platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

ロック+ミュージカル=ダンスのグレードアップ!

2006-12-24 | TOMMY
 "We Will Rock You"や、ビリー・ジョエルの曲を全編に使った"Movin' Out"、そして"Tommy"と、いわゆる「ミュージカル的な」音楽を使わない作品が話題を集めていますが、これは新しい客層をひきつけようとするブロードウェイの意識的な作戦なのだそうです。
 とくに60年代、ビートルズの"Meet the Beatles"が、ブロードウェイの"Hello, Dolly!"を押さえてヒットチャートを飾って以来、ロックがミュージカルの若い観客を奪った・・・という感覚がブロードウェイの創り手たちにはあるのだそうです。現在のアメリカのミュージカルの観客は中年以上が多数ということで、幕間のお弁当こそないものの、支持層は日本の歌舞伎より少し若い程度かも知れないですね。
 一方ピート・タウンゼントは、ロックは若い人達の音楽ではなく、心に満たされないものを持つ人々の音楽、と語っていて、実際アメリカでは分別盛りの年代の方がガンガンにロックをかけて運転していることも珍しくありません。また逆に、昨日も華やかなクリスマスツリーが飾られたサンフランシスコのユニオン・スクエアで、小学校高学年くらいの男の子達がCDラジカセを鳴らし、テニスラケットをギターに見立ててディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を踊り狂っていました。彼らからすると、殆どおじいちゃん世代の曲のはずなんですが、世代を超えて彼らの「満たされない心」を受け止めるものがあるのでしょうね。
 ただ、「ミュージカル的」でないロックで舞台を作るとすると、やはりダンスも「ミュージカル的」でなくなっていくしかないようです。P.タウンゼントも『トミー』に従来のミュージカルのようなダンスは不要、と考えていたようですが、私もいわゆる「ミュージカル的」なダンスには関心が持てずにいました。それが青山航士さんのクラシックからストリートダンスまで網羅する幅広い表現領域から曲に合わせて厳選され、ステージ上で差し出される造形に触れてからは、せっせとミュージカル通いをしたのですから、ブロードウェイの戦略にすっかり乗せられているということでしょうか。今回の『トミー』も、型にはまったステップとは程遠い、「満たされない心」に響くようなダンスを見せてくれる、そんな気がします。今はミュージカルが変わっていく、その変化を目の当たりにする面白い時代なのかもしれません。