コンピューター・グラフィックスがひらく 現代数学ワンダーランド, アイヴァース・ピーターソン (訳)奥田晃, 新曜社, 1990年
(THE MATHEMATICAL TOURIST : Snapshots of modern methematics, Ivars Peterson, 1988)
・数学読み物。数論、トポロジー、多様体、フラクタル、カオス、ライフゲーム等々の話題について。一般向けに書かれているようですが、これらのキーワードを聞いてピンとこない、まったくの数学初心者にとってはつらい内容ではないでしょうか。理工系の大学生程度の知識が必要だと思います。
・アメリカ独特の回りくどい言い回しも少々しんどい。
・「たとえば、コンピューター・サイエンスは、アルゴリズムの研究を行うものと考えられる。すなわち、与えられた問題群を解くための方法と手続きの研究である。料理の場合は調理法がアルゴリズムで、これに従うことで、あれこれの材料から美味しいケーキができ上がる。数学者にも調理法がいる。」p.16
・「最近になって数論は、その数学世界の私室から出て、社会的な問題に対するきわめて重要な役割を果たすようになってきた。昔の数学者のこの高等な遊びは、暗号化やコンピューター安全保護システムに重要な応用があることが分かったのである。」p.22
・「現代の暗号システムの安全性は、素数を判定するのはどのくらい簡単かという問題と、ランダムに選ばれた大きな数を因数に分解するのはどのくらい困難かという問題の、対になった2つの問題に依存している。どちらの問題も明確な答はまだない。」p.30
・「数学の世界では、演繹が普通で、これによって1つの定理すなわち論理的な真から、もう1つへのホップ・ステップ・ジャンプが導かれるのであるが、これに絶対的に頼ることは数論ではできないのである。」p.34
・「オーストラリアの数学者であり、論理学者でもあったゲーデルは、公理のある集まり、たとえば、ユークリッド幾何学や無限集合の理論の基礎にあるような公理の集まりが導き出す数学的体系には、その公理群をもとにして、正しいことを証明することもできないし、正しくないことも証明できないような命題があることを示した。したがって、定理には決定不可能なものがあり得ることになる。(中略)不確定性が数学に内在している!」p.41
・「物理的に考えられるどんなコンピューターも、このような法外に大きい数を扱うことは決してできないだろうが、それでも、数学者はその性質を推論することができるのである。」p.43
・「しかしながら、Nが2^193-1のようになると厄介である。最小の素因数13,821,503は、まあまあ見つけられる。Nの第2番目の素因数は、これよりずっと遠くのどこかにある。コンピューターが1秒間に10億回の割算を実行できるとして、2^193-1の第2番目の因数を見つけるのには35,000年以上かかることだろう。数学者のポメランスとワグスタッフの新しいアプローチと相当な努力によって、 N=13,821,503×61,654,440,233,248,340,616,559×14,732,265,321,145,317,331,353,282,383となることが初めて示された。ここで各因数は素数である。」p.55
・「分子生物学者は、DNAがとりうる様々な形態を理解するために、結び目理論を用い始めている。結び目理論の最近の発展によって、DNAが、複写や組み替えの間に、どのように結ばれたり繋がったりするか、また、切ったりくっつけたりする仕事を行なう酵素が、その機能をどのように実行するかを調べることができるようになってきた。」p.116
・「フラクタル概念はまた、古い実験結果で当時説明がつかなかったもので、くずかご行きの運命にあったものを改めて新しい目で眺めたり、かつてはあまりにも複雑にみえたので無視してしまった問題を再検討したりできる希望を、科学者たちに与えている。今や物理学者や他の研究者は、以前に困惑させられた多くの結果が実はフラクタル幾何学世界を映し出していることを認めている。この概念によって、見たところ複雑な問題で比較的簡単になるものがいくつかある。」p.201
・「カオスの技術的な定義は、日常に使う意味と微妙に関連してはいるが、「無秩序のただ中に存在する秩序」というものである。この定義は普通に使うのと対照的であって、普通我々はカオスということばによって、完全な混乱あるいは偶然がすべてであるような状況を指す。」p.217
・「新しい数学が古い数学から、古い考えを新しい見方のもとで、曲げたり折ったり広げたりし、新しい定理で古い問題を照らして、できていく。数学をするというのは見知らぬ山野を散策するようなものだ。下の方に美しい谷間が見えるが、下る道はあまりにも険しいのでもうひとつ別の道をとる。そうするとわき道にずっとそれてしまう。突然に景色が変わっていつの間にか谷間を歩いている。(ノーウッド「抽象の世界から」より)」p.327
・以下、訳者あとがきより「とはいえ、著者のピーターソン氏自身は数学者でないので、数学をするとはどういうことか、というところまでは深く入りこんでいない。広い範囲にわたってのスナップ写真を沢山見せてくれているのが、この本の特徴であるといえる。」p.336
・「正直いえば、数学の真の美しさは、どうがんばってみても数学者にしか分からないのかもしれない。それでも、音楽の専門家でなくても音楽が楽しめるように、数学を楽しむことができないものだろうか。それがこの本の願いである。」p.336
(THE MATHEMATICAL TOURIST : Snapshots of modern methematics, Ivars Peterson, 1988)
・数学読み物。数論、トポロジー、多様体、フラクタル、カオス、ライフゲーム等々の話題について。一般向けに書かれているようですが、これらのキーワードを聞いてピンとこない、まったくの数学初心者にとってはつらい内容ではないでしょうか。理工系の大学生程度の知識が必要だと思います。
・アメリカ独特の回りくどい言い回しも少々しんどい。
・「たとえば、コンピューター・サイエンスは、アルゴリズムの研究を行うものと考えられる。すなわち、与えられた問題群を解くための方法と手続きの研究である。料理の場合は調理法がアルゴリズムで、これに従うことで、あれこれの材料から美味しいケーキができ上がる。数学者にも調理法がいる。」p.16
・「最近になって数論は、その数学世界の私室から出て、社会的な問題に対するきわめて重要な役割を果たすようになってきた。昔の数学者のこの高等な遊びは、暗号化やコンピューター安全保護システムに重要な応用があることが分かったのである。」p.22
・「現代の暗号システムの安全性は、素数を判定するのはどのくらい簡単かという問題と、ランダムに選ばれた大きな数を因数に分解するのはどのくらい困難かという問題の、対になった2つの問題に依存している。どちらの問題も明確な答はまだない。」p.30
・「数学の世界では、演繹が普通で、これによって1つの定理すなわち論理的な真から、もう1つへのホップ・ステップ・ジャンプが導かれるのであるが、これに絶対的に頼ることは数論ではできないのである。」p.34
・「オーストラリアの数学者であり、論理学者でもあったゲーデルは、公理のある集まり、たとえば、ユークリッド幾何学や無限集合の理論の基礎にあるような公理の集まりが導き出す数学的体系には、その公理群をもとにして、正しいことを証明することもできないし、正しくないことも証明できないような命題があることを示した。したがって、定理には決定不可能なものがあり得ることになる。(中略)不確定性が数学に内在している!」p.41
・「物理的に考えられるどんなコンピューターも、このような法外に大きい数を扱うことは決してできないだろうが、それでも、数学者はその性質を推論することができるのである。」p.43
・「しかしながら、Nが2^193-1のようになると厄介である。最小の素因数13,821,503は、まあまあ見つけられる。Nの第2番目の素因数は、これよりずっと遠くのどこかにある。コンピューターが1秒間に10億回の割算を実行できるとして、2^193-1の第2番目の因数を見つけるのには35,000年以上かかることだろう。数学者のポメランスとワグスタッフの新しいアプローチと相当な努力によって、 N=13,821,503×61,654,440,233,248,340,616,559×14,732,265,321,145,317,331,353,282,383となることが初めて示された。ここで各因数は素数である。」p.55
・「分子生物学者は、DNAがとりうる様々な形態を理解するために、結び目理論を用い始めている。結び目理論の最近の発展によって、DNAが、複写や組み替えの間に、どのように結ばれたり繋がったりするか、また、切ったりくっつけたりする仕事を行なう酵素が、その機能をどのように実行するかを調べることができるようになってきた。」p.116
・「フラクタル概念はまた、古い実験結果で当時説明がつかなかったもので、くずかご行きの運命にあったものを改めて新しい目で眺めたり、かつてはあまりにも複雑にみえたので無視してしまった問題を再検討したりできる希望を、科学者たちに与えている。今や物理学者や他の研究者は、以前に困惑させられた多くの結果が実はフラクタル幾何学世界を映し出していることを認めている。この概念によって、見たところ複雑な問題で比較的簡単になるものがいくつかある。」p.201
・「カオスの技術的な定義は、日常に使う意味と微妙に関連してはいるが、「無秩序のただ中に存在する秩序」というものである。この定義は普通に使うのと対照的であって、普通我々はカオスということばによって、完全な混乱あるいは偶然がすべてであるような状況を指す。」p.217
・「新しい数学が古い数学から、古い考えを新しい見方のもとで、曲げたり折ったり広げたりし、新しい定理で古い問題を照らして、できていく。数学をするというのは見知らぬ山野を散策するようなものだ。下の方に美しい谷間が見えるが、下る道はあまりにも険しいのでもうひとつ別の道をとる。そうするとわき道にずっとそれてしまう。突然に景色が変わっていつの間にか谷間を歩いている。(ノーウッド「抽象の世界から」より)」p.327
・以下、訳者あとがきより「とはいえ、著者のピーターソン氏自身は数学者でないので、数学をするとはどういうことか、というところまでは深く入りこんでいない。広い範囲にわたってのスナップ写真を沢山見せてくれているのが、この本の特徴であるといえる。」p.336
・「正直いえば、数学の真の美しさは、どうがんばってみても数学者にしか分からないのかもしれない。それでも、音楽の専門家でなくても音楽が楽しめるように、数学を楽しむことができないものだろうか。それがこの本の願いである。」p.336