platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

All Shook Up/大千穐楽おめでとうございます

2007-12-30 | ALL SHOOK UP
 大盛況のうちに『All Shook Up』全公演が幕を下ろしました。
 ある日はカーテンコールを終えた坂本昌行さんが袖に入る少し手前で立ち止まり、思い出したように客席に向かって「今、雨降ってます」と一言。「えええ~~~~」とリアクションが湧き上がったところで茶目っ気たっぷりに「うっそでぇ~~す♪」とスキップするようにして袖に入ったものですから、会場はまさにチャドが訪れた町状態で微笑みでいっぱいになりました。
 ノリのいいプレスリーの曲を立て続けに歌い踊るこの作品、出演者の皆さん本当にハードだったと思います。歌も踊りも実際の人数以上に厚みを感じて、一人一人の集中力とこの作品への愛情が心地よく伝わってきました。
 そんなロックンロール!なノリの中で時折、ほの暗い照明をまとうように、ゆったりとしたペアダンスがはさまれるのですが、この時の青山航士さんの動きの柔かさ、繊細さといったら、あの赤い悪魔と同一人物とは思えないほどです。歌は雄弁にそれぞれの恋を語りあげますが、このアンサンブルによるペアダンスは言葉にならないほのかな思いや密かなときめきを幻のように描いて素敵でした。いわゆるクラシックな端正な動きなのですが、それを浮き上がらせず、50年代のアメリカの空気の中で魅せてくれるダンサーというのはかなり限られていると思います。オタクがこういうの見ているとやはり『ウエストサイドストーリー』の振付家ロビンズの作品を踊る青山さんが見たくなりますね~。
 全公演終わってみると、いま日本で普通に連想される「愛すべきアメリカ」がふんだんにつまっている作品だったような気がします。自由と音楽を愛する男性、自分を信じて町を出て行く女の子、人種を超えていこうとする恋などなど、この島国の若い想いが遠くみつめて憧れてきたものなんじゃないでしょうか。客席の層も思ったよりずっと広く、お洒落な老夫婦もたくさん! その方たちもアンコールはスタンディングで楽しまれていて、プレスリー世代から十代まで、日本も見事にALL SHOOK UP!な公演でしたね。出演者、スタッフの皆さん、お疲れ様でした、どうぞよいお年を 

青山航士さん次回出演作は『「RUDOLF」 The Last Kiss』

2007-12-28 | RUDOLF The Last Kiss
 『All Shook Up』大阪公演に浮かれているうちに、青山航士さん所属事務所のエフ・スピリットさま公式サイトに次回出演作の告知がありました
 私も今気付いたばかりなので、取り急ぎのお知らせまで~~。また後で落ち着いて書きます

 追記:落ち着いて・・・なんて無理でした。『「RUDOLF」The Last Kiss』の原案・音楽は和央ようかさんコンサートの際に魅力溢れる曲を提供されたあのフランク・ワイルドホーン氏、そして演出は宮本亜門さんとくれば、いま何をどう書けばいいのか分るわけありません(しっ、しかも青山さんは大阪で公演中・・・)ブロードウェイに進出された日本人演出家である亜門さんが、ブロードウェイきっての名作曲家が創りあげたハンガリー発のミュージカルを・・・。なんだか迷宮に誘われているみたいでワクワクします~~。

All Shook Up 大阪公演初日/鏡の国の湖月わたるさん

2007-12-28 | ALL SHOOK UP
 終演後、会場のシアターBRAVA裏の車寄せに整然と並んだたくさんの人たち・・・聞けば湖月さんのファンの方々なのだそう。本拠地・宝塚のテリトリー内だけあって、皆さん常連さんのようでした。すごい人気なんですね~。
 歌舞伎の女形は実際に存在する女性ではなく、男性の頭の中にある「こんな女性がいたらいいな」という夢を演じているといいます。それでいうと湖月さんは女性の頭の中の「こんな男性がいたらいいな」を演じておられた男役ということになりますが、客席を想いのままに沸かせる今回のミス・サンドラ役を見ていると、相手役の「女性」というものも細やかに観察しておられたんだな、と思いました。三面鏡を覗いているように、ご自身のあらゆる角度を知り尽くしているというか、とても明晰な印象を受ける演技です。
 一人の女性である自分自身から視線を外に出して男役を演じ、さらにその男役の視線で、同性の厳しい視線を満足させる女性像を見つめている・・・そんな何層もの視界を感じる女優さんで(ファンの方には「違います」と言われるかもしれませんが)容姿の艶やかさもさることながら、魅力的ですね。
 さて宝塚ファンの方の熱気も一層高まって、ノリノリで幕を下ろした大阪公演初日。青山航士さんがブログで「ずっと歌って踊っていたい」と思った事が何度もあると語っておられたけれど、見る側も出来ることなら時間をエンドレスでリピートして、ずっと見ていたくなる作品です。大阪公演初日、お疲れさまでした

All Shook Up/That's All Right, ママ!

2007-12-25 | ALL SHOOK UP
 この曲、プレスリーが初めて公的に発表し、「最初のロックンロール」と呼ばれている曲で、音楽ジャーナリストの選ぶ「世界を変えた100曲」の一位にランクインした事があるそうです。
 BW版サントラでは黒人のシャロン・ウィルキンス(シルビア)とニキ・M・ジェームズ(ロレイン)がカッコよく決めていて、日本のミュージカルがどう見せるのか一番気になっていたのですが、諏訪マリーさんのパワー、カワイイ尾藤桃子さんのエネルギーが素敵でしたね。黒人の骨格や声帯はアジア人のものとは大きく異なり、同じような歌い方を技術として身につけるのはかなり難しいと聞いた事がありますが、ハートのある日本版の健闘に思いきり拍手してしまいました。チラシでは白人風のメイク/ヘアだった諏訪マリーさんが黒人調の出で立ちで登場されたこともとてもよかったと思います。(照明の加減で白く見えることもあるので、もう少し濃いメイクでもいいという気も・・・)
 BW版とも全米ツアー版とも異なるデビッド・スワン版、異文化の壁を取り払った演出になるのは当然なのでしょうが、シルビア&ロレイン親子が黒人であるという設定を変えたのでは、脚本のディピエトロや音楽のスティーブン・オルムスが目指したもの、そして黒人音楽と白人音楽の交差に始まるプレスリーの音楽的ルーツから離れていくような気がします。
 桃子さんの歌には若かった頃のプレスリーの歌のキラキラとした輝きがありましたが、お父様の尾藤イサオさんの胎教の成果でしょうかそのお父様の"The Power of My Love"はワンフレーズごとが熱く、さすが年季のはいったプレスリー・フリークぶり。アンコールでは親子で手をつながれていたお二人、シルビアママにも実のお母様にも"That's All Right, Mama!"と言ってるように見えて、この舞台がますますハッピーに感じられました 

All Shook Up/There's Always Me~If I Can Dream

2007-12-24 | ALL SHOOK UP
 諏訪マリーさんの熱唱が思い出される"There's Always Me"。61年にリリースされたこの曲は、56年以降、エルヴィスに曲を提供していたドン・ロバートソンの作品です。エルヴィスはこの曲のオペラ風のエンディングがとても気に入っていて、作者である彼にも充分な敬意を払ってくれたといいます。それ以前に別の曲のデモをいったんプレスリーサイドに渡しながら、自分の歌として発表するために取り戻したことがある彼の方はびっくりしたとか。エルヴィスの好人物ぶりを伝えるエピソードって、本当にキリがないですね。
 ミュージカルでのパーソナルな深い恋を語る場面設定と少し違って、エルヴィス・バージョンには"Me"というのがGodではないかと思えるほど、「個人」を超えたスケールの大きさを感じます。ミュージカルでも、続く"If I Can Dream"は人種を超えた恋を見守り、導くような設定になっていましたが、坂本昌行さんのまっすぐで温かみのある歌声がとてもよかったです。大げさにならずにこの手の曲を歌える方って日本にあまりいないんじゃないでしょうか。これから年齢を重ねるにつれてどんな歌を歌っていくのか、ファンの方も楽しみでしょうね チャド、ロレイン、ディーンのトリオに、青山航士さんたちアンサンブルのコーラスが加わると、大地いっぱいに拡がる思いが一層感じられて、大好きなシーンになりました。
 ミュージカル『All Shook Up』を知ったことで、今まではなんとなく知っていただけのプレスリーの曲を改めて聞くことになりましたが、彼は「ロックの帝王」というだけでなく、当時の人たちが語り合いたかったこと、分け合いたかった想いを全部受け止め、包むような存在だったのかもしれません。以前に少しふれた、エルヴィス・プレスリーの「ゴスペルのスピリット」をしみじみと感じる2曲でした。

追記:先日、総閲覧数26万pvを超えました。オタクモードの日にもお付き合い頂き、感謝しております

All Shook Up/Let Yourself Go

2007-12-19 | ALL SHOOK UP
 千秋楽まで書かないほうがいいのかな~と思う演出の"Let Yourself Go"。この曲は、プレスリーとフランク・シナトラの愛娘ナンシー・シナトラの共演作『スピードウェイ』(68)の挿入歌です。68年といえば、プレスリーが10年来の「映画出演とサントラ盤のリリース」という活動パターンに終止符を打ち、12月のテレビ特別番組"Elvis"でコンサート活動に復帰した年ですね。
 この年2月には妻プリシラとの間に娘のリサ・マリーが誕生、4月、メンフィスでのキング牧師暗殺、6月『スピードウェイ』公開そして"Elvis"収録開始・・・とプレスリーにとって節目だったんじゃないかと思える出来事が並びます。タイトルの"Let Yourself Go"は「ありのままの自分を出すんだ」、というところでしょうか。その後「自分が信じられない歌はもう歌わない」と宣言もしているプレスリー、生身の人間としてのエルヴィスの姿が垣間見える歌なのかもしれません。
 ・・・で、ネタバレしてもいいからどんな演出なの? という方に見逃し防止の画像を。以前もご紹介したことのあるおどろんぱネタですが、真ん中の方、オドロングリーンに似てるでしょ?

All Shook Up/赤い悪魔のCapoiera Kick!

2007-12-18 | ALL SHOOK UP
 『All Shook Up』第二幕中盤の"Devil in Disguise"、青山航士ファンは盛り上がりますよね~。パワフルなボーカルのハイド町長に挑むチャド=坂本昌行さん率いる赤い悪魔軍団の一人としてインパクトの強いダンスを披露してくれますが、なんといってもタイトルにしたCapoiera Kickが目に焼きついて離れません。「・・・って何?」という方、グーグル検索していただくと幾つか動画がみられますので少し覗いてみてください。
 Capoieraはブラジルに連れて行かれた黒人達の編み出した武術で、筋肉のバネを最大限に活用したその型は、組み合わされてアクロバット的な技(その競技会まであるようです)となったり、ダンスに生かされたりしています。ストリート系のダンスなんかかなり影響を受けているんじゃないでしょうか。
 この場面で青山さんが見せてくれた、床についた片手を軸として、片脚を伸ばして上方に振り上げる(わかりにくくて)Capoiera Kickは、ビュンと上空に伸びる脚が巻き上がる炎のようで、この曲のシチュエーションにぴったりでした。身体能力を誇示するというのではなく、曲想にあい、しかも見て美しいCapoiera Kick、他所ではなかなか見られません。一瞬の技ですのでどうぞお見逃しなく
 また、この作品の根底には、黒人音楽と白人音楽の融合がある訳ですが、白人の文化であるバレエを学ばれた青山さんの見事なCapoiera Kickで、ダンスでも南アメリカの黒人の技術が盛り込まれ、異文化が融合したということになりますね。オタク的かもしれませんが、こんなことをやってのける青山さん、やっぱりカッコいい!公演のたびに改めてファンになってしまいます

 追記: オタクついでにオールドファンのあなたに・・・青山さんのCapoiera Kickはおどろんぱ2002年度の「のびる・ちぢむ」の渡辺久美子さんのソロ曲で見られます。今回の舞台のものとはかなり表情が違って面白いですよ~。

All Shook Up/C'mon Everybody Encore

2007-12-16 | ALL SHOOK UP
 DVD『SHOW店街組曲』と『NEW YOKA 2007 ROCKIN' Broadway』でなんとかしのいだ私の長~いラマダンもとうとう終わり、『All Shook Up』観てきました久しぶりにこの目で見る青山航士さんのダンス、頭ではわかっているつもりでも、動きのスピードに改めて目を奪われてしまいます。青山さんの手や脚の伸びるところに板を立てておいたら片っ端から割れてしまうんじゃないかと思うほど、シャープで速い~。青山さんが出演した舞台を取材した雑誌が出ても、ダンスシーンの写真が少ないのをいつも残念に思っていましたが、こんなに速くちゃ、そりゃまともに写らないでしょうね~。なんとかDVD化されないものでしょうか。
 今回の舞台では、ソロ的なシーンはないのですが、音楽にぴったりとシンクロするというか、青山さんの動きが0.01秒ぐらい先に出て音楽をリードしているようなステップの連続で瞬きするのも惜しいぐらいでした。セットした髪もジェームス・ディーンみたいでかっこいいです~~~
 登場人物の想いが交錯するシェークスピアの『十二夜』から着想を得ているストーリーということで、メインキャストの人たちはそれぞれの恋をプレスリーの歌に乗せて表現します。それに対してこの作品のアンサンブルは50年代、あの広いアメリカの大地でプレスリーの歌と共にあった大衆一人一人の想いを表現しているような気がしました。「ずっと踊り続けたくなる」と青山さんがブログで語っておられましたが、張り裂けんばかりの若さと止め処なく溢れるエネルギーに突き動かされて、無意識に体が動き出しているような感じです。
 BW版を見ていないので、どこまでがデビッド・スワン氏の振付なのか私には分らないけれど、「群舞のパワー」というものをものすごく感じる作品でした。当時のアメリカの青年の心を他の形ではこれほど鮮明に表現することはできないかもしれません。もちろんファンですから青山さんのソロをじっくり見たいという気持ちもあるのですが、群舞で生命をほとばしらせるようにして踊る青山さんたちを見ていると、アメリカ中をプレスリーの歌と若い想いが走り抜けていくのが見えるような、なんともいえない幸せな気分になりました。
 特に"C'mon Everybody Encore"は何度でも参加したくなるパーティのようで最高に楽しい! 年末忙しいし、今回は見送り・・・と思っている方、観にいって世の中がひっくり返るのでなかったら、今からでもいかがですか? 今年をしめくくる、最高の忘年会になること間違いなしです 帰りの新幹線から見える空には上弦の月、ニッコリ笑っている様に見えます。ああ、楽しかった

All Shook Up/RoustaboutはHONDAに乗って

2007-12-14 | ALL SHOOK UP
 『All Shook Up』のチラシの坂本さん、カッコイイですよね。赤い革ジャンも3つライトのあるクラシックなバイクもバッチリ決まっていますが、これは64年のプレスリー主演映画"Roustabout"の衣装からとったもののようです。BW版は革ジャンもバイクも黒、ライトは真ん中だけ、ご本家プレスリーは革ジャンが黒、バイクは赤、ライトはやはり一つで、ボディがもっと華奢ですね・・・と思ったら、なんとプレスリーの乗っているのはHONDA305Superhawkなのだそうです~。プレスリーといえば、とにかくアメリカな感じがして、ハーレーかなんかだと思っていました
 そのバイクに乗ったまま、木の柵に突っ込むシーンなどにもスタントマンを使わなかったプレスリーの熱演が実って、この映画のサントラはビルボードチャートの1位を獲得しましたが、その後73年の"Aloha from Hawaii"までプレスリーのアルバムが1位になることはなかったようです。62年にはビートルズがデビュー、プレスリーが「反逆する若者の象徴」から変容する時期でもあったのでしょうか。
 『All Shook Up』で歌われているバージョンとは別に、プロデューサーの意向でお蔵入りとなっていた"I'm Roustabout"という曲が2003年に発表されたときは「モダン・ミュージック界の大発見」といわれたそうです。作曲者の自宅にアセテート盤が保管されていたといいますが、アメリカに『お宝鑑定団』とかあったらエルヴィスものは相当出そうですね~。HONDA305Superhawkを持っている、というおじいちゃんもいるかもしれないです

All Shook Up/WHO AM I ?

2007-12-11 | ALL SHOOK UP
 ブログめぐりをすると楽しい、という感想がズラリと並ぶD・スワン版『All Shook Up』、坂本昌行さんのチャドには、若く貧しかった頃のエルヴィスに通じるものがある、と尾藤イサオさんが語っておられたそうですね。1955年、エルヴィスのメジャーデビュー直前の時間を舞台としたこの作品、彼にとっても最高にハッピーだった思い出と重なるかもしれません。
 亡くなる前の7年間、プレスリーはすさまじいほどのライブ活動を行っていて、特にラスベガスでは昼夜4回(!)公演を3週間・休演日なしでこなしたという、すごい数字が残っています。エピソードにも事欠かず、NYマディソン・スクエア・ガーデンのコンサートにはジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、デヴィッド・ボウイーらが観客としてつめかけています。どれほどの熱狂だったでしょうか。
 でも、過密スケジュールの中、プレスリーの精神状態は限界に達していたようです。睡眠薬を服用するようになり、77年、処方薬のオーバードーズによる不整脈のため亡くなりました。彼の死に寄せて、同年アメリカ大統領に就任したジミー・カーターは、「エルヴィス・プレスリーの死によってわが国の一部が失われた。・・・プレスリーの音楽は白人のカントリーミュージックと黒人のリズム・アンド・ブルースを調和させ、アメリカの大衆文化を変化させた」と語ったそうです。
 町長から睨まれているチャドのようだった一人のアメリカ青年が、大統領が追悼メッセージを寄せるスーパースターになる・・・その間の出来事は、一人の人間が背負うにはあまりにも重すぎたのかもしれません。
 エルヴィスのゴスペル曲集"Elvis Ultimate Gospel"に収められた"Who Am I ?"には、「どうして彼は代わりに十字架にかけられるほどに私を愛してくれたのか、その答えを知ることはないだろう。一体私は誰なのか」という歌詞が出てきます。キリスト教的な意味と同時に、55年以来、誰一人経験したことのないほど、多くの人に愛された彼個人の心の底からの問いかけにも聞こえ、思わず耳をとめてしまいます。
 55年、アメリカの地方都市の音楽青年だったプレスリーが、あの大きな国の大衆文化を変える人間になろうとは、誰が思っていたでしょう。彼が一人の人間としての幸せを、当たり前に楽しめたのはその夏が最後だったかもしれません。日本公演、ますますハッピーに盛り上がって欲しいですね

『All Shook Up』初日おめでとうございます

2007-12-08 | ALL SHOOK UP
 初日をご覧になった方のブログ周りをさせていただきましたが、楽しそうな舞台ですね~青山航士さんが『All Shook Up』に出演されると知ってから、プレスリーという人をほんの少し探ってきましたが、あのエルヴィスの曲でつづるステージ、楽しくなくちゃウソ! というくらい、彼がどんなに愛されているかをしみじみと思うことが何度もありました。
 青山劇場の賑わいとはズレるかもしれないのですが、どうしてプレスリーがこんなに愛されているのか、それが先日も触れた「ゴスペル」にあるような気がしています。
 ハーレーにまたがり、日本全国を走り回るアーサー・ホーランド牧師がゴスペルについて語った中に、プレスリーの名前が出てきます。とても深い言葉で綴られているので、短く紹介するのって抵抗あるのですが、無謀にもやってみます~いや~ほんと無謀だわ~
 「ゴスペル」は音楽を意味するだけでなく、GOD SPELL(神が書いた言葉)、つまり神は言葉の筆によって宇宙というキャンバスに自然界を書いた、そのことを指してもいる、だから自然や普遍的なものを感じて「素晴らしい」と思う、ということはゴスペルを感じる、ということと同質なのだそうです。また芸術家達はみな、自分のなかでゴスペルを感じ、それを絵や音楽などにして表現し、それが人を感動させていると思う、とホーランド牧師は語ります。そしてプレスリーは貧しさの中で教会に通い、教会で歌い、デビュー後は教会から批判されても、楽屋ではいつもゴスペルを口ずさみ、自分を見捨てることのない神に対して歌っていた、彼は宗教というよりも、ゴスペルのスピリットを心の奥底に持っていた。だからJesusという言葉はなくとも、別れの曲を歌っても、彼の持つゴスペルのスピリットが、あれだけ多くの人の心を癒してきたのだと・・・
 私なんていうフィルターを通しているので、なんの感動もなくなってしまっている気がしますが、この文を読んだとき、自分が優れたダンサーにどうして心を惹かれるのか、ものすごくよく分ったような気がしました。人体の可能性の限りを尽くすような彼らの動きに、私は「GOD SPELL」を感じている、ということのようです。青山さんの動きに、エルヴィスの曲に「ゴスペル」を感じる舞台、観劇する日が楽しみでなりません 

All Shook Up/プレスリーの"Stand By Me"

2007-12-06 | ALL SHOOK UP
 『All Shook Up』のレビューを読んでいると、「プレスリーの名曲をゴスペル調にアレンジして・・・」というフレーズがよく目に入ってきます。で、ゴスペルって何?と改めて考えてみると、結構分らないので、少し探してみました。
 プレスリーの残したアルバム"How Great Thou Art「偉大なるかな神」"(67)はゴスペル・セレクションなんですが、曲名を見ると"Stand By Me"の文字が・・・。でも、これはおなじみのBen E. Kingのものではなく、「最初のゴスペル・ソングライター」と呼ばれているC.A.ティンドリー牧師の1905年の曲なのだそうです。リンク先のアマゾンで試聴も出来ますので是非お聞きください。
 アフリカから奴隷として無理やりに連れてこられた黒人達が、辛い労働の合間や、仲間の葬儀やミサの際に歌ったスピリチュアルと呼ばれる黒人霊歌がルーツなのだそうです。白人は黒人達が集団として行動することを警戒していたので、密かに「社会的には見えない教会」であったハッシュ・ハーバーに集まり、自分たちのやり方で神に祈り、「スピリチュアル」を歌い踊ったといいます。そしてその黒人にとっての教会音楽を世俗の音楽・ブルースと融合させたものが現在「ゴスペル」と呼ばれているようなんですが・・・まだまだわからないことが多いです
 プレスリーが少年時代に黒人教会でゴスペルに心酔していたことは以前にも触れましたが、自分の音楽的ルーツをピシッと抑えてアルバムとして残しているエルヴィスというのは、日本で普通にイメージされる「エルヴィス・プレスリー」とは少し違うような気がします(・・・私が知らなかっただけかな?)。皆さんはどう思われますか。
 理屈ではなく、人種の壁を越えていったプレスリー、そしてプレスリーの曲でミュージカルを創る、という時に、ゴスペルを持ってくるブロードウェイ。世界中を魅了するだけあって、やはりどちらもアメリカの生んだ素晴らしい文化ですよね。

All Shook Up/It Hurts Me

2007-12-03 | ALL SHOOK UP
 恋に苦しむ女性を、ゆったりと優しい愛情で包むように見つめている、父性的な愛を歌ってサマになるシンガーってやっぱり少ないですよね。普通に歌うと、モテない男性が影でひたすら待っている、なんだかいじましい歌になるところを、プレスリーが歌うとカッコよくて艶っぽいから不思議です。ロックン・ロールのキングというだけでなく、こういうアコースティックな音が似合うバラードを歌うところが、やっぱりアメリカの国民的歌手なんでしょうね。
 この曲は、後にカントリー・ミュージックのカリスマ的存在になるチャーリー・ダニエルが、62年のクリスマス前、ちょうど今頃でしょうか、テキサスから東海岸へ車を走らせていたときに曲想を得たそうです。ほどなくプレスリーのスタッフと親交のある音楽プロデューサー、ボブ・ジョンストンにナッシュビルに呼ばれ、二人で書き上げたのがこの"It Hurts Me"。プレスリーはこの曲を一年ほど暖め、64年に発表となりました。プレスリーは気に入った曲があると録音してみて、それを聞きなおし再度ふるいをかけてから発表する、という手順を踏むので、曲の完成から発表まで間が空いたのだとか。チャーリー自身大ファンだったプレスリーと握手をするような機会には恵まれなかったようですが、当時28才、エルヴィスに曲を提供したのは、彼にとって人生最大の出来事だったそうです。
 36年生まれの彼は、現在では映画に出てくるようなアメリカの好々爺ぶりですが、そのサイトがまたいかにも「アメリカ」です。チャドの訪れるYou-never-heard -of-it町もツアー版サイト(どうやら削除されてしまったようです)で見ると、いかにもアメリカ中部の町、というセットでしたが、デビッド・スワン版の舞台はどんな感じなんでしょうか。チャーリー・ダニエルの公式サイトを見ていると、乾いたアメリカの土の匂いが漂いそう。"Museum"の巨大エレキギターの写真は必見です。プレスリー世代のアメリカのおじいちゃん達、ほんとに元気ですよね~