするのか

2006-04-24 | ビューティフル・ゲーム
 『ビューティフルゲーム』大阪公演真っ最中、さっさと更新するべきなんですが、あの「青の背番号11」を見た後では何を書いてももどかしいというか、あの素晴らしさを言葉で伝えられるわけない~、と浸っていたら、「水底のポール・ド・ブラ」にあゆあゆさんからコメントいただき、あゆあゆさんも漂っていたとのこと。そりゃ、あんなもの何回も見たら骨抜きにされますよね~。
 で、いつものごとくあゆあゆさんに触発されて書きますと(ホントに書けるかな~)、この「決勝戦」が色々な方から「面白い」と評されているのが、私はとても嬉しく、日本のダンスに新しい時代が来たんだな、とワクワクします。技術的にはバレエコンクールなどで披露される伝統的なものもたくさん使われているのですが、全体として見た時にはフィールドの興奮を写し取ったようで、エンターティンメントとして文句なしに楽しめます。ダンスやバレエファンでない人、とくに男性が見ても「面白い」といえる、バレエの技術を使ったダンスは本当にわずかしかありません。バレエファンとしては・・・あの大鷲が羽ばたき、急旋回するようなジュッテ・アントルラセは忘れられないです。
 NHK教育『うたっておどろんぱ! プラス』で現在放映されているシリーズ「三忍者」も、モダンバレエで使われているような技術が次々と披露されていますが、自然に、格好よく忍者の動きとして昇華されているので、いわゆる「バレエ」には拒否反応のあるお父さん達も楽しんでおられるのではないでしょうか。
 
 ・・・では青山航士は「素人受け」するダンサーなのか、というとそうではありません。ブロードウェイの演出家が『ウエストサイドストーリー』の難所を委ねることだけとっても充分かと思いますが、アカデミックな経歴がありありと読み取れる端正な動きには、口うるさいダンスファンでも眼を留めるでしょう。
 ヨーロッパやアメリカへ亡命したロシアのヌレエフ、バリシニコフら天才ダンサーは、新天地でバレエのファンを増やし、裾野自体を広げたといいます。もちろん青山さんは21世紀の日本に暮らすダンサーで、亡命などとは無縁ですが、日本にとっては全くの異文化であるはずのダンスをこれほど鮮明に、アイドルのファンにも「面白く」見せ、母子ばかりか父親/男性の視線も引き寄せる、それはやはり新時代を作っている、ということだと思います。

 青山さんの舞台に接するたび感じる、一回一回に傾けられる集中力・気迫と、観客の視線を読みきったようなクールな緻密さ-。一部の人以外には「愛されている」とは思えないバレエをここまで切り開いてみせるセンスは青山さんにしかないものだと思います。万人/素人だ、玄人だと「分ける」のではなくて、すべてを取り込まんばかりの表現者としての逞しさ、この人の「今」を見る機会を積み重ねていく観客は幸運ですよね。千穐楽、楽しみです

水底のポール・ド・ブラ

2006-04-22 | うたっておどろんぱ!プラス
 短い・・・のはさておき、「ゆらゆらゆらら」、青山さんの腕の運び=ポール・ド・ブラが綺麗でした。この腕でリフトもしてるのですよね・・・。この曲は2002年度放送分が最初のDVDにはいっていますが、もうとにかく青山さんがいつもより余計にハンサムでファンは盛り上がりましたわ~。’02年版は風の間を揺れる感じでしたが、今回はイメージを変えて光のさす水底でゆれるような柔かさ。
 昨年度放送分の、青龍みたいな「三忍者 Ⅱ」や、『ビューティフルゲーム』を見ていると、青山さんの身体能力の高さ、端正な力強さに眼を奪われますが、それすらも「青山航士」のごく一部でしかないことを改めて思い出します。どんな曲でも踊りこなす人というのは、世界でもそんなに多くない、と私は思っていますが、青山さんは本当にリズムとメロディの無数の組み合わせ全てにスッと乗ってしまうのですよね。存在を知ってから何年たっても不思議な人です。
 たった5分でもしっかりと表現の幅を感じさせてくれる『おどろんぱ!プラス』はやっぱり貴重な番組です。時間延長・長期継続・放送枠増いずれも大歓迎ですので、NHK様、宜しくお願いします。
 

明日から『ビューティフルゲーム』大阪公演

2006-04-22 | ビューティフル・ゲーム
 『ビューティフルゲーム』東京公演中の4月4日に、20年にわたりイギリスのスパイだった元IRA幹部、デニス・ドナルドソンが殺害されました。彼の経歴を読むと、まさに『ビューティフルゲーム』の登場人物たちの世代、特に作品中でスパイであることが発覚するトーマスの人生に重なります。
 1950年、ベルファストのカトリック居住区に生まれ、60年代半ば、アイルランド紛争が激化する少し前にIRAに入り、71年には蒸留酒製造所と庁舎の爆撃未遂で逮捕され、Maze刑務所で4年間服役しました。ハンガーストライキで最初に亡くなったボビー・サンズも同時期に収監されています。『ビューティフルゲーム』の冒頭にも店に爆弾が投げ込まれるシーンがありますが、当時、頻繁な爆弾テロが北アイルランドを脅かしていたようです。
 74年には密かに持ち込まれたカメラによって、獄中の4人のIRA兵士が脱獄したかのようにベルファストの街にたたずむ合成写真が作られていますが、その一人が彼、デニス・ドナルドソンです。ボビー・サンズと獄中で友人であった事が、出所後、IRA内での信望を集めたといいます。
 トーマスの台詞をなぞるように、彼は諸外国のIRA支援組織と接触があり、銃の密輸入にも関わっていました。81年、偽造パスポート所持でフランスのオルリー空港で逮捕されながら、ほどなく釈放されているので、この時点ですでにイギリス警察のスパイだったのではないかという記事もあります。彼自身の供述では、その後、個人的な出来事によりスパイとして報酬を得るようになったということですが・・・。
 94年以降、英政府がIRAに接触していたことは今では明らかで、ドナルドソンも爆撃未遂の前科にも関わらず、クリントン政権下のアメリカのビザを取得しています。スパイであった事実が明るみに出たのも当然かもしれません。『ビューティフルゲーム』では、トーマスだけが警察に捕まらないことをジョンが詰問するシーンがありますが、ドナルドソンも投獄されたのは71年の1回だけなのです。

 偶然、と呼ぶには怖いほど、事実が『ビューティフルゲーム』という作品を浮き上がらせていきます。今月号の「シアターガイド」には、演出・振付のジョーイ・マクニーリーのインタビューが掲載されていましたが、その時点ではこのスパイ殺害のニュースは届いていなかったのでしょうか。アンドリュー・ロイド・ウェバー、ベン・エルトンのコメントも読みたいのですが、まだ見つかりません。ロンドンではこのスパイ殺害事件は「迷宮入りは必須」と言われているそうです。事実が覆い隠されても、この作品が問い続ける、ということになるのでしょうか。

 明日から大阪公演が始まります。いろいろなひとの「伝えたい思い」が、アイルランドからも届くような気がします。

『父の祈りを』とジョン・ケリー

2006-04-20 | ビューティフル・ゲーム
 櫻井翔さんのファンの方のブログで、ラジオ番組の内容をもれなくレポしている(すごいですよね~)ものを読ませていただいたところ、稽古期間中、『ビューティフル・ゲーム』出演者全員で映画『父の祈りを』を見た、と櫻井さんが話しておられたそうです。
 1974年、イギリスでIRAによる爆撃事件が続いていた時期、ロンドンを訪れていたアイルランドの青年たちが無実の罪に問われ、終身刑の判決を受けてしまいます。1か月後、警察は彼らのアリバイを証明する人物の存在を確認しますが、イギリス警察のメンツを保つためにその事実を隠し、彼らは収容されたままになります。逮捕された息子を心配してロンドンにやってきて、同じく無実の罪で服役するはめになる父と、ぎくしゃくしていた父子関係を回復しながら「無実」の訴えに耳を貸した女性弁護士とともに、15年の服役ののち冤罪をはらす、というストーリーです。
 映画の半分ほどは、法的手続きなしに逮捕・一週間の拘留ができるという「テロ防止法」がイギリスで適用されていた時代の監獄が映し出され、囚人服は『ビューティフル・ゲーム』で使用されているものと同じ黄色いポケットのある青いデニムです。
 看守による強制的な身体洗浄のシーンが少し出てきますが、カトリックのアイルランド人の方の回想によると、ベルファストの刑務所では血が脚を伝うまで清掃用ブラシで局所を殴りつけるような酷さだったそうです。また、81年のハンガーストライキで亡くなった方の遺体には、死後つけられた火傷のあとがあったともいいます。ジョン・ケリーのいた監獄もそうだったでしょうか。そして、獄中のIRA兵士に虐待の限りを尽くしていた看守は、のちにIRAの仕掛けた爆弾によって死亡したということです。
 そうした胸の塞がるようなエピソードにあふれた「監獄」を描きながら、この映画には、主人公の父親と看守が、一瞬、同じ父親として会話を交わす場面があり、ジム・シェリダン監督の観衆への語りかけが聞こえてきそうな気がしました。IRAの「制裁」を受けたサディスティックな看守も、家庭では普通の父親であったようで、追悼集会で、娘である女性が父を失ったことを悲しむのを眼にし、信じられない気がした、と前述の回想は続きます。
 戦いの悲痛な歴史を刻んでいるのは、誰かの父親であったり、夫であったり、特別な人間ではない、という怖さの一方で、父と子の絆を強めるうちに、非暴力によって尊厳を勝ち取る青年を描いたこの作品には、日本版ジョン・ケリーの選択に通じるものを感じます。ロンドン版サントラCDでは妻子を残しIRA兵士として旅立つジョンが「息子には僕を誇りに思ってほしい/闘うとすればそれは彼のため」と歌い、それが生涯の別れとなります。・・・私はテロに走らなかった日本版のほうが共感できますが、皆さんいかがでしょうか。
 ただ、いろいろな回想文を読めば読むほど、当時の監獄のあまりの酷さに、脱獄が可能だったとは考えられなくなっています。だから日本版の演出の、脱獄から後の場面は、ハンガーストライキの苛酷な営みの間に、衰弱し、もうろうとした意識の中で、父であり夫であるジョン・ケリーが見た長い夢なのではないか、と勝手な想像をしています。

『テネシー・ワルツ』神戸公演 追記

2006-04-19 | テネシーワルツ ~江利チエミ物語~
 昨日おしらせした『テネシー・ワルツ』神戸公演、チケット一般発売は6月中旬の予定だそうです。
 島田歌穂さんは、この作品や『レ・ミゼラブル2000回記念公演』などでの活躍により、第27回松尾芸能賞の優秀賞、また「月刊ミュージカル」誌2月号で発表されたミュージカル・ベストテンでミュージカル女優の第1位に選ばれました。島健さんのアレンジによる音楽も素晴らしく、昔からジャズを愛する方の多い港町・神戸で見たら素敵な想い出になりそうです。

『テネシー・ワルツ』神戸公演ハガキ先行予約

2006-04-18 | テネシーワルツ ~江利チエミ物語~
 今日の新聞に『テネシー・ワルツ』神戸公演の広告が掲載されていました。青山航士さんが出演されるかどうかは分らないままですが、島田歌穂さんの歌が本当に素晴らしく、素敵な作品でしたのでご紹介します。メインキャストでは、美空ひばりさん役が前回の久野綾希子さんから剣幸さんに変わっています。

9月6日(水)18:00
  9月7日(木)12:00/16:00
  9月8日(金)12:00/16:00
 
新神戸オリエンタル劇場
 山陽新幹線<新神戸駅>下車すぐ
 JR・阪急・阪神<三宮>より市営地下鉄で一駅

出演:
 島田歌穂(江利チエミ) 剣 幸(美空ひばり) 絵麻緒ゆう(雪村いづみ) 
 下條アトム(久保益雄/江利チエミの父)

料金:7500円(指定・税込)

必ず往復はがきで
 郵便番号・住所・氏名・電話番号・ご希望の公演名(テネシーワルツ)・公演会場名・公演日時・枚数
を明記の上、下記まで。

〒540-0038 大阪市中央区淡路町2-4-11-201
(株)グリークス「テネシー・ワルツ」A係

締め切り:4月28日(金)消印有効

『テネシー・ワルツ』で華やかなレビューの雰囲気をいっぱいに振りまいておられた神崎順さん公式ファンサイト”Jewel”の"Jun's Diary"に青山さんご登場です。近畿一円でも「おまめさん」「おいなりさん」「あめちゃん」など食べ物をちゃん・さん付けで呼びますが・・・「えびちゃん」、おいしそうですね。

桜と『ビューティフル・ゲーム』

2006-04-15 | ビューティフル・ゲーム
 今年の大阪は4月になってからも肌寒い日が続いたので、桜がまだ咲いていて、小雨ふるなか今日も殆どの花は残りました。例年になく長い開花で、桜の木は、風や雨で花を散らしはしても、一本の木としては最後の花が咲くまで散るのを待っている、と知り合いの方が教えてくれたことを思い出します。パッと咲いてパッと散るのは気候がよく、どの花も順調に生育した場合だけなのだそうです。
 
 不幸なめぐり合わせですが、『ビューティフルゲーム』東京公演中に、20年ものあいだ英国のスパイだったシン・フェイン党の元幹部が惨殺され、この問題がいまも過去のものでないことを思い知りました。IRAの武装解除宣言、英国-アイルランド間の和平プロセスの進行など、ついに長い悲劇が終わるのかと、最後の花が咲くのをじっと待っていた木が切り倒されてしまったような気がしてしまいます。
 ウェバーもベン・エルトンもこんな形で『ビューティフルゲーム』という作品の重要性を知らしめることになったのは遺憾なのではないでしょうか。作品中ではトーマスがスパイであると知りながら、ジョンにはかつての友人を撃つことが出来ませんでした。今回、現実となったスパイへの情け容赦ない報復は、極東の島国でこの物語が「ミュージカル」として表現される際に、ライトの当たらないところに寄せておかれた事実が悲鳴を上げたようにも思えました。
 ただ、私を含め、いまは戦争のない遠い国の住人である日本の観客も、「決勝戦」のシーンに、エネルギー溢れる肢体の美しさ、輝くような生命力を感じたことで、その全てを無にしてしまう「殺戮」を否定する気持ちも知らず知らずのうちに強くなっているのではないか、と思います。あのシーンが力強く「美しい戦い」であればあるほど、銃で人を痛めつける武力闘争の虚しさ、法で人を貶めることの愚かさがよくわかります。
 ロンドン、ベルギーに続いて上演されたこの『ビューティフルゲーム』という作品は、いったん幕を下ろしても、観客のひとりひとりが平和を望むことを、桜の木が最後の花を待つようにじっと待っているような気がしてなりません。今日は東京千穐楽でした。出演者、スタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。

 追記:So-net blogとあわせた閲覧数が、12日に80000pvを越えました。ご覧くださる皆さん、本当に有難うございます。    

監獄 ~Dead Zone~

2006-04-13 | ビューティフル・ゲーム
 『ビューティフル・ゲーム』を見る前に、この曲はダンスで見せるのかと期待していたのですが、その期待は残念ながら外れてしまいました。「決勝戦」とはまったく異なる、青山さんの表現の幅の広さが発揮されるところを見たかったのですが・・・。あちこち感想を覗かせていただいてると櫻井さんのファンにも「ミュージカルってもっと踊るのかと思っていた」と思う方が多いよう(私も)。歌ももちろん大切とは思うのですが、やはり舞台では「立体」が「動く」のを楽しみたいですよね。
 
 1971年、アイルランドでは、警察の判断により逮捕状なしで逮捕・拘留できるインターンメントと呼ばれる制度がはじまり、その後の4年でなんと2000人ものカトリック信者が投獄され、数百人は拷問をうけたということです。2001年の時点でも、警察官の9割はプロテスタントという数字がありますから、事実上の「法的差別」としか言いようはないでしょう。
 
 81年のハンガーストライキによって獄中で殉死したIRA兵士のドキュメンタリーにインスパイアされて、ウェバーとベン・エルトンは『ビューティフルゲーム』を創ったといいます。その若きIRA兵士達が服役していたMaze刑務所では、看守による暴力、侮辱が日常茶飯事であったようです。
 GettyimagesのWeb siteで壁一面がタール状のもので塗られている79年撮影の写真を目にしました。それはカトリックの囚人達が待遇のあまりの惨さ、シャワー室やトイレでの侮辱に対する抗議として囚人服を拒否し、一切身体を洗わず、自分たちの排泄物で壁を塗ったものなのです。『ビューティフルゲーム』でも屈託のない青年であったジョンが精神を蝕まれ、別人のようになりましたが、それも当時の事実を伝えているのでしょう。
 
 前に触れた故デニス・ドナルドソン氏は、文書の持ち出しに関して取調べは受けても、英国のスパイであったことに関して法的に問われたり、投獄されたりしたことはなかったようです。が、自宅で発見された彼の遺体は右手が切り落とされ、正式発表ではないにせよ、拷問されたと推測されています。
 ブレア英首相、アイルランド首相のアハーンは、この事件によって現在アイルランドで進められている和平プロセスを中断しないことを確認していますが、すでにプロテスタント系政党はIRAに、カトリック系政党は英情報局に疑いの目を向けています。殆どの人が平和を望んでいるだろうに・・・。日本版のメアリーはロンドン版と違って、夫の手がテロに染まるのを防ぐ事が出来ましたが、それは舞台上の夢でしかないのでしょうか。 

アイルランド人はダンス中毒

2006-04-11 | ビューティフル・ゲーム
 ・・・17、8世紀のイギリス人のアイルランド旅行記に、タイトルのような記録がいくつか残されているのだそうです。
 『ビューティフル・ゲーム』のデル(安倍康律さん)の台詞に「ジェームズ二世だ、オレンジ公ウィリアムだって何百年も前のことを・・・」とありましたが(うろ覚えですみません)、それは17世紀末。カトリック信者であるそのジェームズ王がイングランドからアイルランドに来たときには、リンカ・ファダと呼ばれるダンスでアイルランド国民は歓迎したということです。
 1367年、英政府によってアイルランド固有のダンス・音楽を禁止するキルケニー法が施行されて以来、音楽家が投獄・処刑されることもあったというとんでもない時代が続いたのですが、18世紀になって文化規制は緩和され、アイルランドの人々は生活の中でダンスを楽しんだそうです。
 フランスやイギリスでは上流階級のたしなみとしてのダンスが発達した時代の話で、庶民が熱中するのは、珍しいことだったのかもしれません。その大衆性は今もうけつがれ、プロダンサーの踊りを鑑賞するというよりは、ひとりひとりが踊って楽しむのがアイルランドではもっとも自然なダンスのあり方のようです。
 
 「ダンス中毒」のアイルランド人を描いたにしてはちょっと少なかったけれど、『ビューティフルゲーム』でも、優勝パーティーと、ジョンとメアリーの結婚式の場面で「劇中ダンス」が登場します。
 優勝パーティーの"The Craic"のようにパブで踊る、というのは今も全く同じで、観光案内所で「アイリッシュ・ダンスが見たい」と聞くと、大抵は「どこそこのパブでやっています」と応対されるようです。とくに予告もせず、始まってしまうらしいのですが、面白いのは「ほうきダンス」というのがあって、ほうきを使って脚捌きを披露するそうです。昨年度『うたっておどろんぱ!』の「ピュアピュアダンス」を思い出しますよね~。青山さんみたいなダンサーがいたら(いるわけないか)アルコールなしでも酔えそうです。
 また、日本ではアイリッシュ・ダンスというと[リヴァー・ダンス]を思い浮かべますが、あれはあくまでも「ショー」としてアレンジされたもの、というのがアイルランドのダンス愛好者の意見のようです。『ビューティフル・ゲーム』の時代のカトリック住民は、民族意識のたかまりの中で、アイルランド固有の文化のひとつである、ホップし足で蹴りながら踊るケーリー・ダンスを大切にしていたといいます。そういえば、結婚式のあとのダンス、ホップしてました。何気ないけれど、あの場面にも当時のアイルランド人の想いが息づいているようです。
 

『テネシーワルツ』再演情報

2006-04-09 | テネシーワルツ ~江利チエミ物語~
 神崎順★様公式Web Site”Jewel”管理人ぼのさんより、『テネシーワルツ』再演のお知らせを頂きました。有難うございます”Jewel”の'Jun's Diary'では前回の『テネシーワルツ』公演の際、青山さんのお写真がたくさん紹介され、青山ファンは感謝の涙を流したものですが、またお世話になってしまいました。
 また、現時点では詳細未定ですが9月下旬ごろまで各地方都市で上演の予定もあるそうです。とても魅力ある作品でしたので、地方在住の青山ファンはなおさら気になりますよね~。
 ただ、青山さんが出演されるかどうかはわかりませんので心を落ち着けて(と自分に言い聞かせる)読んでください。う~ん、『ボーイ フロム オズ』の再演の噂もありますし、落ち着けというほうが無理かな・・・。

『テネシーワルツ~江利チエミ物語~』
8月19日(土) 13:00/17:30
8月20日(日) 11:00/16:00

 ◆会場:明治座
   地下鉄/日比谷線・都営浅草線[人形町駅] 都営新宿線[浜町駅)]
         半蔵門線[水天宮前]

 ◆全席指定(税込) A席8,500円 B席4,000円

 ◆一般発売:7月1日(土)より電話・ネット予約開始
       7月4日(火)より窓口前売取扱い開始

   明治座チケットセンター 03-3660-3900

今もアイルランドで

2006-04-09 | ビューティフル・ゲーム
 『うたっておどろんぱ!プラス』のスタートをお祝いしてすぐ、の話題にしてはふさわしくないかもしれませんが・・・。
 独立派シン・フェイン党の幹部の1人でありながら、実は20年ものあいだ英国のスパイだったことを告白し、昨年12月にシン・フェイン党を除名になったデニス・ドナルドソンが、4月4日、アイルランド共和国北西部Donegalの自宅で4発の銃弾を浴びて殺害されました。IRAもシン・フェイン党も関与を否定しており、まだ何も解明されていないようです。・・・が、IRAの武装解除は偽りだったのか、という憶測・批判を匂わせている記事もみかけます。

 『ビューティフルゲーム』でもIRAの一員であるジョンの友人トーマス(山崎裕太さん)が警察とのつながりを告白したり、ロシアからの武器供給、アメリカの資本家からの資金援助を暴露するシーンがありました。ジョン・レノンも、IRAへの資金援助を疑われていた時期があるそうです。800年にも及ぶ英国のアイルランド支配の歴史は、それ自体が不幸と生き物のように複雑にからまって、断ち切りようのない繁殖力を持ってしまったのでしょうか。
 日本版のエンディングは、ドラマとしての説得力・盛り上がりにかける、という印象を持った方も多いようなのですが、こんな現実と重ねると、「終わり」がないのも無理はない、と思えてきます。また、政治犯に対する、残虐なまでに厳重な当時の刑務所の管理体制を思うと、何らかの組織が手を貸しでもしなければ、脱獄はありえないとも考えられます。そしてその目的なり代償であろうトーマス殺害に失敗し、「ロンドンへ人を殺しに」も行かなかったジョンがすんなりと妻子との生活に帰っていけたとはとても思えません。
 日本版のラストは、彼が「テロを拒絶し、妻と子の所に帰る」という決断をした、その美しい一日を切り取り、ほんの一瞬、夢を抱きしめたところで幕を下ろした、ということのように思えます。それはあるいは「殺される前に」という決断かもしれないし、当時のベルファストは、その後のこの家族に何が起きても不思議ではない危険な状況だったようです(2月12日付けの「1969年ベルファストの子ども達」をご覧ください)。
 櫻井翔さんのお顔は、こんな人相の人が殺人を犯したら世も末だ、というくらい無邪気な優しい顔ですよね。かつての友人の額に銃弾を放つことを拒否する、ロンドンへも行かない、それは父であり夫である日本版ジョン・ケリーの戦いのはじまりだったのかもしれません。