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『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

トミーのサディスティックな従兄弟は・・・

2006-12-07 | TOMMY
 "Cousin Kevin"トミーの両親が彼の従兄弟にトミーをゆだねる場面で流れるこの曲は、ピート・タウンゼントのものではなく、ベーシストのジョン・エントウィッスルの作品です。
 ジョンによると、1968年7月の「マジカル・バス・ツアー」中、デトロイトでピートから「何か怖ろしいものを書いてくれ」と頼まれたということです。この「従兄弟ケヴィン」は、少年時代ジョンの家の向かいに住んでいた幼馴染がモデルで、両親は一緒に遊べばいいと言っていたけれど、非常にサディスティックな少年だったそうです。映画では「青年」ですが、「オレはいじめっ子なんだ」と歌いながら、2人きりであるのをいいことにトミーに残虐の限りを尽くします。不吉で、同時に子どもっぽいものにということで、彼いわく「一種Chopsticks的な」フレーズにし、シンプルな子どもの歌のように仕上げたといいます。
 1968年7月、といえば、イギリスでは11才の少女が2人の男の子を殺害するという「メアリー・ベル事件」が起き、人々に大きなショックを与えた頃です。純真無垢なはずの子どもが、はっきりとサディスティックな欲望を自覚し、ただそれを満たすために罪を犯す、という胸のふさがるような事件は、残念ながら時を移して日本でも起きてしまいました。彼女の劣悪な家庭環境、科学的にホルモン異常が認められるなどの客観的事実をあわせて考えても、子どもの心がそこまで荒廃するものかと底なし沼を見るような気がしますし、もっと慎重な視線で子どもを見る必要があると思えてなりません。
 この事件にジョンが言及したものを読んだ訳ではなく、彼の「デトロイト」という記憶が確かなら、メアリー・ベルが犯人であると発表される以前のことになりますが、彼らのアーティストとしての本能のようなものが、この曲を書かせたのでしょうか。